今年9月にマイナーチェンジを実施した、メルセデス・ベンツの「Eクラス」。新しくなった「Eクラス」に試乗する機会を得ました。「Eクラス」とは、どんなクルマで、なぜ世界屈指の高級車と言われているのでしょうか? 試乗を通して、その理由を考えてみたいと思います。
「Eクラス」とは、どんな立場のクルマなのか?
クルマにあまり興味を持っていない人であっても「メルセデス・ベンツ」というブランド名を聞いたことのない人は、かなりの少数派でしょう。また、少しでもクルマに興味があれば「ガソリンエンジンの自動車という乗り物を発明した高級ブランド」ということをご存知のはず。実際に、メルセデス・ベンツは世界の多くの国の元首が愛用するクルマであり、かつては日本の天皇家でも利用していました。さらにF1などのモータースポーツの世界でも活躍しています。つまり歴史があり、格式が高く、しかも高性能なのがメルセデス・ベンツというブランドです。ちなみにメルセデス・ベンツはブランド名ですから、会社名は別。現在の名称は「ダイムラー社」です。ここがメルセデス・ベンツとスマートという2つのブランドのクルマを製造・販売しています。
そして、メルセデス・ベンツはコンパクトカーから大型のセダン、そしてSUVまで、数多くの車種を販売しますが、名称にはアルファベットを利用します。基本は、最も小さなクルマを「Aクラス」と呼び、大きくなるにつれ「Bクラス」「Cクラス」「Eクラス」「Sクラス」と呼びます。オフロードも走れるようなSUVは「GL」を頭につけて、小さな方から「GLA」「GLB」「GLC」「GLE」「GLS」と呼びます。また、基本モデルを少しスポーティにした派生の「CLA」「CLS」、2人乗りのスポーティーな「SLC」「SL」、オフロード走行を得意とする「Gクラス」、ミニバンの「Vクラス」などが発売されています。
そして、これらの数多くのモデルの中で、最も古くから存在し、そして最もメルセデス・ベンツらしいクルマといえば、「Eクラス」と「Sクラス」でしょう。「Eクラス」は中型のセダンで、成功したビジネスマンに大人気です。そして大型セダンの「Sクラス」は、会社の代表や国家元首などが利用する高級車の定番モデルとなっています。
そもそもメルセデス・ベンツを販売するダイムラーは、ダイムラー氏とベンツ氏という2人のエンジニアが合流したことで生まれました。そして最初に作られたのが、大中の2つのモデル。それが、今から90年ほど前のことです。その2台のうちの中型の実用車は「Eクラス」のルーツになりました。大きなモデルには、新たに大型モデルが追加されてゆき、それが「Sクラス」の歴史につながります。つまり、メルセデス・ベンツはその最初から、中型と大型の2つの流れを持っていたのです。
世界最高の実用車であり、屈指の高級車がEクラス
メルセデス・ベンツは約90年前の誕生のときから現在まで、常に世界最高峰の評価を守り続けた稀有なブランドです。もちろんメルセデス・ベンツよりも高額なブランドは他にも存在しました。しかし、メルセデス・ベンツには高級だけでなく、もうひとつの大きな価値がありました。それが優れた実用性です。特にEクラスには、高級セダンだけでなく、世界最高峰の実用車として認められた歴史もありました。
欧州を旅行した人ならご存知でしょうが、ドイツなどではメルセデス・ベンツのタクシーが数多く走っています。これは高級感を求めたものではなく、タクシーに求められる性能をEクラスが有しているのが理由です。それは「長時間の走行でもドライバーがラク」「安全性能が高い」「長距離を走れる優れた耐久性」といったもの。1980年代に誕生した最初のEクラス(W124型)は、「定期的な整備をしっかりしていれば、いつまでも新車と同様の性能を維持できる」と言われました。また、いつの時代もメルセデス・ベンツは最新技術の開発に熱心であり、Eクラスにはその時代の最新技術が搭載されていました。つまり「高級感がある」というだけでなく、優れた実用性と最新技術が備わっていることがEクラスの成功の理由なのです。
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