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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第133回

2021年、テレワークや動画配信に差をつける7つのポイント

2021年01月26日 16時00分更新

文● 前田知洋 編集●ASCII

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 カメラのレンズに向かって話す……。以前は、ニュースキャスターやテレビ番組のMC(司会)など、プロだけに必要なスキルでした。しかし、テレワークの急速な普及により、普通の人にとっても大切なスキルになり始めました。

 カメラに向かい、ただ喋るだけでも難しい……。それはわかっていても、「相手に、できるだけ良い印象をもってもらいたい……」と願ってしまうのは、筆者だけではないはずです。

 そこで今回は、筆者がテレビ出演やインタビューに出演して学んだり、気がついたりしたポイントを7つ紹介します。すぐにできる方法ですので、テレワーカーだけでなく、動画配信者にとってもヒントになれば幸せです。

1、カメラ目線は大切ですが、そのまま顔を動かさない

 カメラに向かって話すとき、よく話題になるのが目線の方向です。「カメラ目線がいい!」という人もいれば「照れくさい……」という人もいます。

 たしかに、プロンプターと呼ばれるニュースや講演用の原稿などを表示する装置があることを考えれば、カメラ目線は有効かもしれません。しかし、プロンプターは、本来はプロ用の機材。カメラ目線を効果的に使うには、少々ポイントを押さえておく必要があります。

プロンプターの原理。1カメラ 2フード(覆い)3液晶モニタ 4ハーフミラー 5対象からの映像 6モニタからの映像(by grm_wnr with Inkscape. CC BY-SA 3.0)

 カメラ目線のまま、顔の角度を傾けて話し続けると、見る人にナルシストっぽい印象を与えることがあります。話し手自身はそんな自意識過剰なつもりはなくても、話すときに顔を左右や上下に傾ける癖がある人は注意が必要かもしれません。

カメラ目線のまま顔を傾けるとナルシストっぽい印象に映る

 テスト撮影で話してみると、自分で映像を確認できるでしょう。もしそのような癖があるなら、カメラ目線のときは、できるだけ顔の向きを動かさないようにします。

2、レンズを見る秒数を決める(最初は全体の10〜20%がベター)

 日常生活の中で、ずっと相手の目を見続けて話すシーンはあまりありません。話す人の表情や話方によっては、なにか責められているように感じることもあります。

 筆者のおすすめのカメラ目線のタイミングは、最初と最後の挨拶、そして「ここは強調したい、説得したい」というシーンです。

 視聴者に訴えかけるテレビCMなどを観察してみるとわかりますが、カメラ目線は5秒〜10秒ほどが多く、カメラ目線が多いといわれるニュースでも、資料映像(現場映像)が挿入されるなど、視聴者が疲れたり、圧迫感を与えたりしないように工夫されています。

 カメラ目線に慣れないうちは、レンズを見るのを1回に5〜10秒、全体の10〜20%ほどに抑えます。プレゼンや動画配信に慣れ、柔らかい印象で話せるようになってから、1回の秒数や全体の割合を増やすといいでしょう。

3、個人なら反射式のプロンプターではなくスマホがおすすめ

 プロンプターはハーフミラーを使いますが、カメラのレンズの近くにスマートフォンを設置する方法もあります。

カメラのレンズ近くのスマホによるプロンプター

 筆者のおすすめはスマホを使う方法です。文字を自動スクロールする無料のアプリなどを利用すると低予算で実現できる上、画面が小さいので原稿を読んでも視線の移動が少なくなるメリットがあります。

4、アップになりすぎないように、プレゼンターならバストショットで

 テレビやモニターの画面が横長なのに対し、人間の顔や上半身は縦長です。そんな理由から、つい画面を埋めようと、テレワークや動画配信では、自分の顔を写してしまうことが多くなります。そうなると、視線の使い方がさらに難しくなり、相手も疲れるという悪循環になりがちです。

聞き手としてはいいが、プレゼンター(話し手)としては近すぎて圧迫感が強くなりやすい

 見ている人にとって心地のいい構図、たとえば、ポートレート写真における三分割法などを参考にするといいかもしれません。もちろん、話を聞くだけの参加者であれば、画面いっぱいの構図でもOKです。

三分割法を参考にした構図。対象の中心を1/4〜1/3の位置にする(青い色の線)

5、あえて手元の原稿に視線を落としたり
宙を見つめたりするなど緩急をつける

 連続したカメラ目線がダメなら、視線をどこに置けばいいのでしょう。

 もし、プレゼンに挿入する資料画像がなかったり、少なかったりするようであれば、あえて手元にある資料(または原稿)に視線を落としてみたり、「宙を見て思い出す/想像しているジェスチャー」を組み合わせてみたりすると、画面の動きに緩急ができ、見ている人に息をつかせる(リラックスさせる)効果があります。

6、メモはアナログで取るのもいい

 カメラを通じた打ち合わせなどで、メモを取るためにキーボードを打つ場合がありますが、あまりお勧めしません。その理由は、胸元に留めるピンマイクを除けば、テレワークなどで使われるノートPCやスマホのマイクは、キーボードの音を大きなノイズとして拾いやすいからです。

 相手の話した内容は、映像を保存しておき終了後に打ち込むか、話を聴きながら記録するなら、メモ用紙とペン、またはペンタブレットで記録すると「カチャカチャ」という音を出さずにスマートです。このアドバイスは、ミドルウェアの研究開発・販売を手がけるCRI・ミドルウェアの幅 朝徳さんに教えてもらいました。

7、背景の奥行きも考えてみる

 最後のアドバイスは背景について。テレワークのビデオ会議では、壁面やカーテンなどを背景にする人が多いかもしれません。しかし、相手に新鮮な印象を与えたいなら、部屋の奥行きを利用するために、カメラやPCのレンズを背景の壁面が斜めになるように向けるといいでしょう。

 いかがでしたでしょうか。カメラに向かって上手に話すスキルを身につけるのには時間がかかりますが、今回は予算をかけずにすぐにできるポイントを紹介してみました。

 筆者としては、この騒動が早々に収束して、顔を合わせて仕事ができるようになることを祈っています。しかし、上で紹介したようなスキルは、騒動が終わっても、決して無駄にはならないはず。ぜひ、皆さんも実践していただければありがたいです。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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