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業務を変えるkintoneユーザー事例 第119回

NPO法人チャリティーサンタで実践した事務処理の効率化とデータ活用

サンタクロースの仕事のやり方をkintoneが変えた

2021年09月22日 10時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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kintoneを使わないと業務ができない「パワープレイ」

 北海道から沖縄まで、年齢は18歳から定年超えまで様々なメンバーが500人以上在籍している。新しいシステムを導入する場合、過去のやり方に慣れた人たちからは一定の反発があるもの。kintoneを導入したはいいが、なかなか使ってもらえない、というのはkintoneあるあるとも言える。

「そこで私たちは、パワープレイをしました。kintoneを使わないと業務できなくしたのです。応募フォームに入力された情報はkintoneに入るので、kintoneを見に行かなければその情報は見られないのです」(青山氏)

 kintoneからCSV出力もできないようにしているので、必然的にkintoneの中で作業するしかない。強制的にkintoneを使うしかない、まさにパワープレイだ。しかし、だからこそユーザーへのフォローは手厚く行なったという。

 たとえば、最初のポータル画面の見た目を可愛くして、アプリの用途を明確にした。最初の画面で躓かないように、次のステップへの導線をわかりやすくしたのだ。

見た目からすっと入れるように心掛けたポータル画面

 マニュアルを作成したのだが、クラウドストレージに置いて参照するようにすると使いにくく感じられる。そこで、すべてのリンクをkintoneのポータル画面に貼って、kintoneの中で感じた疑問はkintoneの中で解決できるという体制を作った。

 また、Excelから移行したため、Excelライクに操作したいというニーズがあり、グレープシティのプラグイン「krewSheet」で実現した。さらには、各アプリ間の情報を「krewData」で集計し、1つのアプリにまとめて管理しているという。たとえば、バーグラフ機能を利用し、訪問先の家庭とボランティアのバランスを一目で確認できるようにした。

krewSheetとkrewDataを活用してExcelライクな操作性と情報の可視化を実現した

一番大切なサンタクロースが子供を訪問する時間

 これらの努力が実を結び、初年度のうちにほとんどの支部でkintoneが使われるようになった。そして、とても大きな業務改善効果が得られた。

 3000件の顧客対応をする中で、フォームからのデータを自動インポートすることで200時間、メール作成の自動化とマイページ対応で350時間、グルーピングのマッチングを効率化したことで150時間、地図の自動作成と各種集計の自動化でそれぞれ100時間、会計業務の効率化で50時間の時間削減効果が得られたという。

「私たちは時間削減だけではなく、データ活用という目標もありました。私たちにとって一番大切な時間はサンタクロースがお子さんを訪問する時間です。kintoneに集約されたデータを活用して、訪問の質の向上に活かせないか考えていました。そこで作ったのが子どもアプりです」(青山氏)

 最初は、A君という訪問先の情報は複数のアプリに散らばっていたという。その情報を「子どもアプリ」にまとめることで、参照しやすくしたのだ。アプリ自体はシンプルで、サブテーブルを並べてイベントごとの参加履歴を蓄積している。

 本来であれば、訪問先とボランティアの両方がリピーター同士であれば、同じサンタが同じ子供の元に来てくれるのが理想だ。しかし、これまでは情報が分散していたので、そのマッチングをするためにはかなりの工数がかかっていたそう。「子どもアプリ」によりグルーピングしやすくなったという。

 とは言え、ボランティアのリピート率は2割くらい。多くの家庭には前年と異なるサンタが訪問することになる。その場合でも、前年のサンタがkintoneに情報を残しておけば、次に訪問するサンタが昨年の会話を参照して対応できるようになる。ドアを開けたら飛びかかってくる子供や突然泣き出す子供もいるが、その情報が引き継がれていれば、サンタ側も心の準備ができる。

kintoneで過去の訪問内容を引き継げるようになった

 チャリティーサンタでは預かったチャリティー金を使って、病気や経済的事情でクリスマスを楽しめない子供たちへの支援活動を行なっている。コロナ禍のせいで、この1年に楽しい思い出を作ってあげられなかった、という声が例年の何倍も寄せられているという。

「子供のあこがれの存在であるサンタクロースが自分のためにやってきて、今年がんばったことをたくさん褒めてくれる。そんな体験が1年を締めくくる素敵な思い出になったり、自分が周囲から愛されているんだと感じるきっかけになればという想いで私たちは活動しています。kintoneに移行して、いろんな作業が効率化されて、子供1人1人に向き合う時間が増えました。今後も、より活動インパクトを高められるようなkintoneの改善を行なっていきたいと考えています」と青山氏は締めた。

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