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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第578回

Ice Lake-SPはスループットがSkylake-SPの2倍以上になる インテル CPUロードマップ

2020年08月31日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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実質的なスループットは
Skylake-SPの2倍以上

 次に冒頭でも少し書いたI/O周りについて。下の画像がPCIe周りの構成であるが、4つのPCIe Gen4レーンは1x16、2x8、4x4に変更可能であり、例えば4つのPCIeのうち1つをM.2 SSDのRAID構成に割り当てるなんてこともやりやすくなっている。

それぞれのPCIeおよびDMI/CBDMAには個別にVT-d(I/O Virtualization)が用意されており、独立に管理されるあたりは、さすがにサーバー向けという感じである

 レーンあたりほぼ16Gbpsだから、x8で128Gbpsとなり、100Gイーサネットでも十分対応可能である。昨今は100Gを超えて200Gや400Gイーサネットが次第に増えてきており、やっとインテルもこれに対応できるようなプラットフォームを準備できた形だ。

 その一方で、一番左端のDMIは引き続きDMI3、つまりPCIe Gen3のままとなっている。そのDMI3の脇にあるCBDMAというのはIntel QuickData Technologyで、CPUの代わりにDMAを行なうアクセラレーターだが、こちらはメモリー間DMAやメモリーとMemory Mapped I/Oの間のDMAを、CPUから行なう場合の倍の速度で実行できる。

 このQuickData TechnologyそのものはSkylake-SPの世代から搭載されている機能だが、DMAエンジンの高速化やページの比較といった機能が新たに追加されている。

 ちなみにインテルによれば、帯域を増やしたのみならずI/O Virtualizationの高速化なども施したことで、実質的なスループットはSkylake-SPと比較して2倍以上になっているとする。

扱うデータ量によっても当然差があるが、Sky Lake-SP世代では特に256~512Bytesあたりはあまり性能が上がらないようで、512Bytesでの性能差は3.6倍にも達している

 細かいところでは他にパワーマネージメントとレイテンシーの関係やSpeed Select Technologyで新しく追加された3つのモードの詳細なども語られたが、あまり大きなトピックではないのでこちらは割愛させていただく。

パワーマネージメントとレイテンシーの関係とは、省電力モードから復帰するとき、Sky Lake-SPでは11回に1回の割合で妙にレイテンシーが大きくなる(20ms強)ことがあったが、Ice Lake-SPではこれがなくなり、常に12ms未満で復帰するという話だ

性能と消費電力はIce Lakeと大差ない
Ryzen Threadripperへの対抗は無理

 以上のように、Sunny Coveコアに若干の改良を加えたIce Lake-SPであるが、最後まで語られなかったのが絶対的な性能と消費電力である。実のところこれは10nm+プロセスを使っているという時点で現在のIce Lakeと大差ないことが自明である。

 再び連載576回の図に戻るが、例えばXeon Platinum 8380Hを例にとると、28コア構成で定格2.9GHz/ブースト4.3GHzでTDP 250Wとなる。

 Sunny Coveの場合、2.9GHz駆動にすると電圧的には定格とTurbo Boost時の真ん中あたりになるだろうか? Sunny Coveが4コアで定格時15W、Turbo Boost時50Wと仮定すると35Wあたりになる。4コアで35Wなら28コアで245Wといったあたり。ちょうどXeon Platinum 8380HのTDPの250Wとマッチすることになる。要するに周波数は全然上がらないと考えてよさそうだ。

 またTurbo Boostも、なにしろIce Lakeが3.9GHz止まりであることを考えると、Ice Lake-SPも4GHzを超えるのはかなり厳しいように思える。もちろんコア数を減らせばもう少し頑張れるとは思うが(だからこそSpeed Select Technologyを拡充したのかもしれない)。

 そしてこの28コアはどうもMCCらしいということで、HCCなら38コアという数字がだいぶ前から聞こえてきている(インテルの公式では、このあたりは一切未公表)。仮に38コアが事実だとすると、250WというTDP枠がそのまま維持されるとすれば、コアあたり6.5W程度。4コアで26Wというところか。

 Core i7-1065G7がConfigurable TDPで25Wに設定すると、ベースクロックが1.5GHzに引きあがるが、大体このあたりということになる。つまりコア数こそ38コアと増えても、動作周波数は1.5~1.6GHzあたりをうろうろすることになる。

 これはあくまでもTDP 250Wという仮定での数字なので、実際に製品が出てこないとこのあたりがどうなるのかはわからないが、とりあえずXeon W向けはあまり期待ができないスペックに落ち着きそうだ。

 もっともIce Lake-SPそのものが、今ではSapphire Rapidsへの中継ぎといった位置付けになっているわけで、その意味ではあれこれ転用は考えていないのかもしれない。

 ただ少なくともRyzen Threadripperへの対抗は、Ice Lake-SP世代では無理と思われるため、そうした製品は投入されないだろうと予想される。

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