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最新パーツ性能チェック 第335回

Rocket Lake-Sこと、第11世代インテルCoreプロセッサーの実力は?

Core i9-11900K、Core i7-11700K、Core i5-11600K速攻検証!Ryzenからシングルスレッド最速を奪還

2021年03月30日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトライッペイ/ASCII

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「3DMark」で3D描画性能をチェック!

 次は「3DMark」で、同じGPU(GeForce RTX 3080)を動かした時のパフォーマンスに差が出るのかチェックしてみよう。今回は「Fire Strike」と「Time Spy」のみを利用する。

「3DMark」Fire Strikeのスコアー

 Fire Strikeでは総合スコアーにCPUを利用した物理演算テストのパフォーマンスも加味される。つまり、CPUのコア数が多いほうがPhisicsやCPUのスコアーにより多く加点され、総合スコアーが有利になる。しかし、Core i9-11900KとCore i9-10900KのPhysicsスコアーが同じな点から、CINEBENCH R23と同傾向であることがわかる。すなわち、CPUのコア数差をアーキテクチャーの優秀さで補っているということだ。現にCore i7やCore i5の新旧対決で明確な差がついている。

 また、このCore i9-11900KのスコアーはPower Limitがインテル推奨設定なので、それらの制限から解き放たれた真なる姿は今後の検証で明らかにしていきたい。とはいえ、現時点では第4世代Ryzenが第11世代Coreを圧倒する結果となっている。

「3DMark」Time Spyのスコアー

 一方で、DirectX 12を利用するTime SpyでもRyzen 9 5900Xがトップを獲ったものの、Core i5-11600KとRyzen 5 5600X、Core i7-11700KとRyzen 7 5800Xでは第11世代Coreに軍配が上がった。なお、こちらではCore i9-11900KのCPUスコアーはCore i9-10900Kを下回っている。Power Limit定格勝負の場合は、いかにアーキテクチャーが優秀でもコア数を減らしたCore i9-11900Kのほうが不利になることもある、といった感じだ。

消費電力にみる14nmプロセスの存在感

 最後にシステム全体の消費電力をラトックシステム「RS-WFWATTCH1」を利用して計測する。システム起動10分後の安定値を「アイドル時」、「OCCT Pro v8.0.1」の「OCCT」テスト(データセット大、エクストリーム&負荷一定モード、命令セットは自動設定)を15分回した時のピーク値を「OCCT」とした。ただし、インテル製CPUの場合、「OCCT」の値が続くのはせいぜい1分前後で、その後はPL1制限下で動くようになる。その時の安定値も記載している。

システム全体の消費電力

 まず第11世代Coreの消費電力は、インテル推奨のPower Limit設定にしている限りは前世代と大差ないことがわかった。BIOSやOCツールで設定できるPL1やPL2の設置が共通なのだから、PL1=TDPとなる設定で高負荷時の消費電力が変わらないのは当たり前である。しかし、Core i5-11600Kだけは事情が少し異なる。第9世代や第10世代のCore i5では高負荷時の消費電力が1段階(ピーク値と安定値がほぼ同じ)しか観測できなかったが、第11世代では上位モデルと同様に2段階の値が観測できた。

 BIOSの設計が変わったからという理由も考えられるが、Core i5でもCPU Package Powerの限界まで踏み込むような仕様に変更することで、より性能を出しやすくしたと考えたほうが自然だ。そして、確かにこれまでのベンチマークでも時折Ryzen 5 5600Xを上回るパフォーマンスを見せている。ライバルに追い付くためのチューニングが施された結果として、ごく短時間ではあるが消費電力を犠牲にしてより高いブースト状態へ移行するような仕様になったという感じだろう。

 そしてもうひとつ、第11世代Coreはアイドル時の消費電力が第10世代Coreに比べて、8〜10W高くなっている点にも注目したい。第11世代CoreはPCI Express Gen4対応になったほか、インテルZ590チップセット搭載マザーボードと組み合わせた場合はチップセット間バスがDMI3.0のx8接続(インテルZ490チップセットではx4接続)に強化された。足回りが強化されたぶん、アイドル時の消費電力も増えたということだろう。

まとめ:第4世代Ryzenに完全勝利とはいかないが、第10世代Coreの雪辱は果たす

 現在のインテル製CPUはプロセス微細化の遅れからライバルに自作erの熱意(シェアと言い換えてもいい)を奪われ、ここ10年で最も大変な時期を迎えている。その上インテルはCES 2021の発表で次世代のCPU(開発コードネーム:Alder Lake-S)をチラ見せしており、今回の第11世代Coreは“中継ぎ”であることを明確にしてしまった。次世代CPUでは10nmプロセスが採用され、ソケットやメモリーも変更されるとのウワサなので、今回の第11世代Coreは14nm世代の幕引きかつbit.LITTEデザインに遷移する前の最後のCPUとなる。

 つまり、「14nmプロセスの最後の輝き」とでも言うべきCPUなわけだが、残念なことに競合のCPUに対して、完全勝利とはいかなかった。もちろん、CINEBENCH R23のシングルスレッドスコアーは激増し、Excelの処理などでCypress Coveアーキテクチャーの採用による確かな性能向上は実感できた。しかしながら、Core i9-11900Kのマルチスレッド性能に関しては「Power Limitがインテル推奨設定の状態では」Core i9-10900Kにも負ける。消費電力も増加しており、インテル製CPUの厳しい現状が透けて見える。

 ただ、前世代ではほぼ手も足も出ない状況に追い込まれた状況を、14nmプロセスでここまで挽回した点は評価すべきだろう。14nm CPU(インテル)と7nm CPU(AMD)で比肩するシーンもあるぐらいなので、同じプロセスならアーキテクチャーはインテルのほうに大きな分があるとも言える。そして、その第10世代Coreを追い詰めた第4世代Ryzenも、ようやく在庫がチラホラ見かける状況になったとはいえ、まだ多くの需要を満たせるほど供給されていない状況が続いている。そんな折の第11世代Coreの登場は興味深いものがある。

 次回は実際のアプリやゲームでのパフォーマンス検証をお届けする予定だ。データは揃っており、あとは記事としてまとめるだけだが、筆者の気力と体力が続くことを期待しつつお待ちいただきたい。

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