業務を変えるkintoneユーザー事例 第109回
とことんシンプルなUIで従業員がきちんと使えるように
使いやすさにこだわり、kintoneの画面を徹底的に簡素化した白川冷蔵
2021年07月07日 10時00分更新
2021年6月16日、愛媛県松山市のWstudioREDにて「kintone hive matsuyama」が開催された。kintone hive(キントーンハイブ)は、kintoneを業務で活用しているユーザーがノウハウや経験を共有するイベントだ。全国6箇所で開催され、その優勝者がサイボウズの総合イベント「Cybozu Days」で開催される「kintone AWARD」に出場できる。今回登壇したのは5社。トップバッターは白川冷蔵 代表取締役の白川和幸氏が務めた。
悩む在庫と品質の管理の問題 解決のきっかけは銀行
白川冷蔵は香川県三豊市高瀬町で昭和46年に創業し、野菜の卸売りや冷凍食品の一次加工を手がけている。香川県はとても美味しいたまねぎが獲れる一大産地だったが、現在は栽培者の高齢化などにより栽培面積が減少しているという。産地としての機能が低下する中、白川冷蔵は野菜を加工して、冷凍食品会社に販売するというビジネスに乗り出した。現在は、たまねぎやキャベツの皮をむいて冷凍食品会社に納めるという業務が全体の9割を占めている。
以前の白川冷蔵は課題を2つ抱えていた。1つは在庫管理。少なすぎれば欠品を出すし、たくさん仕入れるとロスが発生してしまう。もう一つは品質管理。作業工程は一部自動化はされているものの、ほとんどは手作業で行っている。年々、冷凍食品会社が求める品質が高くなっており、対応すべくさまざまな取り組みにチャレンジしているそうだ。
ある日、銀行の支店長と話している時に、雑談で2つの課題を伝えたという。すると、銀行はいろいろな企業と引き合わせてくれて、その中で東京コンピュータサービスの担当者と出会った。そこで、kintoneのことを知り、勉強会に参加することになったという。
白川氏はkintoneの基本機能を習得し、拡張性について知ることで、自分が求めるシステムを実現できるのではないか、と導入に至ったのだ。
「kintoneを導入するにあたり、大事にしたのことが3つあります。1つ目が誰でも使いやすいように簡素な画面であること。2つ目が拡張性があること。3つ目は運用までのプロセスが短いことです」(白川氏)
それまでも白川氏は自分でシステムを作ろうと、いろいろとチャレンジしたそうだが、とても使いにくく、自分以外には使えないという本末転倒な状況になっていた。そこで、誰にでも使えるシステムにしなければならない、ということで徹底的に簡素な画面にしようと考えたのだ。
kintoneの画面をゼロベースでカスタマイズ
kintoneの画面も比較的シンプルなのだが、さらにわかりやすい画面にしたかった白川氏は東京コンピュータサービスに相談した。東京コンピュータサービスは中四国で初開催となった2019年の「kintone hive matsuyama」に登壇し、「全画面表示カスタマイズの紹介」というテーマでプレゼンした。現場の人が迷わず使えるように、kintoneの画面をゼロベースで構築するカスタマイズサービスを提供しているのだ。
白川冷蔵も、この「全画面表示カスタマイズ」を利用し、画面の簡素化を実現することになった。
2019年8月に要件定義が固まり、仕様書を作る段階で、白川氏は従業員と共に作業することにした。作っているkintoneのシステムは従業員が利用するのだから、従業員が使えないと意味がないからだ。
「今までの業務もあるのに、こんなのを入れたら、社長できへんよ、と言われるんじゃないかと思いました。そこで、これで伝票の数が減るし、作業もあまり変わらないし、業務を少しずつ改善できる、と話しました」(白川氏)
10月から画面カスタマイズが始まり、たった1ヵ月ほどで製品が完成したそう。その後、プリンターの選定や入力装置のスマホを選定して、12月にはシステムの運用が始まった。開発工程が短くなった理由は、画面の仕様をパワーポイントなどで作って渡したからだという。自分たちが使いやすい画面を作って欲しいという願いからパワーポイントに具体化して提案したが、そこがうまくハマって開発工程の短縮を実現できたのだ。
「私どもは中小企業ですので、システムを入れるのは戸惑いがありました。しかし、見積りをいただいたところ、中小企業に優しい費用感で、想定内の予算で納まりました」(白川氏)
シンプル・イズ・ベストなUIで電気代との戦いに勝つ
実際に作られたスマホアプリはとてもシンプル。入庫と出庫をタップしたら、品目と産地、荷主、荷姿をプルダウンメニューから選ぶだけでいい。kintoneのメニューなどは表示されていない。新しい取引先などは追加できるようになっており、その情報はマスターにも直接追加されるので、次からは入力しなくて済む。
「パレットごとの数量は一定なので、毎回同じ数を打つのが面倒です。「全同数」ボタンを押せば一括で入ります。入力をどれだけ減らせるかと言うことに注力しました」(白川氏)
入庫されたらQRコードを印刷し、商品に貼り付ける。印刷エラーになったら再印刷ボタンを用意するなど、使う人のことを考えた設計にしているそう。出庫時にはスマホのカメラでQRコードを読み込むと、出庫した量を記録できる。保管中の在庫はシンプルにkintone標準のグラフ機能を利用している。標準機能とはいえ、在庫を一目で確認できるので問題なしだ。
kintoneを導入することで、クレームの対応時間も短くなった。クレームが発生すると、社内の伝票を探して仕入れ先に連絡することになる。基準としては6時間以内という目標があり、他社は2時間を目標に努力しているそう。白川冷蔵は2~3時間かかっていたという。しかし、kintoneを導入することで、1時間で処理ができるになった。また、社内でデータを共有できるようになったという。
「今は多くの倉庫を使い、空いている空間もたくさんあります。今後は、蓄積したデータを活用して最適発注とダブつき削減を行い、倉庫を最適利用したいと考えています。冷蔵倉庫は電気代との戦いと言っても過言ではありません。空いている倉庫の電源を切り、電気代を節約したいと考えています。私たちは、発展途上ではありますが、農業と中小企業がうまく連携してほしいと思っております」と白川氏は締めた。
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