●セキュアニューラルエンジンの実装方法変更
この文書でいくつか明らかになったことがあります。個人的に興味深かったのは、生体認証セキュリティの実装方法が、A13までとA14以降で異なっている点でした。
Touch IDのデータは、暗号化してセキュア領域に格納する仕組みとなっていました。iPhone XでFace IDがスタートした際にも、基本的にはA11 Bionicのセキュア領域に格納されていました。
Face IDを登録すると、顔の2Dデータと深度データを読み取って、これを処理して暗号化するわけですが、A13 Bionicまでは、セキュア領域内のニューラルエンジンで処理していたそうです。
しかしA14 BionicとM1チップからは、16コアのニューラルエンジン本体にセキュアモードを搭載する実装へと変更しており、セキュア領域内での処理ではなくなっているそうです。
生体認証のデータを処理する際は、それまでのタスクやメモリを一度リセットして処理をする仕組みで、他の処理と混ぜずに動作させることで、セキュリティを担保した機械学習処理を実現する仕組みになりました。
この変更は、ニューラルエンジンを二重に持つことを避けて、チップの設計を効率化する意味合いもありますが、セキュリティ目的で主たるパワフルなニューラルエンジンを活用できるようになる点は、将来アップルが実装しうる機械学習処理を生かしたセキュリティ機能の実現への道筋にもなります。
約200ページのセキュリティ文書には、こうした技術的なセキュリティの仕組みの実装方法が、デバイス、シリコンレベルからソフトウェア、アプリケーションに至るまで、様々な情報が詰まっています。こうした情報には、アップルが将来、どんなデバイスや実装を目論んでいるのかを垣間見る材料にもなるのです。
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