5Gスマートフォンの低価格化が進んでいます。シャオミは日本で2月に「Redmi Note 9T」を投入しましたが、価格は税込み2万1600円。これはキャリア価格ですが、筆者の住む香港では1599香港ドル、約2万2600円で販売されています。つまりRedmi Note 9Tの日本価格は「キャリアが無理して安く売っている」のではなく、グローバルのSIMフリーモデル価格とほとんど変わりません。
コスパ重視のモデルを次々と出すシャオミですが、5Gの格安モデルは各国の5G加入者増を大きく後押しするものになるはずです。そもそもハイエンドスマートフォンを買う層は価格が高くても購入します。「それなりに機能があり、ライトユース対応の低価格なスマートフォン」を求め、「でも5Gにも少し興味ある」というユーザーに、シャオミはRedmi Note 9Tで応えているわけです。
すでに中国では2000元以下、3万円台半ば以下の5Gスマートフォンが次々と登場しています。中国では5Gスマートフォンの累計販売台数が2億7000万台を超えており、人口約14億に対して5Gスマートフォンは20%弱普及しています。シャオミなどが低価格5Gスマートフォンを出したことで、ここまで売れているのです。
一方、中国以外のメーカーも5Gスマートフォンの低価格化を進めています。サムスン電子は2020年秋に「Galaxy A42 5G」をグローバルで約4万円台で発売し、今年に入ってからは「Galaxy A32 5G」を日本を含む各国に投入。香港ではSIMフリーで2698香港ドル、約3万8000円で販売されています。なお日本発売のGalaxy A32はキャリア販売のため3万円台前半の価格が実現できているのでしょう。
Galaxy AシリーズはフラッグシップのGalaxy Sシリーズ、Galaxy Noteシリーズとは別のカジュアルモデルのラインで、価格はより安価です。しかしサムスンはこのGalaxy Aシリーズ以外からもさらに低価格な5Gスマートフォンを出してきました。中国で5月に発表された「Galaxy F52 5G」は1999元(約3万4000円)という、中国メーカー各社の普及価格帯の5Gスマートフォンを意識した価格で登場しています。
Galaxy F52 5GのスペックはSnapdragon 750Gにメモリ8GB、ストレージ128GB。6.6型型ディスプレー(2408x1080ドット)を搭載しリフレッシュレートは最大120Hz。カメラは6400万画素+800万画素+200万画素+200万画素で、フロントカメラは1600万画素。そしてバッテリーは4500mAh。サムスンの低価格モデルはスペックを落としがちですが、ディスプレー解像度やカメラ性能は価格を考えるとコスパ度はかなり高いと言えます。Galaxy F52 5Gは中国市場を本気で狙ったモデルなのでしょう。
さて中国市場で本気の5Gスマートフォンを出したサムスンに対し、ノキアブランドのスマートフォンを展開するHDM Globalは「Nokia X20」を349ユーロ(約4万6000円)で5月に発売しました。3万円台の価格は出せなかったものの、1年前に投入したノキア初の5Gスマートフォン「Nokia 8.3 5G」が599ユーロ、約8万円でしたから大幅な値下げです。
Nokia X20の主なスペックはSnapdragon 480、メモリー6 or 8GB、ストレージ128GB、6.67型(2400x1080ドット)ディスプレー、4570mAhバッテリー。カメラは6400万画素+500万画素+200万画素+200万画素、フロントカメラは3200万画素。これまでのノキア上位モデル同様、カメラはカールツァイスと提携しています。
ノキアは2021年4月から製品名のナンバリングを従来の「1桁数字+小数点以下1桁」から、「シリーズを表すアルファベット1文字+2桁数字」とわかりやすいものに変更しました。この4月に発表されたモデルはこのX20に加え、「X10」「G20」「G10」「C20」「C10」の一挙6機種。製品はミドルレンジからエントリーモデルに集中しています。いずれSnapdragon 800番台を搭載する「X30」あるいは「X50」なんて上位モデルも出てくるのかもしれません。
低価格モデルが使い物にならなかったというのは数年前の話であり、今ならばライトユースなら3~4万円台のスマートフォンで不満が出ることはないでしょう。また通信料金が安くなったことで、SIMカードを複数契約しスマートフォンを2台、3台と持つことも楽にできるようになりました。サムスンやノキアの低価格5Gスマートフォンはライトユーザーの5Gへの最初の1台になるだけではなく、ヘビーユーザーのサブ端末としても十分使えそうです。1年後にはさらに低価格化が進み、1万円台の5Gスマホも各社から多数登場しているでしょう。
「スマホ好き」を名乗るなら絶対に読むべき
山根博士の新連載がASCII倶楽部で好評連載中!
長年、自らの足で携帯業界を取材しつづけている山根博士が、栄枯盛衰を解説。アスキーの連載「山根博士の海外モバイル通信」が世界のモバイルの「いま」と「未来」に関するものならば、ASCII倶楽部の「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」は、モバイルの「過去」を知るための新連載!
「アップルも最初は試行錯誤していた」「ノキアはなぜ、モバイルの王者の座を降りたのか」──熟練のガジェットマニアならなつかしく、若いモバイラーなら逆に新鮮。「スマホ」を語る上で絶対に必要な業界の歴史を山根博士と振り返りましょう!
→ASCII倶楽部「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」を読む
★ASCII倶楽部は、ASCIIが提供する会員サービスです。有料会員に登録すると、 会員限定の連載記事、特集企画が読めるようになるほか、過去の映像企画のアーカイブ閲覧、編集部員の生の声を掲載する会員限定メルマガの受信もできるようになります。さらに、電子雑誌「週刊アスキー」がバックナンバーを含めてブラウザー上で読み放題になるサービスも展開中です。
この連載の記事
-
第731回
スマホ
スマホ世界シェア4位をうかがう「Infinix」から激薄モデルや折りたたみが続々 -
第730回
スマホ
AQUOS R9 proのカメラ周りをドレスアップ! フィルター装着で広がるスマホの楽しみ方 -
第729回
スマホ
激薄折りたたみ「Galaxy Z Fold Special Edition」のケース3種類を試す -
第728回
スマホ
Xiaomi 14Tにフィルター装着できるMagSafeケース、香港の予約特典に登場 -
第727回
スマホ
Galaxyの2025年モデルがいよいよ登場「Galaxy A16 5G」が販売開始 -
第726回
スマホ
1700万円のシャオミ製スーパースポーツEV「SU7 Ultra」を広州モーターショーで見た -
第725回
スマホ
この冬一番の注目スマホ、超薄型折りたたみの「心系天下W25」がサムスンから登場 -
第724回
スマホ
駅名ごとGalaxy! クアラルンプールの「Samsung Galaxy駅」がスゴすぎた! -
第723回
スマホ
レトロデザインが可愛すぎる!? Nokiaケータイ風リュックの良さを知ってほしい! -
第722回
スマホ
iPhone 16発売直後の深セン、中国でも中古買い取りショップと転売が盛況 -
第721回
スマホ
日本と変わらぬ熱気がスゴイ! 中国・深セン版「ポタフェス」に行った - この連載の一覧へ