このページの本文へ

Primera/Nimble OS搭載の「HPE Alletra」、保守運用を自動化するクラウドコンソールで構成

HPE、“フルクラウド型運用”ストレージの新製品ブランド発表

2021年05月28日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2021年5月27日、“AS-A-SERVICE”化戦略に基づくストレージの新製品ブランド「HPE Alletra(アレットラ)」を発表した。AI/機械学習による自動化も組み込んだクラウドコンソール「Data Services Cloud Console(DSCC)」を用いてライフサイクル全体を管理可能にするもので、DSCCに対応したミッションクリティカル向けフルNVMeフラッシュアレイ2機種「HPE Alletra 9000」「同 6000」の提供を開始している。

 記者発表会では、AlletraストレージやDSCCといった新製品の詳細や導入メリットに加えて、オンプレミスのストレージ/データインフラ環境における課題とそれに対するHPEのビジョン、戦略などが紹介された。

今回はフルNVMeフラッシュアレイの「Alletra 9000/6000」、クラウド管理コンソール「DSCC」、DSCC上で提供されるデータサービス群が発表された

(左から)日本ヒューレット・パッカード 執行役員 コアプラットフォーム事業統括の本田昌和氏、ストレージ製品本部 本部長の尹 成大(ユン・ソンデ)氏、プリセールスエンジニアリング統括本部 ストレージ技術部 部長の中井大士氏

高可用性のPrimera/Numble OS、高性能のフルNVMeフラッシュを搭載

 HPE Alletraは新しいストレージブランドだが、今回発表された2製品はエンタープライズ市場ですでに実績のある「HPE Primera」(Alletra 9000)、および「HPE Nimble Storage」(Alletra 6000)のストレージOSを搭載した製品である。そのためAlletra 9000は100%、同 6000は99.9999%の可用性を保証しており、Alletra 9000は「ミッションクリティカル用途向け」、同 6000は柔軟性と拡張性のある「汎用ワークロード向け」と位置づけられている。

 さらに両機種は、NVMe SSDドライブを全面採用したフルNVMeフラッシュアレイとなっている。これにより、既存のPrimeraやNimbleよりも大幅に高いパフォーマンスを実現している。Alletraの場合、Nimble Storage比で最大87%のパフォーマンス(IOPS)向上が実現しているという。

HPE Alletra 9000/6000の概要。従来のミッションクリティカル/エンタープライズ向けストレージのDNAをそのまま受け継いでいる

フルNVMeフラッシュアレイになったことで、既存機種と比べてパフォーマンスが大幅に向上している

 Alletra 9000、6000ともシャーシは4Uサイズ。最小構成価格(税抜)は、Alletra 9000(9060)が5124万円から、Alletra 6000(6010)が2420万円から。いずれも「HPE GreenLake」による従量課金型での導入も可能としている。

「フルクラウド型運用」を実現するクラウド型コンソールも投入

 ただし、これだけならば、わざわざ新しいブランド名を冠した製品を投入する意味がわからないだろう。Alletra最大の特徴は、次に紹介するDSCCコンソールを用いた「フルクラウド型運用」だ。

 DSCCは、パブリッククラウド上に配置される統合データ運用のためのコンソールであり、ストレージのコントロールプレーンを提供するプラットフォームである。このDSCC上で、ストレージインフラの展開や管理、データ保護など、さまざまなデータサービスを提供するCloud Data Servicesを展開していく。

 顧客オンプレミス環境に設置されたAlletraストレージは、暗号化されたアウトバウンド通信で自動的にDSCCとのセッションを張り、コントロールプレーンの制御通信のみを行う。ストレージ内の業務データなどはDSCCには送信されず、データプレーンはオンプレミス内で保持されるセキュアな仕組みだ。なお、DSCCを配置するクラウドリージョンとして、日本国内リージョンも用意されている。

Data Services Cloud Console(DSCC)

 HPE プリセールスエンジニアリング統括本部 ストレージ技術部 部長の中井大士氏は、従来提供してきたInfoSightが「保守/運用の自動化」を行うものだったのに対して、DSCCのスコープはそれよりも広く、「設定/配備の自動化」「データ管理の自動化」までをカバーするものだと説明した。なお、InfoSightとDSCCは連携し、将来的にはDSCCのダッシュボードからInfoSightの主要な情報も参照できるようになる予定だ。

 今回のリリース時点では、DSCCで4つのデータサービスが提供される。ストレージを含むITインフラの予測分析を行う既存サービスの「InfoSight」のほか、シンプルなストレージ管理/監視機能を提供する「Data Ops Manager」、ボリュームのプロビジョニング作業をAIが支援して自動化/簡素化する「Intent-based Provisioning」、ストレージ環境全体の監査ログを集約/可視化する「Audit」の4つだ。

 このうちIntent-based Provisioningについてはデモが披露された。ボリュームを新規作成する際に、その用途(VDI、VMware 仮想サーバー、SQL Server、ファイルサーバーなどをプルダウンメニューから選択)、ボリューム数と容量、アクセスを許可するホストグループという4項目を設定するだけで、DSCCの管理下にある複数のアレイから最適なボリュームの配置場所を推奨する。これまでInfoSightを通じて蓄積してきた、多数のユーザーの使用状況データを学習したAIエンジンが使われているという。

 「これはインテント、つまりユーザーが『何をやりたいか』に基づいて、AIが最適なアレイを推奨してくれる機能。現在とこれまでの各アレイの利用状況から、用途や性能、使用容量の変化(今後の予測)までを加味してレコメンドしてくれる。これまでは人間が時間をかけて検討しなければならなかったが、その判断を誰でもできるようにした」(中井氏)

インテントベースの配備(Intent-based Provisioning)サービスの概要

DSCCの管理対象を拡大して「ストレージ環境全体の自動最適化」を図る

 なお、DSCCのデータサービスは今後も順次追加される。中井氏はバックアップなどのデータ保護、ストレージアレイ間のデータ移行といったサービスが、近いうちに追加される予定だと述べた。

 HPE ストレージ製品本部 本部長の尹 成大氏によると、既存のPrimera、Nimbleブランドのストレージも引き続き、新製品のAlletraと併売していく。将来的には、Primera、Nimbleのストレージも、DSCCによるクラウド管理に対応させていく予定だ。これに加えて、「HPE 3PAR」などその他のクラスのストレージやパブリッククラウドストレージについても、DSCCの管理対象としていく構想があるという。

 その狙いについて中井氏は、DSCCを通じてストレージ環境全体を一元的に管理することで「データ配置を最適化する」ことだと説明した。

 「Alletraに限らず他のストレージもDSCCが一元的に管理することで、アレイをまたいだストレージ環境全体での、データ配置の最適化が可能になる。AIが、コスト面、性能面、容量面の要件を考えてレコメンドを行い、今後DSCCで提供されるデータ移行サービスを用いて移行を行う。(DSCCの背景には)こうした構想がある」(中井氏)

 また中井氏は、HPEがDSCCの提供でクラウド型管理を推進する理由として、従来の管理手法のままでは「いつまでたってもオンプレミスが足かせになってしまう」ためだと説明した。特にストレージ環境は、運用管理が製品ごとにサイロ化しがちで手間がかかっており、企業競争力の源泉となる「データ活用」の取り組みを妨げているケースも多い。

 HPE 執行役員 コアプラットフォーム事業統括の本田昌和氏は、「HPE Storageは(ストレージ市場の)ゲームチェンジャーになる、という大胆な宣言をしている」と紹介した。そのために、HPEでは顧客企業におけるデータ管理の常識を再定義する根本的な変革を目指しており、その具体的な考え方がデータ中心/クラウドネイティブ/AI主導という「Unified DataOpsビジョン」である。

 さらに本田氏は、HPEがすべてのITリソースをクラウドサービスのように提供する「AS-A-SERVICEカンパニー」への転換を目指しており、今回発表した新ブランドや新製品もその戦略的な意味合いが含まれるものだと説明した。

 「AS-A-SERVICEの世界を実現していくうえでは、単純にインフラのハードウェアやソフトウェアをコンサンプションモデルで提供するだけではなくて、インフラそのもののあり方そのもの、それを管理する仕組みといったものも、合わせてAS-A-SERVICE型に変化していく必要がある。今回の発表は、まさにAS-A-SERVICE戦略を実行するために新しいコンセプトで使っていただく、戦略的な意味合いの大きい製品だ」(本田氏)

「Unified DataOpsビジョン」と「GreenLake Cloud Services」

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード