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「AIは万能ではない」「業務フローに合わせる」「現場を巻き込む」が普及のポイント

AIチャットボットが定着しなかった理由とは? サイボウズ社内AI活用のリアル

2025年03月18日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 2024年11月に開催された「Cybozu Days 2024」では、kintoneに実装されるAI機能「kintone AIアシスタント(仮称)」のベータ版が発表された。

 一方、サイボウズの社内では、AI活用は進んでいるのか。本記事では、サイボウズの池田淳氏と鶴本時彦氏による、カスタマーサポート部門におけるAI活用の取り組みが披露されたセッションの様子をレポートする。

「カスタマーサポートにおける新たな挑戦! サイボウズ社内のAI活用事例をご紹介」の内容をお届けする

属人化していたカスタマーサポート、機運に乗じてAIチャットボットを開発

 サイボウズのカスタマーサポートは、コールセンターとしての機能を外部委託しつつ、エスカレーションが必要な場合は、サイボウズ側のメンバーが営業や開発と連携しながら二次受けをする。問い合わせ内容は製品や契約関連、トラブル対応など多岐にわたり、その対応履歴はチャットや電話、メールなど、すべて蓄積されていく。

 しかし、これらは手動で分散管理されているため、ナレッジやFAQ、対応履歴の検索に、手間とスキルが求められる状況だった。製品の頻繁なアップデートも加わり、典型的な属人化が生じていたという。

「オペレーターのスキルに頼ったものすごく“アナログなセンター運営”をしており、IT企業らしからぬ課題がたくさんありました」(池田氏)

サイボウズカスタマー本部 カスタマーリレーション部 池田淳氏

オペレーターの運用が非効率的で属人化が生じていた

 「このままでは良くない」と考えた池田氏は、AIでの効率化に着手。2023年7月にプロジェクト「AIdison(エジソン)」を発足し、顧客とサポートメンバーに最高のCX/DXを提供すべく動き始めた。当時は、ChatGPTの話題でもちきりであり、「AIチャットボットであらゆる課題が片付くのではないか」という機運が高まっていた。そして同プロジェクトでも「AIチャットボット」を開発する。

 これは製品ヘルプやFAQ、社内外の公開情報を元に、問い合わせへの回答を生成してくれるチャットボットで、参考URLも付けてくれるのでファクトチェックもできる。UIは社内で使い慣れているkintoneを活かし、ボタンひとつで回答が得られるようにした。

リリースしたAIチャットボットの利用は思うように伸びず…

 AIチャットボットは、リリース直後には週100件弱の利用があったという。しかし、翌週からは激減、すぐ右肩下がりとなる。プロジェクトメンバーは「AIの精度をもっと上げれば戻るかもしれない」と考え、スクレイピングや正規化、ベクトル検索を導入して精度向上を目指した。

 同時に、社内告知を徹底したり、教育研修の機会を増やしたりと、あらゆる手段で巻き返しを図る。しかし、利用は思うように伸びなかった。

利用が広がらず、精度や認知の向上に試行錯誤する

「利用が広がらないときはユーザーに聞くのが一番です。ヒアリングしてみると、みんなAIに興味はあるんです。ただ、『使いどころがわからない』『間違いが混じるから自分で調べる』といったネガティブな意見もありました」(池田氏)

 ヒヤリングの結果、AIチャットボットそのものの性能が悪いわけではなく、“導入しただけではユーザーには使われない”ことを痛感したという。過度な期待から「なんでもできるAI」と思われがちだが、実際の業務現場での使い勝手や精度の限界を認識してもらわないと、導入効果は発揮されなかった。

AIチャットボットの利用は持続しなかった

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