物理的なSIMカードが入らずeSIMだけに対応する「Rakuten Mini」の登場には驚かされましたが、中国でもeSIMだけが使える端末が出てきました。シャオミが出資する多親科技(Duoqin Technology)の「Qin K201」です。
Duoqinはこれまでも大型ボタンを備えカメラの無いフィーチャーフォン「Qin 1 / Qin 1s」や、22.5:9のウルトラワイドディスプレーを搭載する小型スマートフォン「Qin 2」などを出してきました。Qin K201はその流れを組むニッチ向けの携帯電話で、子供向けの簡単キッズケータイとなります。
DuoqinはAI関連の開発も行なっており、シャオミの子会社であることから歴代の製品はみなシャオミの音声AIシステム「小愛同学」を内蔵しています。Qin K201ももちろん小愛同学が利用可能で、テンキーの無い小型の端末ながら音声で操作などが可能。電話番号の登録やタイマーの設定も声で語り掛ければできますし、子供の学習アシスタントとして「万里の長城はだれが作った?」といった質問も音声で行えます。
eSIMは中国のキャリア、チャイナモバイルの4G専用プランを内蔵。本体価格は399元(約6000円)、毎月19.9元(約300円)で通話やAIのデータ通信が定額利用できます。なお、2年間の通信料込みで699元(約1万600円)というセット販売品もあります。ストラップもついているので首からぶら下げて子供に持たせるのがよさそうですね。できればLINEと組んでLINE CLOVAに対応させ日本でも出してほしいものです。本体サイズは約74×38.6×12.1mm、重さは約48g。ディスプレーは1.54型(240x240ドット)でバッテリー容量は1150mAhです。
さてこのQin K201の情報を調べていたところ、懐かしい名前が出てきました。K201のプロモーションとして中国ネット界のインフルエンサー、羅永浩(Luo Yonghao)氏が起用されているのです。同氏は歯に衣着せぬ口調が特徴で、中でもシーメンスの冷蔵庫ボイコット事件(2011年)は中国でかなり有名です。
羅氏は2018年に突如「Smartisan」(スマーティザン)を立ち上げ、スマートフォン市場に参入もはたしました。「文科系のスマホはアップルとSmartisanだけだ」とばかりに、自分の理想とする美しい端末を次々と出していきました。しかし競争の激しい中国市場で生き残ることはできず、日本市場を夢見たもののそれも果たせず、2019年にはTiktokのバイトダンスに買収されてしまいました。
筆者はSmartisanのデザインが気に入り、北京に飛んで何度も取材を行いました。特に2機種目となる「Smartisan T2」は個人的にはSmartisanの製品の中で一番好きなモデルです。もう3年前に書いた取材記事にも思い入れがこもっています(家族のスマホトラブルをすぐに助けられる「Smartisan T2」発表会&実機レビュー)。
羅氏はSmartisanから離れたあと、Sharklet Technologies社のパートナーとなった他、2020年からは中国版Tiktok(Duoyin)と契約。Eコマース・ライブストリーマーとしてDuoyinでライブ配信をしながら様々な製品の販売も行なっています。
2020年6月18日は中国最大のEC、JD.com(京東)の創業日キャンペーンを開始、大々的な割引販売やライブ販売が行なわれました。羅氏は6月17日20時からJD.comのライブ配信に登場、Qin K201を7012台売上げ、その金額は419万3176元(約6400万円)に達しました。販売台数は同日にJD.comで売れた携帯電話・スマートフォンで10位に入ったとのこと。Smartisanでは品質問題などから叩かれたりしたものの、羅氏そのものの人気は中国でまだまだ健在なことを証明してくれました。
Smartisanの名前をもう覚えている日本の人は少ないでしょうが、久しぶりに羅氏が元気に活動している姿を発見して筆者はちょっとうれしくなったのでした。eSIM内蔵のキッズケータイという製品もある意味画期的で、羅氏も製品特徴を伝えやすかったのかもしれません。今までにはなかった製品の登場に、Smartisanが市場に出てきたころの興奮を少しだけ重ね合わせて見る筆者なのでした。
最後に、Smartisan T2の発表会の一部の動画を大昔に撮ってYouTubeにアップしていました。美しさを目指した羅氏の芸術品、画質は悪いもののそのイメージを感じ取ってください。
「スマホ好き」を名乗るなら絶対に読むべき
山根博士の新連載がASCII倶楽部で好評連載中!
長年、自らの足で携帯業界を取材しつづけている山根博士が、栄枯盛衰を解説。アスキーの連載「山根博士の海外モバイル通信」が世界のモバイルの「いま」と「未来」に関するものならば、ASCII倶楽部の「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」は、モバイルの「過去」を知るための新連載!
「アップルも最初は試行錯誤していた」「ノキアはなぜ、モバイルの王者の座を降りたのか」──熟練のガジェットマニアならなつかしく、若いモバイラーなら逆に新鮮。「スマホ」を語る上で絶対に必要な業界の歴史を山根博士と振り返りましょう!
→ASCII倶楽部「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」を読む
★ASCII倶楽部は、ASCIIが提供する会員サービスです。有料会員に登録すると、 会員限定の連載記事、特集企画が読めるようになるほか、過去の映像企画のアーカイブ閲覧、編集部員の生の声を掲載する会員限定メルマガの受信もできるようになります。さらに、電子雑誌「週刊アスキー」がバックナンバーを含めてブラウザー上で読み放題になるサービスも展開中です。

この連載の記事
-
第740回
スマホ
インドはPOCOスマホの天国だった! シャオミの強力なインド向けラインナップを紹介 -
第739回
スマホ
大型ショッピングモールで「Galaxy AI」を体験できるポップアップイベントに参加! -
第738回
スマホ
Galaxy S25発売記念! 日本未発売の「Galaxy S25+」をほかの2モデルと比較 -
第737回
スマホ
OPPO Find X8の「XPAN」モードで写真撮影にこだわるようになった -
第736回
スマホ
日本でも欲しい! eSIM非対応スマホをeSIM化するSIMカードなどをGlocalMeがCESで展示 -
第735回
スマホ
もはやアート! シャオミ「Xiaomi 15 シルバー版」は背面の凹凸模様が美しすぎ -
第734回
スマホ
Androidから脱却のファーウェイ独自スマホOSと現行版の違いを見る -
第733回
スマホ
ハッセルブラッドカメラで話題の「OPPO Find X8」の日本未発売カラー3色を比較した -
第732回
スマホ
紙のような書き心地のタブレット「HONOR Pad 9 Pro」は学生に人気 -
第731回
スマホ
スマホ世界シェア4位をうかがう「Infinix」から激薄モデルや折りたたみが続々 -
第730回
スマホ
AQUOS R9 proのカメラ周りをドレスアップ! フィルター装着で広がるスマホの楽しみ方 - この連載の一覧へ