●手数料の無償化は「不公平」になりかねない
もう一つ、総務省が目を付けているのが「手数料」だ。
ユーザーが契約しているキャリアをMNPで出ていく際に3000円の手数料が請求されている。キャリアとしては3000円を請求する設定にすることで、ユーザーに「お金がかかるので、辞めない方がいいよ」というプレッシャーをかけることができる。総務省としては、これを問題視しており、3000円を撤廃しようとしているようだ。
有識者会議では、有識者から「手数料の根拠が不透明だ」という指摘があるようだが、そんなことを言ってしまうと、世の中にある、ありとあらゆる「価格」や「料金」について、「根拠が不透明だ」という言いがかりをつけることができてしまう。有識者としては、あまりに非常識な発言だ。
確かに3000円が撤廃されて、タダでMNPできるようになれば、キャリアを移行する人にとってはありがたい。しかし、MNPの手続きをする上では、オペレーターの人などの人件費なども当然かかっている。無償化になれば、その人件費はMNPする人は負担しなくても、元のキャリアを契約し続ける人が負担することになる。これでは、MNPをする人が得をして、MNPをしない人が損をするということになりかねない。まさに「不公平」であるため、無償化の実現についてはじっくりと検討する余地がありそうだ。
総務省として、MNPを活性化させたいのは理解できる。しかし、今のところ、他キャリアに乗り換えるメリットがあまりに少ないのが、MNP件数が減少している元凶ではないか。
昨年10月の法改正で、各キャリアともがんじがらめであらゆる競争ができなくなっている状況に陥っている。各キャリアがもっと自由に端末販売や料金プラン、キャンペーンで切磋琢磨して競走できる環境を再構築しないことには、いつまで経ってもMNPの件数は増えないのではないだろうか。
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