このところ、海外から資金や人を呼び込む規制に絡むニュースが続いている。
まず、資金について。
2021年2月21日付の読売新聞は、ベンチャーファンドについて、政府が海外企業への出資制限を撤廃する方針を決めたと報じている。
現在の法律では、ベンチャーファンドに対しては、ファンド全体の50%以上を日本国内の新興企業に出資するよう義務付けている。
この規制に対しては、日本のベンチャーキャピタル(VC)が、海外から資金を集める上で、足かせになっているとの意見が出ていた。
人をめぐる規制緩和も続く。
金融庁は1月12日、海外から資産運用会社の参入を促すため、英語で対応する「拠点開設サポートオフィス」を立ち上げた。英語での登録申請も受け付けるという。
狙いは、国際金融センターとしての日本の地位向上だ。
●国際金融センター指数で東京は4位
1990年代初頭のバブル経済崩壊後、日本経済の長期低迷が続いたことで、世界市場での東京のシェアも低下した。
世界の金融・資本市場における東京市場のシェアは、1990年には3割を超えていたが、2006年には1割を切ったとされる。
そのころから、国際金融センターとしての機能強化をめぐる議論は何度も繰り返されてきた。
●ブレグジットと、香港の民主化運動への取り締まり
今回、国際金融センターをめぐる議論が再浮上したきっかけは、中国政府による香港の民主化運動への取り締まり強化と、英国のEU離脱だろう。
ロンドン、香港といえば、世界のトップを争う国際金融センターの一角だ。英国のシンクタンク「Z/Yenグループ」が2020年9月に公表した国際金融センター指数は、次のような結果となっている。
1. ニューヨーク
2. ロンドン
3. 上海
4. 東京
5. 香港
6. シンガポール
7. 北京
8. サンフランシスコ
9. 深セン
10. チューリッヒ
東京、わりと良い位置にいるじゃないかと思うかもしれないし、80年代を知る人は地位の低下に寂しい思いになるかもしれない。
トップ10に中国の4都市が入っている点には注目すべきだろう。4都市を合計すると、国単位で中国は米国をも上回る力をつけていると考えられる。
2年ほど前から、中国政府は香港の民主化運動への摘発を強め、民主化グループのリーダーや、中国政府に批判的なメディアの経営者らを逮捕している。
英国は2020年末で、EUからの離脱(ブレグジット)のプロセスを終えた。
国際金融センターとしての地位で、ロンドンは世界2位、香港は5位につける。
情勢の流動化を嫌って、各国の金融機関が香港からシンガポールや東京に移転する動きがあるとの報道も見られる。
筆者も最近、香港から東京に移住した中国人から、東京の企業への転職を希望する人が増えているという話を聞いたことがある。
●「政治的安定」を強調する金融庁
ライバル都市の混乱に乗じたかどうかは不明だが、政府は1年ほど前から、金融センターとしての東京の機能強化を目指す動きを強めている。
2020年7月に閣議決定された「骨太方針2020」は、次のような方針を明記した。
「海外金融機関等の受入れに係る環境整備等により、世界中から優秀な人材や資金、情報を集め、世界・アジアの国際金融ハブとしての国際金融都市の確立を目指す」
金融庁は2021年2月に「世界に開かれた国際金融センターの実現」とのスライドを公表した。
このスライドで金融庁は、日本の強みとして「安定した政治・良好な治安・生活環境」を最初に掲げている。
直近2〜3年のニュースを見る限り、英国や香港と比べ、日本が落ち着いた情勢であるのは異論がないだろう。
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