ワンクリックで会議できる人気機能をさらに強化、デジタルHQ実現に向けて「Slack Frontiers」で発表
Slackのハドルミーティングが新機能追加、ビデオ会議やリアクションも
2022年06月23日 06時30分更新
Slack(米Salesforce.com傘下)は米国時間2022年6月22日、年次カンファレンス「Slack Frontiers」をオンラインとリアル(米ニューヨーク)で開催した。同カンファレンスにおいて、Slackの「ハドルミーティング」機能を強化する新機能として、ビデオ会議(カメラ映像)やリアクションといった機能を発表した。
Slack Frontiersの開催に先立ち、Slack 共同創業者 兼 CEOのスチュワート・バターフィールド氏がプレス向けに説明会を開いた。またFrontiersでの発表について、プロダクトマネジメント担当 ディレクターのケイティ・ステイグマン氏に話を聞くことができた。本記事では両氏の話をまとめてお伝えする。
ユーザーの人気を集めるハドルミーティング、特に日本は「世界最長レベル」
今回機能強化されたハドルミーティングは“同期型”のコミュニケーションツールである。バターフィールド氏は、組織の仕事には「共同で同時にする作業(同期型)」と「個人で自由な時間にする作業(非同期型)」の両方があり、こうした「非同期の仕事と同期の仕事の間の連続性」を、Slackではサポートしていくと語る。
ハドルミーティングでは、テキストでやり取りするにはちょっと面倒な内容を口頭で伝えたいという場合に、チャンネルを開けば、いつでもワンクリックでミーティングを開始できる。ステイグマン氏は、「参加者のスケジュールを事前に調整して60分のミーティングを開催するのではなく、ちょっと聞きたい、話したいと思ったときにワンタップでスタートできる」とハドルミーティングの位置づけを説明する。
ハドルミーティングが行われてることはチャンネル内で通知されるので、加わりたいと思ったメンバーは自ら加わることができる。「オフィスのコーヒーマシンの横で誰かが会話しているのを見て、そこに自分も加わるような気軽さを実現したい」(ステイグマン氏)。Slack日本チームでは、ある部門が一定時間ハドルミーティングをオープンにしておき、ほかの部門の社員が自由に質問できるようにするといった使い方をしているという。
ステイグマン氏によると、ハドルミーティング機能はユーザーの好評を得ており、Slack史上で最も成長が早い機能になっているという。日本でも利用が進んでおり、優良顧客がハドルミーティングに費やす時間は、提供開始直後(2021年8月)から現在(2022年5月)までに36%も増加した。興味深い点として、ハドルミーティング1回あたりの長さは世界平均(中央値)で約10分だが、日本の平均は約15分と「世界で最長レベル」だという。
カメラ映像によるビデオ会議、専用スレッド、リアクションなど新機能4つ
ハドルミーティングはこれまで音声会議のための機能だったが、「もっと深いレベルでのコラボレーションがしたい、というニーズ」(ステイグマン氏)に応えるかたちで今回、いくつかの機能強化を行った。
1つめが、ビデオ会議を可能にするカメラ映像への対応だ。これまでも画面共有機能は存在したが、今回の機能強化によりカメラ映像も使えるようになる。マイクボタンの隣にカメラのオン/オフボタンが追加され、オンにすればカメラ映像を相手に見せることができる。ワンクリックで手軽にミーティングをスタートできる点は変わらない。
ステイグマン氏は「ハドルミーティングの基本はあくまでも音声」だと言う。「ハドルミーティングは気軽に、すぐに使える点が特徴。『(カメラ映像が気になって)ビデオ会議は疲れる』という声もあるので、カメラ機能はあくまでもオプションと位置づけている」。また、Zoomなど他のビデオ会議ツールを置き換えるものではなく「補完するもの」だと説明している。
2つめの新機能は、画面共有とカメラ映像を組み合わせて表示できる機能だ。スライド資料などの画面共有と、話者のカメラ映像を横に並べてプレゼンテーションなどが行える。パイロットユーザーの企業では、同じ操作画面を見ながら使い方を教えるトレーニングや、オンボーディング時の研修などに利用されているという。
3つめとして、ハドルミーティングの実施中に入力したテキスト、やり取りしたファイルなどを、そのミーティングにひも付いた専用スレッドとして保存する機能が追加された。ミーティング終了後もやり取りが残るので、参加できなかったメンバーも後から閲覧や検索をすることができる。
そして最後は、Slackユーザーが愛してやまないリアク字(リアクション文字)への対応だ。ハドルミーティングの開催中に、参加者がリアク字、絵文字、ステッカーなどでリアクションできるようになった。「チームが一緒に仕事をするときには、遊び(Fun)の要素も大切。遊びが一体感を高めてくれる」(ステイグマン氏)。
今回発表されたハドルミーティングの新機能群は、すべてのプランのワークスペースで順次利用可能になる予定だ。
また米国では、政府機関向けの「GovSlack」が2022年7月に一般提供開始(GA)となることも発表された。各種コンプライアンス要件を満たすAmazon Web Services(AWS)の「GovCloud」と暗号鍵管理の「Slack EKM(Enterprise Key Management)」を基盤として運用され、Slackコネクトなどの機能も提供される。
「デジタルHQ」実現に向けて機能強化を続けてきたSlack
バターフィールド氏は、連携、協力などを意味する「アラインメント」という言葉を選び、「企業であれ政府であれ、アラインメントを生むことが重要」だと強調する。チームが同じ方向を向き、同じ目標や現状理解を共有し、それぞれの役割に対する認識を共有することが求められており、Slackではこれをチャンネルなどの機能を通じて支援できると語る。「これにより、協調的な活動が可能になる」と続けた。
コロナ禍の経験を通じて、あらゆる組織でコミュニケーションの重要性が再確認された。Slackは自社のツールが実現するものを「デジタルHQ(会社を動かすデジタル中枢)」と位置づけ、単なるビジネスチャットにとどまらない、コミュニケーションを軸とした仕事環境そのものを提供するという戦略を進めてきた。
ステイグマン氏は「66%のナレッジワーカーが『柔軟性のある働き方』を希望している」と言う調査結果を引用しながら、「Slackはデジタルインフラの面からこれを支援できる」と説明した。「(コロナ収束後も)単にオフィスに回帰するのではなく、働き方を再考するべきだ。Slackは新しい働き方を追求しており、顧客も新しい働き方を実現するツールの受け入れにオープンであることを実感している」(ステイグマン氏)。
デジタルHQを実現するための機能として、Slackでは2020年6月に外部組織(他社)とのコラボレーション機能「Slackコネクト」を発表、また2021年7月にはチャンネル内の気軽なミーティングツールとして「ハドルミーティング」、短いビデオクリップを簡単に録画/録音して送信できる「クリップ」を発表した。2021年9月にはそれぞれの機能強化も発表している。
現在、SlackコネクトはFortune 150企業の77%が利用しており「日本でも人気の機能」(ステイグマン氏)だという。またクリップ機能は、リーダーがチーム全体に戦略アップデートなどの説明動画を共有したり、チーム内で簡単な質問や感想を伝えるといった用途で使われている。ステイグマン氏は「76%が『働く時間に柔軟性がほしい』と回答している」としたうえで、ビデオ会議とは異なり、送る側と受け取る側がそれぞれ好きな時間に“非同期型”で作成/閲覧できるクリップの必要性を強調した。なおクリップの提供開始以来、これまでに約120万分(2万時間)ぶんの動画/音声がやり取りされたという。