富士通クラウドテクノロジーズ、ネクストモードの2社が登壇「Slack Tour Japan Online」講演レポート
効果を実感できる「Slackと業務システムとのかしこい連携」
2020年12月23日 08時00分更新
業務効率の改善や柔軟な働き方を実現するため、Slackを社内アプリケーション基盤の“要”に位置づける動きが広がっている。SaaSや業務アプリをSlackに連携させ、業務効率や生産性を高める方法について、2020年11月開催の「Slack Tour Japan Online」では、Slackのユーザー企業である富士通クラウドテクノロジーズ、ネクストモードの2社によるパネルディスカッションが行なわれた。
業務の情報共有は基本的に全社に公開する
最初に、富士通クラウドテクノロジーズ クラウドインフラ部 プリンシパルエンジニアの五月女雄一氏が、同社のSlack利用状況について説明した。
同社は元々「ニフティ」の名で知られたインターネットサービス企業だ。現在の主力事業は「ニフクラ」のブランド名で展開する企業向けクラウドサービス(IaaS、PaaS)で、AWS、Azureに次ぐ国内3位のユーザー数を持つB2B専業の企業である。2017年に、コンシューマー向けビジネスを売却し、現在の社名に変更した。五月女氏は、ニフクラの運用を担当する傍ら、テクノロジーの活用による社内の業務改善活動もリードしている。
同社の社員数は286名だが、Slackアカウントはそれを大きく上回る800名ぶん以上を発行している。「ここが開発体制のポイントで、B2Bのサービスを開発して提供するために、社外の協力会社や個人のスタッフとの協業が欠かせない。そのための環境がSlackだ」と五月女氏は説明する。
同社がSlackを導入したのは2014年。五月女氏は当時、社内のコミュニケーション効率が非常に悪く、情報の伝達コストが高すぎると感じていた。他社も同じではないかと聞いてみると、当時米国で利用が広がっていたSlackを使って改善している企業が多いこと、そして「ChatOps」という業務改善の考え方を知る。そしてすぐにSlackの導入を決めた。
五月女氏はChatOpsを「チャットを起点としてあらゆるオペレーションを行う開発・運用手法」だと理解しているという。たとえばシステムアラートはチャットを通じて自動通知され、そのチャット上でチームが情報を共有しながら対処を進める。「システムと人の連携性を高め、業務を手動から自動に変えていくことを目指している。また、ナレッジの伝達速度を速め、属人化を標準化に変えることができる。情報伝達コストが大きく下がることが、ChatOpsの効果だと思っている」と五月女氏は話す。
富士通クラウドテクノロジーズにおけるSlack運用は、基本的にすべてのメッセージは社長を含む全社員がメンバーの公開チャンネルを使うことがルールとなっている。プライベートチャンネルを設定したい場合には申請が必要だ。
「日本人は『(うまくいくまでは隠しておいて)うまくいったら公開しよう』という発想をしがちだ。そこで、そもそもそういう行動が取れない仕組みを作ることで“ためらいのない情報共有”が進むようにしている。また、電話や口頭ではない、『誰がいつ、何を言ったのか』を確実に残すかたちで仕事を進めることが重要だと思っている」(五月女氏)
全員テレワークの新会社で、社長は社員をどう束ねるか
続いて、ネクストモード代表取締役社長の里見宗律氏が自社の紹介とSlackの使い方を説明した。
2020年7月に設立されたばかりの同社は、AWS開発の専門集団であるクラスメソッドと、ネットワーク企業のNTT東日本の合弁によって設立した。AWSを中心としたクラウドインテグレーションを主業とするシステム開発企業である。
コロナ禍の中で創業した同社の一つの特徴は、「全社員が基本的にテレワークで働くこと」だ。社長の里見氏ですらまだ直接会ったことがない社員も多くいるという。すべての業務をSaaSで行っているため、社員は好きな場所で働くことができる。里見氏自身も、ワーケーション中の北海道鶴居村からこのパネルディスカッションに参加した。
そんな同社の社内コミュニケーションの中核を担っているのがSlackである。里見氏が社長として抱えていた課題は「企業文化の構築」だった。「場所によらず働く環境は用意できたが、新しい会社としてのカルチャーを、テレワークで作っていくには、いくつか工夫が必要だった」(里見氏)。
まずはオープンマインドで仕事ができるように、社員に対してSlack上で「自分のキャラクターをさらけ出すこと」を呼びかけた。「マニアックな趣味や、こだわりは誰にでもあるもの。それを普段の生活と同じようにさらけ出すことで、最もパフォーマンスを引き出せると思っている」(里見氏)。
また、テレワークでは無意識に相手との「間違った距離感」を生むことがあるので、“誰もがマイノリティ”という気持ちでコミュニケーションをとるように促しているという。「男性女性、日本人外国人、異性愛車同性愛者……、見方を変えれば、誰でもマイノリティの立場をとることができる。誰とでもフラットにコミュニケーションを図るうえで、Slackは非常に役立っている」と里見氏は語る。
「新しいことにどんどん取り組んでいく。(アイデアや意見は)誰が出したかでなく、その中身が大事だと宣言している。会議の場ではなかなか出ないものも、Slackを使えばいつでもひらめきを共有できる」(里見氏)