【JSTnews3月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業さきがけ/研究領域「時空間マルチスケール計測に基づく生物の復元あるいは多様化を実現する機構の解明」 研究課題「『不都合な配列』解析で切り拓く翻訳制御と生命力の理解」
バイオものづくりにつながる、合成困難なアミノ酸配列パターンを細菌に発見
2026年03月16日 12時00分更新
細胞内では、リボソームが遺伝情報を担うDNAに従って20種類のアミノ酸を特定の並び順で数十~数千個連結してたんぱく質を合成します。最近になり、リボソームにとって合成が困難なアミノ酸配列があることがわかってきました。こうしたアミノ酸配列を「難翻訳配列」と呼びます。たんぱく質の合成を止めてしまう難翻訳配列は本来、生物にとって不都合なものであり、その存在が生物の進化にどのような影響を与えてきたのか知ることは極めて重要です。
国立遺伝学研究所の藤原圭吾特命助教と京都産業大学の千葉志信教授らの研究グループは、細菌が共通に持つ難翻訳配列のパターンを見つけ、さらに難翻訳配列を積極的に利用して働く特異なたんぱく質群があることを明らかにしました。同グループはまず、系統的な変異解析により、アルギニンーグリシンープロリンープロリン(RGPP)や、アルギニンーアラニンープロリンープロリン(RAPP)というアミノ酸配列が含まれると難翻訳配列になりやすいことを突き止めました。次に、細菌界全体を網羅した遺伝情報の解析から、RGPP配列が細菌界で最も出現頻度が低いことを発見。さらに、RAPPやRGPPという配列をカルボキシ末端付近に持つたんぱく質が多い放線菌に着目し、生物情報学的な解析によってこれらのたんぱく質が、細胞内外の環境を監視して適応するために働くと思われる未知の生理機能を持つことを示しました。
今回の成果は、遺伝情報の進化や遺伝子発現、翻訳の分子機構を理解する基礎的な知見となります。細菌や微生物を利用して有用化合物を生産する「バイオものづくり」や抗生物質の開発でも有用となると考えられます。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第120回
TECH
海洋からウイルスをサルベージし培養、産業の発展へ貢献 -
第119回
TECH
構造色で光を自在に操るハイブリッドナノシートを開発 -
第118回
TECH
生命がわずかな熱を細胞内で維持する新しい原理を発見 -
第117回
TECH
服にコイルを編み込んで全身無線通信・給電ネットワーク、AR 操作を見据えた指輪型マウスも開発 -
第116回
TECH
3つの球体で自由自在&精密に移動できる、全方向移動プラットフォームで挑む製造現場の変革 -
第115回
TECH
対話型能力診断AIエージェントを開発! 社会実装で人とAIの共進化社会の実現を目指す -
第114回
TECH
パンや酒、チョコづくりにも関わる微生物「酵母」の進化を追求 -
第113回
TECH
希少糖が高血糖を改善、2型糖尿病の予防・治療につながる仕組みを解明 -
第112回
TECH
傷ついた植物が器官を再生させる仕組みを解明、バイオテクノロジーの発展へ期待 -
第111回
TECH
ナノ構造が生み出す微小な力を3次元的に精密計測するマイクロドローンを開発 -
第110回
TECH
高効率に発光&発電が可能な太陽電池発電を開発、発電できる有機ELディスプレイへの応用も - この連載の一覧へ








