当局が規制しても、結局マイニングは行なわれている
グラボを入手できないPCユーザーの怒りは中国でも同じ
9月、10月には中央政府がマイニングは違法行為だとする通知を続けて発表し、さらに引き締めを強化する。しかしそれを無視するかように9月以降、再び中国でマイニング活動が行なわれ始め、現在に至る。このことは英国ケンブリッジ大学のCCAF(Cambridge Center for Alternative Finance)が発表した国別ビットコインハッシュレート(採掘速度)の国別チャートを見ると確認できる(https://ccaf.io/cbeci/mining_map)。
また、中国でのマイニングは禁止されているはずなのに、中国語でのマイニング関連のテックニュースはさまざまなメディアで掲載される。それはかつて44号文書と呼ばれる中国国内での外国のテレビゲームの販売禁止ルールがあり、ゲームは売れないはずなのに、日本などの最新ゲーム情報をまとめた雑誌が販売されていた光景を思い出す。記事が頻繁に出ているということは、隠れたマイニングのニーズが今もあるのだろう。
すでに報じられているように、NVIDIAはGeForce RTX 3060、3070、3080と、本来のゲームなどの用途などで使いたい人のためにマイニング性能を抑えた「Low Hash Rate(LHR)」の製品をリリースしている。LHRの新製品が登場されるたびに中国ではビデオカードの相場が下がり「これで転売業者は困る!」とばかりに報じられ、その後LHRをクラックしてマイニングでも本来の性能をひき出せるソフトが登場するたびに「悲劇、またビデオカードが値上がり!」と報じられ、ビデオカードに高値がつく。
こうした中、5月には広東省政府(省発展改革委員会)が、仮想通貨のマイニングマシンを処分する通達を発表した。ただこれまでも「上に政策あり、下に対策あり」が続いた中国だから、そう簡単にことは収束しなさそうだ。
ビデオカードがここ2年以上異常な高値で売られ、怪しい中古製品も大量に流通した。この背景には多額の金を投じ、ビデオカードを買いだめした転売業者やマイニング業者がいる。あまりにビデオカードが買いにくい状況に、ゲーム遊びたさにPCゲームを諦め、PS5などゲーム機に移行するユーザーも少なくない。中国メディアは「あまりにも長く続いた不条理により、すでに取り返しのつかない亀裂を生み出している。すぐに人々の信頼を取り戻すことは困難」と現状を嘆いている。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」、「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)などを執筆。最新著作は「移民時代の異国飯」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク)
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