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地銀の新サービス創出を支える、“止まらない”ではなく“早く復旧できる”システムの裏側

「勘定系こそクラウドが最適解」SBIHDによる国内初のAWS勘定系、銀行DX普及の第一歩に

2024年11月27日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 2024年7月、福島銀行は、勘定系システムをSBIホールディングス(SBIHD)らが開発した「次世代バンキングシステム」に移行した。これは、国内で初めてAWS上で稼働開始した勘定系システムであり、安定運用を継続している。2025年には、島根銀行が同システムの稼働を予定しており、他の地域金融機関(地銀)や新生銀行も検討中だ。

 SBIHDの専務執行役員 グループCTOである木村紀義氏は、「新サービスの創出」や「オペレーショナル・レジリエンス(業務の強靭性・復旧力)」などの観点から、「勘定系こそクラウドが最適解」と強調する。

SBIホールディングス 専務執行役員 グループCTO 木村紀義氏

 本記事では、AWSジャパンの金融領域におけるレジリエンスをテーマとした説明会で語られた、SBIHDの次世代バンキングシステムの開発の経緯、オペレーショナル・レジリエンスの確保をはじめとするシステムの裏側について紹介する。

「次世代バンキングシステム」開発の出発点は、地銀の新サービス創出を促すこと

 SBIグループによるAWSの活用は、2017年の住信SBIネット銀行における本格利用にさかのぼる。2022年には、SBIHDがAWSを「推奨クラウドプロバイダー」に選定して、ビジネス戦略拡大に向けた包括的な連携を発表する。この連携の中には、“地域金融機関(地銀)向けの勘定系システム”の展開も含まれていた。

 もともとSBIグループでは、地方創生を注力戦略のひとつに位置づける中で、地銀向けアプリケーションの開発・提供を進めていた。しかし、勘定系にアプリケーションをどうつなぐか、つなぐためのコストをどうねん出するかが大きな壁になっていたという。「こうした課題から、体力のない地銀では、新サービスを創出しづらい環境が何十年も続いていた。であれば、我々自身が勘定系システムを開発して社会問題を解決しようと決断した」と木村氏。

 そして、AWSの支援のもと、SBIHD傘下のSBI地方創生バンキングシステムとフューチャーアーキテクトは、地銀向けのクラウド勘定系システム「次世代バンキングシステム」をゼロベースで開発。クラウドで提供する意義について、木村氏は、「常に新しいサービスを開発できるような環境に変えられること」だと説明する。

次世代バンキングシステム概要(フューチャーアーキテクトのニュースリリースより

 従来の勘定系システムでは、ハードウェアの監視・運用のコストに加えて、更改を繰り返さなければならない。OSやミドルウェアにも、保守サポート期限(EOL)がつきまとう。さらに、アプリケーションの多くがCOBOLで作られており、開発生産性が低い。このように維持だけでも多額のコストがかかる中では、本来注力するべき顧客接点へ満足に投資できない。「これでは“銀行業務自体が成り立たない”。こうした環境を変えるのがクラウド」だと木村氏。

クラウドを活用する意義(目指す方向性)

 クラウドを利用することで、維持コストを圧縮して、アプリケーション開発に集中できる。SBIHDが次世代バンキングシステムで目指すのは、地銀らが収支力を高められる領域に投資して、銀行DXを推進することだ。

必要なのは「早く復旧できるシステム」、ならばレジリエンスの高いクラウドが最適解

 とはいえ地銀に検討してもらう中で、「本当に勘定系がクラウドで大丈夫か」という議論は避けられないという。それに対して木村氏は、「クラウドだから心配というが、データセンター自体も障害が起こり得る」と答える。

 住信SBIネット銀行においても2020年、復旧まで7時間を要した障害が発生したが、その原因は“データセンターでのUPS(無停電電源装置)の不具合”だったという。「あり得ないと思えるかもしれないが、私が同様の電源障害を経験するのは27年間のうち4度目」と木村氏。これを機にSBIネット銀行は、クラウドのフロント系システムは5分で、オンプレミスの勘定系システムは1時間で災対切替できる体制を構築した。何より“人がジャッジせずにルールで判断する”仕組みが大切だという。

予期できない障害は発生するもの

 結局は、止まらないシステムよりも“いかに早く復旧できるか”を考えて設計することが重要であり、それならば、レジリエンスや俊敏性、拡張性を備えたクラウドこそが「勘定系の最適解」だと木村氏。加えて、「銀行全体で障害における無駄なコストを減らせるよう、『1分程度であれば障害ではない』という考え方に変わっていかなければならない」と強調した。

 アマゾン ウェブサービス ジャパンの金融事業開発本部長である飯田哲夫氏も、「金融システムが、FinTechサービスとつながったり、マイクロサービス化する中で、『ひとつのサービスを確実に動かすのではなく、オブザーバビリティを効かせて利用者側には分からないようシステムを切り替える』という考えが浸透し始めている」と説明する。

アマゾン ウェブサービス ジャパン 金融事業開発本部長 飯田哲夫氏

 こうした考えは、ネット銀行幹部などでは既に前提となっているといい、金融庁でも、業務が中断することを前提として、早期復旧や影響範囲の軽減を目指してオペレーショナル・レジリエンスを確保するよう、「オペレーショナル・レジリエンス確保に向けた基本的な考え方」を示している。

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