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あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ 第178回

アイドルがサソリの毒に魅了! アバルト「595 コンペティツォーネ」のストイックさ

2021年12月19日 12時00分更新

文● 栗原祥光(@yosh_kurihara) モデル●寺坂ユミ(@129Ym_afilia)編集●ASCII

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アバルト「595コンペティツォーネ」(写真はATモード付き5速シーケンシャル仕様421万円)

 アイドルユニット「純情のアフィリア」のメンバーにして、ASCII.jp自動車部のゆみちぃ部長でもある寺坂ユミさんによるクルマの試乗取材。気づけばもう9ヵ月にもなる長期連載に。今回試乗するのは、部長のTwitterでリプライがあったイタリアのコンパクトカー、アバルト「595」です。愛知県出身のゆみちぃ部長は激アツの鉄板ナポリタンを完食することができるのでしょうか?

アバルト 595をFIAT 500だと言って乗せる計画

 ゆみちぃ部長は、試乗取材の時に自撮りをするのがお約束。その中からお気に入りの1枚を「納車しました」とTweetする納車アイドルでもあったりします。そのツイートに対し、ファンの方がリプライをされるのですが、部員Kはコメントを見ながら、今後取材する車種や原稿の方向性を考えたりしていまして、その中に「FIAT 500に乗ってほしい」という文言を見つけてしまったのです。

FIAT 500C(285万円~)

 ちょうど「ルパン三世」のシーズン6が放送されることもあり、FIAT 500はいいかも、と思った部員K。ですが、部員Kはまたしても意図的な手違いをやらかしてしまい、カスタマイズモデルであるアバルト 595を発注してしまったのです。このやらかしは、以前MINIでジョン・クーパー・ワークス以来の3回目。ホットハッチ大好きの担当編集である部員Sは「よくぞ借りた!」と大喜びなのですが、ゆみちぃ部長はスポーツカーがお好みでないことから叱責されるのは目に見えています。

先日行われたワンマンライブの最終公演で、純情のアフィリアのリーダーを務める渚カオリさんは「ユミがうちに遊びに来たとき、いきなり無言で部屋の片づけをし始めた。まだ使えるのに、ゴミ袋で5袋分位捨てられた」のだとか

この件に関して、ゆみちぃ部長に話を伺ったところ「部屋が汚かったから」と一言。コメント含めて、ゆみちぃ部長は実に恐ろしい断捨離で、このままでは部員KもASCII.jp自動車部から断捨離されてしまいます

 部員Kは考えました。「アバルト 595をFIAT 500として乗ってもらえばバレないのでは」と。というわけで、マネージャーさんに「今回の試乗車はFIAT 500ですから。えぇ、普通のクルマですよ。スポーツカーじゃないですからご安心ください。クルマの色は白で、内装はチャコールとオレンジのツートーンです。お洋服はそれに合わせる感じでお願いします」とお伝えして取材日を迎えました。

FIAT500をベースとしながらも
乗り味はまったく違うアバルト 595

 ゆみちぃ部長が試乗する前にアバルト 595についての説明と、現在のラインアップについてご説明したいと思います。アバルト 595はFIAT 500をベースに、徹底的にチューニングしたスポーツモデル。誕生したのは2007年のことで、2017年にマイナーチェンジを実施し、今年で誕生14年目を迎えたロングランモデルになります。輸入車としては数少ない5ナンバーサイズという扱いやすいボディーサイズと、1.4リットル直列4気筒ターボエンジン、さらに1120kg程度の軽量ボディーからなる闊達のよい走り、なにより伝説のブランド「アバルト」の名も相まって、日本でも人気の1台です。

 現在のラインアップはスタンダートで最高出力145馬力の595、最高出力165馬力の「595ツーリズモ」と、そのカブリオレモデル「595Cツーリズモ」。そして最高出力180馬力を発生する「595コンペティツォーネ」の3車種。ちなみにミッション設定は、595がMTのみ、逆にツーリズモはATのみ、コンペティツォーネはATとMTの両方が用意されています。ゆみちぃ部長は法律的にAT車しか運転できないので、ツーリズモかコンペティツォーネのいずれかになります。で、今回お借りしたは……はい、コンペティツォーネです!

アバルト 595スタンダード仕様

 というのも、部員Sと部員Kは既にスタンダード仕様の595を試乗済みなのです。その事を同業者に話をすると「コンペに乗ってないんですか? アレはヤバいんですよ」という声ばかり。だって仕方ないじゃないですか。アバルトの試乗車でMTが用意されていたのはスタンダード仕様だけなんですから! ということで、コンペティツォーネをお借りしたというわけです。

 なお、コンペティツォーネとは、イタリア語で「競技」という意味。馬力にふさわしい足回りと、レコードモンツァというスポーツマフラーを搭載した、もっともハードな仕様です。で、ゆみちぃ部長が乗る前に部員Kが乗って思いました。これはヤバいと……。

 バーバリーのチェックパンツ姿で登場したゆみちぃ部長は、生まれながらの純情なアイドルらしい満開の笑顔で「おはようございます!」と部員Kにご挨拶。うしろめたさのある身としては、そのアイドルスマイルを見ることができず、思わず視線を下に逸らしてしまいます。「このクルマ、カワイイですね!」と言うゆみちぃ部長に対し、「ゆみちぃ部長のほうが可愛いよ」と心の中の声がダダ洩れする部員K。

 一方、我々が寺坂ユミさんに粗相をしないよう監視するために派遣された男性マネージャー氏は「これって……」と一発で感づいた様子。部長を後部座席、マネージャー氏は助手席に座ってもらい、撮影場所を目指すことに。

 「あの……狭いんですけれど」と、いきなり不満の声をあげる部長。前席に男性が座った場合、後席側は足を置くスペースがないのです。さらにレコードモンツァマフラーが奏でるサウンドが襲い掛かります。これが、とてもコンパクトカーが奏でる音ではなく、クルマ好きにとっては快音なのですが、そうでない人にとっては……。その音はYoutubeで聴いていただければと思います。

 そしてトドメとばかりに、スポーツサスペンションによる強い衝撃が小柄なゆみちぃ部長に襲い掛かります。その衝撃たるや相当なもので、ドラレコの衝撃感知が常に作動しアラームが鳴りっぱなしになるほど。これら苦痛の三重奏によって、ゆみちぃ部長の口数が減っていきます。ですが部員Kは「イタリア車だからね! 仕方ないですよ」と、シラを切り続けます。移動距離そのものはわずか10km程度だったのですが、まさに拷問を受けたといわんばかりの形相です。

 しばらくして部員Sが合流。ですが、ここで部員Sが思わず「アバルトいいですね!」と余計な一言を言ってしまったのです。ゆみちぃ部長が「アバルトってなんですか? フィアットじゃないんですか?」と即反応。純情なアイドルの質問に部員Sはポロッと「ほら、横にABARTHって書かれているじゃん」と正直に回答してしまったのです! 慌てて「ABARTHは英語の読み方で、イタリア語ではフィアットと読むんですよ」と部員Kは言葉を重ねるのですが、「また騙したんですか!?」と、ゆみちぃ部長は激おこぷんぷん丸です。ただひたすら謝るしかない部員K。「なんかオカシイと思ったんですよ。いたるところにサソリのマークがあるし、エンジンの音はウルサイし」と半分感づいていたようです。ということで試乗することにしましょう。

 その前に内装や外装について。スタンダード仕様の595との違いは「ミラーカバーやフロントマスクの一部、インテリアのボード(500Cと書かれている部分)にマットブラックの加飾が施されていること」と「サベルト製のセミバケットシートが奢られている」というあたり。これが実にカッコイイのです。ゆみちぃ部長は、このブラウン系のシートが大変気に入られたご様子です。さすがイタリアのクルマ、乙女のハートをガッチリキャッチする能力に長けています。

 ステアリングホイールやメーターフードの一部にスエード調素材を使ってレース濃度をアップしているのもコンペティツォーネの特徴です。これまたカッコイイ! 試乗車はATですので、シフトレバーの部分にはセレクタースイッチに置き換えられています。ハンドルにはパドルシフトが設けられています。

 「全体的にボタンが少ないですね」とゆみちぃ部長。それもそのハズ、運転支援どころか、クルーズコントロールすらないクルマなのですから。「これ、いつのクルマですか?」と部員Sは驚きを隠しません。ゆみちぃ部長も心配そうな顔になります。その中で「このサソリのボタンは何ですか?」と見慣れぬボタンに興味津々。これはスポーツモードの切り替えボタン。これについては後ほど。

 まずはシートポジションの調整にうつるわけですが、コンペティツォーネはサベルトのセミバケットシートが入っている都合、高さ調整はできません。「え? もっと上に上がらないんですか?」と、不満げなゆみちぃ部長。逆に大柄の部員Kは、シートを下げたくてしかたありません。さらに驚きは、リクライニングもドアを開けた状態でないと手が入らないこと。これにはその場にいた全員が絶句。ちなみにハンドルはチルト(上下)のみ。テレスコ(前後)はありません。「イマドキの軽自動車だってテレスコありますよ」と部員S。いや、S660にテレスコはありませんよ(笑)。

写真はアバルト 595のもの

 センターコンソールにはApple CarPlayに対応したタッチディスプレイが設けられ、スマホと接続するとナビの表示ができます。これとて2017年のマイナーチェンジで実装されたもの。それまではありませんでした。「ストイックすぎるでしょ、このクルマ!」と、思わず笑ってしまう部員S。それではゆみちぃ部長に走って貰いましょう!

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