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業務を変えるkintoneユーザー事例 第122回

業務フローの見直しで、全員が必ずkintoneを経由するよう設計

システム乱立、データ属人化などのあるある課題をkintoneで一掃したダイブ

2021年10月20日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 2021年7月8日、東京の新木場STUDIO COASTにて「kintone hive tokyo 2021」が開催された。kintone hive(キントーンハイブ)は、kintoneを業務で活用しているユーザーがノウハウや経験を共有するイベントだ。全国6ヵ所で開催され、その優勝者がサイボウズの総合イベント「Cybozu Days」で開催される「kintone AWARD」に出場できる。

 登壇したのは6社で、5社目に登壇したのはダイブの鮎川悟氏。「kintone+外部サービス連携で活かし方無限大!~社員全員で実現したDX~」というテーマでプレゼンしてくれた。

ダイブの鮎川悟氏

複数のシステムにバラバラになっていた情報が課題となっていた

 ダイブは主に観光領域に特化した人材の事業を手がけ、加えてITの業務支援サービスなど4つのサービスを展開している。鮎川氏はダイブに5年前に入社し、情報システム部に4年、現在はITサービス部門で働いている。

 今回は、日本全国のホテル・旅館に住み込みで働く仕事を派遣で紹介する「Resort Baito Dive(リゾートバイトダイブ)」と都内で働きたい人へ状況を支援する「Tokyo Dive(トーキョーダイブ)」という2つのサービスでkintoneを活用した事例を紹介してくれた。

ダイブは4つの事業を手がけている

 ダイブは人と接する機会が多いので、個人間やチーム間、部署間のコミュニケーションが活発だが、それに耐えられるシステムがなかった。

 課題は3つあり、1つ目は情報の一元管理ができていないということ。リゾートの仕事をした人のうち、一定数は上京支援サービスを利用するので、情報の共有は必須。しかし、求人掲載システムや人材管理システム、請求システム、個人管理のファイルなどのシステムが連携せず、バラバラな状態になっていたそう。

 当然、それぞれのシステムに同じ内容を重複登録する必要がある。そうすると入力ミスや入力忘れが起きたり、どのマスタが正しいのかわからないという状態で、とにかく効率が悪かった。

複数のシステムを入れてバラバラに管理していた

 2つ目は情報管理が属人化していること。リゾート事業部のシステムと上京支援事業部のシステムがつながっておらず、従業員個人がファイルを管理しているので、結果的に誰が欲しい情報を持っているのかわからないという状況になっていた。

「これによって、情報の粒度が揃っていませんし、Aシステムで取った情報をBシステムで取り直す必要があります。さらに、リゾート事業の既存取引先にもかかわらず、上京支援サービスで新規の営業をかけてしまうという状況でした」(鮎川氏)

情報がどこにあるのか、誰が持っているのかがわからない状態だった

 3つ目はシステムを拡張しづらい点。コアとなる社内サーバーがあったので社外では仕事ができず、会社に来なければならない。周辺システムも繋がっているものもあれば、分離されているものもあり、ばらばらな状態。

「たとえば、外注のシステムで私の感覚で2日間で2万円くらいで直せると思うものが、実際には半年かかって100万円取られる、という状態でした」(鮎川氏)

連携していないシステムがシームレス性を阻害していた

全国の拠点で説明会を開き、kintoneを導入

 kintoneを導入するきっかけになったのは、「#まとまると強い」という桃太郎をモチーフにしたkintoneのポスターだった。これを見て感銘を受けた鮎川氏はサイボウズのセミナーに参加し、kintoneの導入を決めたという。

 業務フローを見直す際、全員が必ずkintoneを経由するように設計したそう。社内の反発や使われないというリスクもあるのだが、kintoneを全社員で使っていくと目標を掲げて、実施したという。そこで、導入の半年前から全国7拠点で説明会を開き、社員に対して導入する目的や効果、業務フロー図、アプリの使い方など周知した。

 そして2020年5月にリリース。1回目の緊急事態宣言が出ている最中だった。

「#まとまると強い」というkintoneのポスターを見て興味を持ったそう

 ここで、実際に使っている求職者や派遣する人の情報を管理するアプリの画面が表示された。一番上に、マニュアルのリンクが貼ってあり、スタッフ管理アプリの操作を確認できるようにした。その下には、ボタンの説明という欄を用意し、アクションボタンについて解説している。フィールド欄には、電話番号の入力方法などを丁寧に記載している。とことん、ユーザーが迷わず使えるように気を配っているのが印象的だった。

誰でも迷わず使えるように工夫を凝らした

 kintoneを導入するにあたって、3つの施策を打ったそう。1つ目がLINE連携。求職者が見るウェブサイトは、LINEのログインを通じて、kintoneでLINE IDが自動で連携できるようにした。このおかげで、手軽にコミュニケーションが取れるようになったという。

「我々のサービスを利用してくださるユーザーは若い方です。今までメールや電話で連絡していたのですが、そういった方達にアンケートを取ってみると意味がないことがわかりました。当然LINEだろうということで、連携しました」

若い人はメールや電話は使わない。LINEにすることで離脱率を低下させた

 2つ目が、Adobe Sign連携。従来、契約書の締結を紙で行っていたのだが、繁忙期だと月に6000件にもなり、営業担当が疲弊してしまう状態になっていた。

 kintoneとAdobe Signを連携し、kintoneアプリ上からアクションボタンで契約書を発送できるようにした。社員はAdobe Signのことを意識せず、kintoneを使っている感覚で、契約を締結できる。

月間6000件の紙の契約書を電子契約に切り替え、kintoneから送れるようにした

 3つ目が、システム間連携。求職者が見る募集用のウェブサイトにもkintoneアプリに登録した求人情報を自動的に反映させているそう。社員はkintoneに入力するだけで、色々な作業が自動化されるので負担が軽減されたという。

時間とコストが大幅に減り、ペーパーレスの効果も高かった

 3つの試作の効果としては、LINE連携による時間とコストの削減は月間約300時間、電話料金は平均40万円になった。応募登録に関しても、メールや電話だと離脱がとても多かったのだが、LINEにすると離脱率が圧倒的に低くなったそう。

 契約書を電子化したペーパーレス化による導入効果としては、紙を印刷したり、契約書を封入したり、発送したり、契約書を確認したり、ファイリングする作業がなくなった。合計すると、なんと月に1000時間もの削減が実現した。

 システムをkintone化したことで、複数サービスへの重複登録がなくなった。もちろん、入力時間が短縮し、入力ミスも防止できた。

電話がなくなったので、電話料金が月に40万円削減できるようになった

「この業界、まだまだ紙や電話、メールの文化が残っています。今後は、実際に勤怠を紙で管理されているところがあるので、こういった部分をデータ化してkintoneと連携したり、面接の予約情報をGoogleカレンダーとkintoneを連携させて管理していきます。さらに、kintoneの運用や情報システムのノウハウを他の企業様にも知ってもらいたいと思い、ITサービスの業務支援事業(Field)を活性化していきたいと思っています」と鮎川氏は締めた。

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