●iPhoneへの指紋認証復活は消えたか?
前述の「各製品での体験の完結」の観点を確保するためのiPhoneの対応は何になるでしょうか?
マスクが前提の社会において、顔認証が難しい環境が継続する中で、iPhoneが生体認証を活用できる現実的な方法として、既存のアセットではTouch IDをFace ID端末に復活させることです。
実際、ホームボタンを廃止しながらFace IDを持たせなかったiPad Airには、電源ボタン(トップボタン)に細長いTouch IDを内蔵することで生体認証機能を盛りこんでおり、iPhoneのサイドボタンにTouch IDを内蔵することは、アップルが持っている技術としては可能であると言えます。
しかしここには、生体認証の手段が複数存在することによるセキュリティへの懸念があります。たとえば、Face IDが認証されなくても、Touch IDの認証で端末のロックを解除できて良いのか? どちらの生体認証を優位ととらえるのか? などの問題が出るからです。
そもそもTouch IDよりも誤認率を低下できるとしてFace IDを搭載した経緯から考えると、Touch IDの「セキュリティを緩める」扱いをすることになり、それをアップルあるいは顧客が許容するか、という問題があります。
そうした事情を考えると、もしApple WatchによるiPhoneのロック解除がユーザー体験として好評であるなら、iPhoneにTouch IDを復活させる可能性は非常に下がっていくのではないかと考えています。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
この連載の記事
-
第317回
Apple
アップル初のApple Parkでの開発者イベント、初公開の「Loop Building」とは -
第316回
Apple
「Mac Studio」アップルの多様すぎる接尾語について考える -
第315回
Apple
アップル「Mac Studio」登場で生じる、ラインアップへの疑問 -
第152回
Apple
アップル「MacBook Pro」ポート増加は敗北なのか -
第151回
Apple
iPhone分解アートと、Appleが目指す未来 -
第150回
Apple
アップル新型「MacBook Pro」どの構成で買うべきか -
第149回
iPhone
アップル「iPhone 13」4つの魅力 -
第148回
iPhone
アップルiPhoneラインナップから浮かび上がる2つのこと -
第147回
iPhone
アップル製品ラッシュふたたび? -
第146回
iPhone
アップルはiOS 15で「時間の支配権」をユーザーの手に取り戻させようとしている -
第145回
Apple
アップル新型「iMac」驚きの電源 - この連載の一覧へ