2024年度の決算・事業説明会で振り返るkintoneの成長
kintone価格改定の影響は? 全社導入の推進で売上倍増を目指すサイボウズ
2025年03月03日 16時30分更新
サイボウズは、2025年2月27日、2024年度の決算・事業に関する説明会を開催。同年度の業績や主な取り組みを振り返るとともに、2028年度に「509億円」の連結売上高(2023年度から2倍の成長)を達成するという中期目標を打ち立てた。
目標達成の鍵となるのが、主力製品であるノーコード・ローコードツール「kintone」である。2024年度も順調に成長しているが、部門導入にとどまることが多く、“単価が低い”ことが継続した課題だ。
サイボウズの代表取締役社長である青野慶久氏は、「中期目標のために、一番大事なのは、kintoneの全社導入・大規模導入に注力すること。そのためにも、より多様な人が、より多様な情報をあつかえるプラットフォームとしてkintoneを進化させていかなければならない」と説明した。
2024年度は増収増益、kintoneは順調も、課題はやはり全社導入
サイボウズは、企業理念にこだわる会社であり、「チームワークあふれる社会を創る」をパーパスに掲げる。こうした社会を情報共有の基盤で実現すべく、グループウェア事業を手掛けている。
2024年度(2024年1月~12月)の決算は、連結売上高が前年比16.7%増の296億7500万円、連結営業利益が前年比44.1%増の48億9200万円と増収増益。営業利益は、2022年度の大幅減益後に増益が続いた。2021年から「BET」というスローガンのもと、広告・投資などにアクセル踏んでいたフェイズが落ち着き、「利益が伸びやすい環境にある」と青野氏。
業績に一番の影響を与えたのが“価格改定”である。2024年11月より、クラウドサービスの月額ライセンスを約2割値上げし、一部サービスでは最低ユーザー数も引き上げた(kintoneでは5ユーザーから10ユーザーに)。この価格改定前の需要増などによって、連結クラウド売上高は267億9100万となり、クラウド売上高比率も9割を超えた。解約は想定よりも少なく、価格改定はネガティブな要因にはなっていないという。
グループウェア事業の中で、「エース」にまで成長した製品がkintoneである。製品別の連結売上高は161億9200万円となり、前年比24.4%増と、最も売上につながり、最も成長した製品だ。
kintoneの契約企業数は、3万7000社に達し、2024年度の月平均の導入社数は730社と、前年比で80社も増加。東証プライム企業の44%にも導入され、「中小企業から大企業へとシフトしつつある」(青野氏)という。ただ、新規導入は、価格や最低ユーザー数の変更もあって、これまでのペースは維持できないという予想だ。
順調に成長するkintoneにも課題がある。SaaS経営指標をみると、kintoneの1サブドメインあたりの平均月額売上単価(ARPA)は、中堅・大規模企業向けのグループウェア「Garoon」と比べて、3分の1にとどまる。青野氏は、「Garoonは全社利用されている一方で、まだまだkintoneは部門利用にとどまっている。kintoneを全社利用してもらうことが私たちの課題」と強調する。
赤字前提でチャレンジを続けているのが、グローバル展開だ。2024年度のユーザー企業数は、東南アジアが前年比で9.3%増えているが、米国では前年比2.3%増、中華圏では前年比1.4%増と苦戦している。米国については、直販メインから間接販売に方向転換しており、パートナーの育成を進めている最中だ。
また、kintoneの多言語化も進んでいる。2025年2月に、新たにタイ語、スペイン語、ポルトガル語(ブラジル)に対応。2024年3月にタイ法人を設立しているほか、スペイン語、ポルトガル語(ブラジル)の対応は、中南米での販売強化の一貫となる。これらの地域の成功事例をもって、米国での事業も盛り上げていく計画だ。
