RPAを知らない人でも最低限の更新ができる工夫を盛り込む
今回のプロセスでは、作業対象プログラムのログイン情報や、呼び出すページのURLなどは全て決まっていて、ロボットの中に直接書き込むことができた。しかし坪川氏は、これらの項目をExcelシートに記録し、ロボットが起動したときに都度読みにいく設定とした。「こうすることで、設定を変更したいときにRPAのことをわからない人でも最低限の変更はできる状態になっている」(坪川氏)
さらに坪川氏は、RPAの開発中に突き当たったポイントと、それをユーザックシステムに相談しながらどう解決したかについて説明した。
まず、ブラウザ上のボタンのクリックが安定しない問題があった。RPAはPC画面を操作して自動処理を進めるため、ボタンが押せなければ止まってしまう。同社の受注システムは自社開発ということもあり、押しにくいボタンが存在した。
「テストではうまくいっても、本番時に数回に1回失敗することがあった。この対策としては、余計なブラウザやExcelなどが画面に出ていないようにした上で、画面が切り替わる際に、押したいボタンのウィンドウのタイトルを都度検索し、ウィンドウをアクティブな状態に保つことにした。さらに、それでも不安定な場合に備えて、オブジェクト認識と画像認識のスクリプトを併用してボタンを特定した。これらの対策によって、動作は安定した」(坪川氏)
次に、ファイルがダウンロードできていない(ファイルがない)ことが、ごくたまに発生した。これを調べると、ネット回線の速度が遅いときがあり、ダウンロードを終える前にブラウザを閉じてしまっていたからだと判明した。対策としては、回線速度にかかわらずダウンロードが完了できるよう、ファイルの存在チェックをしてからブラウザを閉じるようにプログラムを修正した。
また、今回の自動化プロセスは、Autoジョブ名人のプログラムの実行中に3回Excelのマクロを実行してデータをつないでいくが、Excelの処理とAutoジョブ名人の動作がうまく連携しないという問題が生じた。これに対しては、Excelのマクロの処理が終わるごとに、シートにジョブの終了という書き込みを行ない、その終了が書き込まれるまでAutoジョブ名人の動作を待機させることで、処理がつながるように改修した。
これらの調整によって、ロボットが順調に動くようになってから、本番の処理で手作業と平行稼働させることにした。平行稼働ではまず、発注書のメール送信から、仕入れ先のメールアドレスを除いて社内の関係者のみに送信し、毎日処理を実行することにした。最初から仕入れ先に自動化したメールを送ると、混乱する恐れがあったため、平行稼働時は人による処理も同時に行なった。そして、人の手による帳票と、RPAが作った帳票を毎日突き合わせ、正しいかを毎回確認した。
自動化した内容が問題なくなったところで、次に仕入れ先にRPAによるメールを送り、人の手によるFAXも同時に送った。それを1週間続けて問題ないことを確認した後、FAXを廃止して自動化に完全移行した。
時差勤務が解消し、社員の一体感が生まれる
本番稼働を開始したRPAは、毎日21時30分に自動集計・自動発注の処理を実行している。これによって受注担当者は勤務時間をずらす必要がなくなり、会社は全社員を11時30分出勤、19時45分退勤に統一することができた。遅番、早番の区別がなくなったので、社員が勤務日、休暇日を決めることが容易になり、社内の全体会議も開催しやすくなった。
「RPAはすでに、受注担当者にとっては欠かせないツールとなっている。社員の勤務時間が揃ったため、意思疎通が進み業務の効率もよくなった」(坪川氏)
今後は、同様の業務があれば横展開を図っていくと同時に、社内のヒアリングによって他の問題の洗い出しも行ない、RPA化する業務を探していく。
今回のロボットの開発にはおよそ2ヵ月かかった。坪川氏は、今後も2ヵ月に1本の新規開発と、既存ロボットの横展開を進め、今年度中には10本のロボットを動かしたいと意欲を語った。
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