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山谷剛史の「アジアIT小話」 第175回

独自ゲーム機で成功例が出ない中国ゲーム事情 クラウドゲーミングで状況は変わる?

2021年07月25日 12時00分更新

文● 山谷剛史 編集● ASCII

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スマホ用が主力の中国のゲーム市場
相変わらず海賊版ハードは存在

 中国のゲーム環境が数年前と比べて変わってきている。もともとカオスだったのだが、それがまた別のカオスとなったというような状況だ。

テンセントから登場した据置型ゲーム機「指揮官」。同社のクラウドゲームプラットフォームに対応している

 読者はよくご存じのとおりに、日本ではコンシューマーゲーム機が競い合い、PCやスマートフォン向けのゲームもある。今ではその多くがオンラインゲームだ。コンシューマーゲーム機は任天堂、PS、Xboxに加え、「~ミニ」といったレトロゲームファン向けに過去の正規版タイトルが多数入ったハードも最近は人気となっている。

 一方の中国では、スマートフォン・タブレット向けが主流で、eSports振興を目指している関係からPC向けも根強い人気だ。VRもあるがコンシューマー用に売れているという話は聞かない。また表に出る統計では見えないところで海賊版ハードがあり、過去のアーケードやファミコンのゲームが遊べる製品がよく売れているようで、政府は海賊版を撲滅する姿勢を見せつつも権利者が中国国内で訴えを起こさない限り、見てみぬふりをしているのは昔も今も変わらない。

 正規のゲーム機も各社の製品が売られてはいるが、肝心のソフトは検閲を通してから販売許可が出るまで時間がかかることに加えて、タイトル数自体が少ない。おまけに中国では、国内で作られたデータは国内のサーバーを使う必要がある。つまりダウンロードコンテンツは中国のサーバーで用意されたものだけということになり、そのことをわかっているヘビーユーザーは海外版を買うということになる。という状況はあるとは言え、なにかしらゲームを楽しんでいる人がいれば10人中9人はスマートフォンで遊んでいると思っていい。

 さて近年の中国におけるゲーム機絡みの環境で変化の1つがリングフィットアドベンチャー。中国でも猛威をふるった新型コロナウイルスにより家篭りを余儀なくされて、よく売れたというニュースが報じられた。今でも中国のECサイトで多数のリングフィットアドベンチャーが売られている。

 日本でも入手困難になった原因として、少なからず中国への転売の影響がある(後日、中国版も発売され、多少は改善した)。このリングフィットアドベンチャーの購入層は中国のゲーマーに加え、それまであまり詳しくなかった層も加わり、リングフィットアドベンチャーのためにNintendo Switchを購入したという人は少なくない。

宏太という企業から発売されているリングフィットもどき

 中国でリングフィットアドベンチャーが人気になるとどうなるか。お約束のようにニセモノが登場する。逆に言えば、ニセモノが登場するくらいに、中国でもリングフィットアドベンチャーが人気なのだと言える。

 そんなニセモノは大きく分けて2種類ある。輪型の専用コントローラー「リングコン」と太ももにつける「レッグバンド」のパッケージは同一で粗悪な品質になっているタイプと、WiiとWii Sports人気で登場した中国製ハード「威力棒Vii」のように、コンセプトは一緒でリングコンもあるがハードもゲームも全般的にショボいというモノだ。後者については各種プレイレビューによると「威力棒Viiを少々マシにした程度」だそう。

クラウドベースでスマホ用の人気ゲームが動かせる
そんな据置型ゲームをテンセントがリリース

 そんな日本で人気が出たゲームのニセモノだけでなく、中国発のホンモノのゲーム機も発売されてはいる。たとえば、中国のテンセント(騰訊)からひっそりと登場した据置型ゲーム機「指揮官」だ。テンセントといえば、かつてバイドゥ・アリババとのセットで「BAT」と呼ばれた中国インターネット最大手3社のうちの1社だが、同社はさまざまな国内外のゲーム企業を買収し、人気開発スタジオ「天美工作室」(TiMi Studios)を擁するとともに、中国向けにNintendo Switchの正式販売もしている中国におけるゲーム最大手でもある。

指揮官ではスマホ用ゲームをクラウド経由で大画面で楽しめる

 同社は中国国内でNintendo Switchを販売し、またミニノートPC「壹号本」(One-Netbook)がリリースしたWindows 10ベースのポータブルゲーム機「OnexPlayer」にも協力している。この意義はSteamや、テンセント版Steamとも言えるプラットフォーム「Wegame」などのゲームが、移動中でもどこでも遊べることにある。

 据置型ゲーム機の「指揮官」に話を戻そう。これはテンセントのクラウドゲーム部門である「騰訊先游」がリリースしている。騰訊先游が提供するプラットフォームは、中国で定番のスマートフォン向けゲームをウェブブラウザーやアプリに対応することで、ダウンロードすることなく、PCなどからも遊べるというものだ。

テンセントのクラウドゲーム部門の「騰訊先游」

 指揮官はセットトップボックスとカスタマイズ可能なゲームパッドのセットで、騰訊先游上の多数のタイトルをテレビで操作できる。加えてテンセントが強い有料動画コンテンツも視聴可能だ。

 中国では2014年頃から、50型クラスのスマートテレビが高給取り以外でも手の届く範囲の安価な価格で売られており、映画やドラマを居間で見たいような人や家庭用ゲーム機を所有するような若者の多くが所有している。また昨今の中国のスマートフォン向けゲームはMOBAの「王者栄耀」や、FPSの「和平精英」、他社ではあるがmiHoYoの「原神」など、コントローラーで操作しても楽しいゲームが揃っているので、これらのゲームを大画面で楽しむのに最適なハードというわけだ。

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