パッケージとチップレット
今回、ヒートスプレッダを外した状態でのCGが示されたが、こちらは筆者の予想から大きく外れたものになった。予想というのは連載652回でしたものだ。
そもそもヒートスプレッダがパスコンを逃がすようにあちこちに空隙のあるユニークな形で、ということは相当パスコンをパッケージの外側に追いやっていると考えられるので、あるいは中央にCPUダイを5つ搭載できるのではないか? という推定であるが、これが見事に外れた格好になる。
というよりも、予想以上にCPUダイが大きかった。下の画像は元のスライドから原寸大でパッケージを切り出したものだ。
このパッケージサイズがAM4と同じ40×40mmと仮定すると、それぞれのダイサイズは以下のようになる。
CPUダイ:10.4×6.7mm=69.7mm2
I/Oダイ:12.6×9.7mm=122.2mm2
AMDの公表したCGが正確である、という但し書き付きではあるが、±0.1mm程度の精度で正確な数字である。筆者はZen 4世代をCPUダイが40mm2程度と推定していたが、これがまるっきり外れた格好だ。予想以上にZen 4のダイは大きい。69.8mm2というのは、ほぼZen 3のダイと変わらない大きさである。
I/OダイがN6に移行したにも関わらず引き続き122.2mm2と大きいのは、ここにRDNA2コアを搭載していると考えれば納得が行くのだが、このCPUダイの巨大化は想像できなかった。
逆になぜこんなに巨大化したか? が次の疑問である。TSMCはN7からN5でエリアサイズを45%縮小したとしている。それにもかかわらずダイサイズがほぼ変わらないというのは、つまりCPUダイに搭載されるトランジスタ数が45%増えたということである。
1つ明確にされているのは、2次キャッシュの容量をZen 3の512KBから1MBに倍増したことであるが、これで大きくダイサイズが増えるか? といったらそんなことはない。せいぜいが2~3%といったところだろう。
AVX-512の実装も、実はそれほど難しくない。なにしろZen 3でも256bitのAVX2命令を2命令/サイクルで実装できるFPUが搭載されているわけで、これを2つ連動させれば512bitのAVX-512命令を命令/サイクルで実行で きる計算になる。
もちろん若干の手直しと、レジスターの拡張は必要である。現状Zen 3の拡張レジスターはSSEの128bitとAVX2の256bitにしか対応していないので、これをAVX-512の512bit幅に広げる必要がある。ただこれをやっても、ダイサイズへの影響はやはり1~2%ほどになるだろう。
ではいったい何が? というのは、実をいうと現時点では筆者も解を持ち合わせていない。このダイサイズはまったくつじつまが合わないのだ。
ついでに言うと、後述する理由で連載652回で説明した「Zen 4では5命令デコード/10命令発行のパイプライン」という推定がちょっと怪しくなっている。ひょっとするとZen 4のパイプラインはZen 3と大きく規模は変わらず、単にAVX-512周りにあわせてFPU側のみが手直しされただけ、という可能性もある。
AMDとしても、プロセスの変更とアーキテクチャーの大幅改良を同時にやりたくなかった、という可能性がある。ただそうなると、ますますダイサイズがこんなに大きくなる理由がわからないのである。このあたりは今後もう少しAMDが情報を出してくれるまでの筆者の宿題としたい。
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