これからICTを導入しようとしている介護施設・事業所にうってつけなツールがLINE WORKSだ。導入企業はすでに30万社以上という国内市場でトップシェアのビジネスチャット(※)だ。介護業界でも導入する施設・事業所が増えていて、介護スタッフの募集や定着にも効果アリという声もある。今回はLINE WORKSと介護記録ソフトを連携させて有効活用している事例を紹介する。
※富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2018~2021年版」調べ
介護記録ソフト「ケアコラボ」との連携
LINE WORKSは、ユーザーの利便性の向上のために、業務支援やbot開発などの外部サービスとの連携を進めている。連携することで外部サービスの情報をチャットでカンタンに確認でき、通知を集約できるので確認漏れも少なくなる。使い方によってさらなる相乗効果も望める。
2021年11月11日には、介護記録システムの「ケアコラボ」(ケアコラボ株式会社)とのシステム連携が実現した。ケアコラボは、ケース記録やバイタル、利用者の生活の様子などの情報を福祉職員どうしや家族で共有することができるWebアプリケーション型の記録システム。システム連携により、ケアコラボ上で投稿されたコメントがLINE WORKSの「トーク」にも自動的に投稿されるので、LINE WORKSを使っているスマートフォンなどのデバイスでタイムリーに通知を受け取ることができる。
パイロットユーザーとして、ひと足先に連携を体験した有限会社ウェルフェア三重(三重県)の介護付有料老人ホームみっかいちの施設長・松原和之さんに連携の効果などをうかがった。
利用者、家族と一体でケアを作り上げる
──有限会社ウェルフェア三重ではLINE WORKSをどのように利用されていますか。
私たちは三重県で特別養護老人ホームや介護付有料老人ホームなど11施設を運営しているのですが、各施設が県内に広く点在していることもあり、情報共有に課題を感じていたことから、2019年にLINE WORKSを導入しました。台風時の状況確認や応援要請に威力を発揮し、新型コロナウイルス感染症への対応でも状況判断や指示で大いに役立ちました。キャリアドッグ(従業員とキャリアコンサルタントが1対1で行う面談)の予約受付にも利用しています。
──介護記録ソフト「ケアコラボ」はいつから利用されているのですか。
LINE WORKS導入の直後に利用をはじめました。PCやスマートフォンで簡単に記録でき、後から見返したり、スタッフと共有するのも容易です。タイムラインで利用者の日々の生活の様子などを記録できますし、これをご家族と共有できる「家族機能」も魅力です。ご家族のほうも、閲覧するだけでなくコメントを付けられます。例えば認知症の周辺症状(BPSD)に関して、「家にいたときは、こうすると落ち着きました」といったコメントをいただくこともあり、利用者、家族、私たちが一体となりケアを作り上げていくという感覚が生まれています。
家族のコメントがリアルタイムで通知される
──LINE WORKSとケアコラボのシステム連携はいかがですか。
ケアコラボに書き込みがあると、リアルタイムでLINE WORKSに通知がくるようになったのが大きいですね。LINE WORKSはスマホで使っていて、通知をタップするだけでケアコラボに書き込みされた内容の一部と投稿者が表示されます。誰からのコメントなのか、返信を要するものなのか、速やかに確認できます。ケアコラボを介して、ご家族から「体調が心配です。大丈夫でしょうか?」といった質問が寄せられることもあります。気づくのに遅れてしまい、返事が日をまたいだり、数日経ってから気づいたりすることもありました。ご家族は返事がくるまで心配しながら待っているわけですから、すぐにレスポンスできるようになったのは助かります。
──連携の設定で工夫された点はありますか。
ケアコラボは職員が書き込んだ利用者の暮らしの様子などの介護記録の文章にご家族や同僚が「いいね」をつけられる機能があるのですが、私は5件以上の「いいね」がつくとLINE WORKSに通知がくる設定にしてみました。こうした工夫によって仕事を評価されることが職員にモチベーションの向上に影響するでしょうし、離職防止にも効果が期待されます。何よりもご家族に喜んでもらいたいという気持ちは、サービスの質の向上にも結びつくでしょう。事実、感謝されることを実感できれば、介護記録はどんどん増えます。ある職員の記録を取ってみたところ、「家族機能」の利用を始めてから、それまで月300件くらいだった記録がぐんぐん増えて700件を超えました。記録の件数が増えるということは利用者を観察する時間が増えることを示しますから、ヒヤリ・ハットの発見、事故の防止にもつながるはずです。
「見える化」を阻む「見えない壁」を壊せた
──施設内のケアの様子の「見える化」が図れたということですね。
まさに長らく介護施設の課題とされてきたのが介護サービスの「見える化」なわけですが、私はLINE WORKSやケアコラボを活用することで「見える化」を阻んできた「見えない壁」を壊せたと感じています。介護事故にしても後から突然知らされたご家族がショックを受け、感情的になり、クレームや訴訟につながるものです。転倒したら「少し腫れがあります」とすぐに知らせるというように日頃から連絡を取り合っていれば、誤解や行き違いを防ぐことができます。
──反面、「見える化」を進めるうえで懸念はありませんでしたか。
当初、私たちも「家族機能」は利用していなかったのですが、コロナ禍、面会を制限させていただいた際、一気に利用を拡大しました。施設での看取りの際、最期の1週間、日々、様子をお伝えしたところ、後日、ご家族から「離れていても一緒にいるかのように思えて、心の準備ができました。この機能があって本当によかったです」という言葉をいただきました。ご家族にケアの情報を公開したら不備を指摘されるのではないか、クレームを受けるのではないか、と心配されるかもしれませんが、実際にやってみたら、コメントのほとんどはケアに対する感謝でした。有効性を確信できましたので、今後、LINE WORKSとケアコラボの利用を社内で拡大し、作業の効率化を図るとともに、職員のマインドやサービスの質の向上に結びつけていきたいと考えています。
・介護記録ソフト ケアコラボについて詳細はこちら
・LINE WORKSとケアコラボの連携について詳細はこちら
■次回は、介護経営コンサルタントにより提唱されたBCP策定のポイントを取り上げる。
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