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業務を変えるkintoneユーザー事例 第129回

事務負担が減ったことで登録者数は2倍以上に増加

災害ボランティアの気持ちに応える 社会福祉協議会がkintone導入に込めた思い

2021年12月14日 09時00分更新

文● 指田昌夫 編集●MOVIEW 清水

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 kintone hive nagoyaの最後の事例講演には、岐阜県美濃加茂市 社会福祉協議会の麻生涼介氏が登壇。災害時に必要な情報を得られない紙のシステムに危機感を感じて、同協議会にkintoneを導入し、アプリ開発に進んだ経緯について説明した。

岐阜県美濃加茂市 社会福祉協議会の麻生涼介氏

ボランティアの活動をバックアップするシステムが必要

 社会福祉協議会とは、全国の市町村に1つずつ存在する組織で、ボランティアセンター、子ども食堂、福祉教育、高齢者サロンなど、地域の福祉に関するさまざまな事業を行なっている。

 災害が起きると、全国から非常にたくさんの災害ボランティアの方々が被災地を訪れる。被災した住民のニーズと災害ボランティアをマッチングさせる司令塔の役割を果たすのが、ボランティアセンターだ。

 「総務省の調べでは、東日本大震災が発生した2011年、活動したボランティアの総数は431万人に達する。しかし、そのうち東日本大震災の被災地での活動は約100万人だった。この年に起こった災害の総数は33件あり、実は他にも各地で非常に多くのボランティアが活動していた」と麻生氏は指摘する。ボランティア活動というと大きな災害に目がいきがちだが、日本では毎年何らかの災害が起きており、そのたびに支援が必要な人が生まれている。気象災害が増えている昨今、ボランティアセンターの役割は、日増しに重要度を増しているのである。

 協議会がkintoneを使い始めた理由も、ボランティア活動の支援だった。麻生氏が同法人に入社したのが今から3年前だが、その時すでにkintoneは導入されていた。麻生氏の上司が、熊本地震の支援に出向いたことがきっかけだった。

熊本地震のボランティア活動がkintone導入のきっかけ

 熊本県益城町の避難所で、地元の職員が被災者の住民データを入手しようとしたが、停電のためにサーバーが立ち上がらず、住民データをダウンロードできず、結局手書きのリストを作るしかなかった。

 その様子を目の当たりにした麻生氏の上司は、有事の際に支援を必要としている人の情報が得られないことに危機感を感じたという。そこで協議会では、どんな状況でも必要なデータが得られるように、システムをクラウド化することを決断。kintoneの導入を開始した。

 麻生氏も同様の経験をしている。3年前の「平成30年7月豪雨」では、東海地方にも大きな被害をもたらし、岐阜県関市にはボランティアセンターが立ち上がった。麻生氏はそこに応援に向かった。

 「受付の業務を手伝ったが、全国から本当に多くのボランティアさんが来てくれたことが忘れられない。だが、受付は紙に書き込むアナログの業務だったため、受付に非常に時間がかかってしまい、長い列ができてしまったことを申し訳なく思った」(麻生氏)。災害時におけるシステムの重要性を改めて実感したという。

平時に使いこなせていなければ、災害時には役に立たない

 だが、職員のリテラシーの問題があり、導入のハードルは高かった。有事に使えるようにするためには、平時からkintoneが使えるようになっていなければいけないと判断した協議会では、まず、普段の業務で使うシステムを開発することにした。

 具体的には、社会福祉協議会が行なっている業務で、ボランティアの名簿管理、マッチングの調整、各種イベント参加者の管理などと、kintoneを連携させるところから始めた。

 麻生氏はその中から「いきいきボランティア事業」に関するシステムを紹介した。これは65歳以上のボランティアに対して、介護予防支援のマッチングや、ボランティアポイントの管理を行なう事業。従来はExcelやFAXをベースにしていたため、担当者の机の上にたまる紙の量も多く、事務負担が非常に大きかった。そこでkintoneを使って、ボランティアの出欠管理や、獲得ポイントの管理を行うアプリの開発を行なった。

 アプリ導入の結果、事務負担が減ったことで登録者数は従来の260人から706人と、2倍以上に増加した。「この成果を見て他の職員も、別の事業もkintoneと連携させてみようという意識に変わった」(麻生氏)

アプリを導入した結果、登録者数が増加し、別事業も連携させようという意識に変化

 なお、導入にあたっては、地元のkintoneオフィシャルパートナーであるアンドベアクリエイツとの連携が重要だったと麻生氏は言う。「簡単なアプリは職員が作り、より複雑なシステム設計はアントベアクリエイツと共同で行う役割分担を行ない、業務とkintoneの連携に常に伴走していただいた。その結果、ITが苦手な人にも新しいシステムが浸透していった」(麻生氏)

 複雑なシステムの例に、「要支援者管理マップ」がある。kintone上にマップを埋め込んで、1人暮らしの高齢者や障がいを持つ人など、要支援者の居住地を地図上にプロットし、その人たちを支援する側の民生委員や介護サービス事業者と効率的にマッチングするアプリである。「平時の支援に役立つだけでなく、災害などの有事にも、助けが必要な人がどこにいるかがわかる。このように、災害時を意識したアプリも少しずつ開発している」(麻生氏)

要支援者管理マップによって平時はもちろん、有事の際に支援すべき人がすぐわかるようになった

 麻生氏が、次の展開として考えているのが、二次元バーコードとkintoneを組み合わせたシステムだ。「車椅子などの備品に二次元バーコードを付けて、貸し出しの管理に活用するつもりだ」(麻生氏)

 社会福祉協議会は、有事に困っている人のニーズと、ボランティアの善意をつなぐ「橋」の役割を果たさなければいけないと、麻生氏は話す。

 「自分たちだけでは、この橋は維持できない。地域の行政や企業などとの協力関係は不可欠だ。連携の基盤としてkintoneを使い、『kintone×防災』『kintone×減災』『kintone×災害復興支援』といったシステムを作っていきたい。一緒に課題を話し合う仲間を探している」と、麻生氏は最後に語った。

平時・有事のどちらにも活用できるシステム作成について、課題を話し合う仲間を探している

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