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業務を変えるkintoneユーザー事例 第110回

導入後から半年でぶち当たった「キントーンズハイの終焉」の乗り越え方

在宅医療の双愛会がkintone導入で活用したのはCUSTOMINEとコミュニティ

2021年07月09日 10時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2021年7月8日、サイボウズはkintoneユーザーのイベント「kintone hive tokyo 2021」を開催した。仙台、大阪、福岡、名古屋、松山に続いて、無観客公演となった今年最後のkintone hiveには、6つの企業・団体が登壇。冒頭に登壇した。ここではトップバッターである医療法人社団 双愛会の事例をお送りしよう。

他社システムの導入で失敗 kintoneは本当に現場主導でできるのか?

 kintone hiveの楽しみ方や最新動向などを披露したサイボウズの挨拶に引き続いて登壇したのは、医療法人社団 双愛会 ファミリークリニックグループ 事務局長の清水雄司氏。kintone歴は2年と3ヶ月だが、システム開発やプログラミングの経験はなく、システムも兼任で対応しているという。

医療法人社団 双愛会 事務局長 清水雄司氏

 清水氏が所属する医療法人社団 双愛会は「医療を通じて“安心”して生活できる社会を創造する」という法人理念を掲げて、2005年に創業。東京城南地区で在宅医療を提供しており、現在は在宅医療クリニック3店舗、訪問看護ステーション1店舗を運営している。おもに通院困難な患者さんに対して、24時間365日体制で訪問診療を提供しており、医師や看護師のみならず、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、社会福祉士、精神保健福祉士、救急救命士、医療事務、ドライバーなどさまざまな専門職が在籍している。

 少子高齢化に伴い、自宅療養者は今後も増えていく。当然ながらこうした自宅療養者をサポートする在宅医療の利用も増加する見込みだ。しかし、在宅医療・介護の業界は、1人の患者さんが関係する事務所や事業者が非常に多いという特徴がある。そのため、こうした関係者の情報をシステムで連携していきたいというのが、理事長の想いだった。

 しかし、これを実現すべく、双愛会は4年前に他社システムを導入して、2年間運用したものの、結局定着せずに失敗している。「この失敗、私がきっかけを作っているんです。というのも、当時私は別の医療系企業に在籍しており、そこでCRMを導入していたので、(双愛会の)理事長に紹介した経緯がありました」と清水氏は振り返る。システム導入に失敗したことを知り、心苦しく思っていたこともあり、また理事長の理念に共感したこともあり、結局清水氏は双愛会に転職。兼任でシステムを担当することで、リカバリに当ることになったわけだ。

他のシステムを導入したものの2年で頓挫した

 結局、2年間使っていたシステムは設計上、実績一覧を抽出するために追加の改修費用が必要となったため、継続終了を検討せざるをえず、更新期限の1ヶ月以内にkintone導入を検討することにした。「kintoneが本当に現場主導でできるのか。そんなチャレンジが始まりました」と清水氏は振り返る。

成功体験から現場の要望を収集 ぶちあたった「キントーンズハイの終焉」

 初動はサイボウズのサポートをフル活用した。2時間みっちり対面相談できる「導入相談カフェ」を受け、電話サポート窓口では職員向けの機能説明トークも学んだ。「非常に丁寧に教えていただきました。オススメです。おかげさまで3日後にアプリは完成しました。他社システムのときは2ヶ月くらいかかっていました」と清水氏は語る。

 こうした現場主導のシステム開発について、理事長は、「速くていいですね。まずは最低限、実績一覧をすぐに出せるなら十分なんですよ。ここから修正していきましょう」と評価してくれたという。そして、このコメントに現場主導のシステム開発で重要な「小さく作って、素早く軌道修正」というポイントが含まれていた。チームの声を反映させてアプリを育てていくという感覚が現場で共有されると定着もしやすい。これは清水氏にとっても小さな成功体験だったという。

 kintoneプロジェクトが楽しくなってきた清水氏は、現場の要望をどんどん収集した。そしてどんどん解決できた。しかし、未解決や保留の案件も実はけっこう残ったという。たとえばAのアプリを更新しても、Bアプリのルックアップフィールドは自動更新されない仕様であり、修正ができなかった。そんな要望に埋もれ始めた半年後、清水氏の中から生まれた感情が「孤独感」だ。

 清水氏は、「kintoneが悪いわけではないけど、私が使いこなしているわけでもない。本当にこれでいいのか? ほかに手段はないのか? 誰かにこのモヤモヤを共有できないか?」という心理状態を語る。kintoneで成功体験を得た結果、ぶち当たるまさに「キントーンズハイの終焉」だ。

半年間でぶち当たったのは「孤独感」

同じ悩みを抱えた仲間と「すごくなくてもいい」コミュニティとの出会い

 課題感を持った清水氏は、理事長とともに2019年のCybozu Daysに参加したが、これがよかった。医療・介護業界でkintoneを使っている人たちに出会えたからだ。京都での病院間の連携を説明した瀧村孝一氏、峠健太郎氏、そしてまさに双愛会と同じ在宅医療においての活用事例を披露した清水信貴氏、前島啓二氏などの話を聞いたのが大きな転機となった。今までライトコースだったkintoneをスタンダードコースに変更し、促進させていく覚悟が生まれたという。

Cybozu Days 2019で出会った医療介護業界の仲間たち

 では、どうやってkintoneを学んでいくか。実はkintone界隈はサイボウズのみならず、さまざまな情報発信が行なわれているので、清水氏は4つに分けて学習を進めてきたという。まず、kintone事例やTIPSはkintone勉強会の「kintone Café」やTwitter、kintoneコミュニティの「キンコミ」などから入手。学習コンテンツとしてはkintone標準機能やカスタマイズはkintoneエバンジェリストの松田正太郎氏の動画、データベースは同じくkintoneエバンジェリストの久米純矢氏、アールスリーインスティテュートの記事や動画が参考になったという。

kintoneを学ぶためのコンテンツは豊富

 そして、理解を深めるためにはアウトプットに挑戦した。ここで重要なのは、キンコミにも書かれている「すごくなくてもいい」という点。学んだ内容を確かめるためにアソシエイト資格を受験したり、kintone Caféで質問していく。こうすると、ヘルプや関連記事などでのインプットが必要になるので、繰り返していくとできることの引き出しがどんどん増えていったという。

 この結果、数多くの要望はUI強化、入力補助・制御、アプリ間連携、簡易集計、エラーチェック、外部サービス連携などに分類し、すべてが解決できるようになった。「私自身の知識が向上したこともありますが、連携サービスの力が大きかった」と清水氏は語り、アールスリーインスティテュートのkintoneの連携サービス「CUSTOMINE」を活用した事例を披露した。

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