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センシティブな顧客企業の情報を守りつつデータ活用も促し、“業界の新たなスタンダード”へ

M&A仲介ビジネスをBoxが進化させる ―日本M&AセンターがBoxを選択した理由

2024年10月09日 11時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

提供: Box

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日本M&AセンターのWebサイト(www.nihon-ma.co.jp

 「M&A(企業の買収・合併)の仲介でわれわれが扱う情報は、企業の業績や資産から、従業員一人ひとりの個人情報まで、つまりは『その会社のすべて』がわかる情報です。この非常にセンシティブな情報を守りつつ、どう活用していくか。そのバランスが非常に難しいところです」

 日本でも活発化しているM&A。日本M&Aセンターは、中堅・中小企業のM&A仲介を数多く手がける企業だ。1991年の創業から累計で9000件を超えるM&Aを成約させてきた実績を持ち、近年ではグループ企業や海外拠点も数多く設立して「世界No.1のM&A総合企業」を目指している。

 同社では2023年、オンプレミスのファイルサーバーから「Box」への全面移行を行い、全社的なBox活用を開始した。ファイルサーバーにはない大きな拡張性を手に入れて、将来のデータ活用に備える動きだ。同社で社内・グループ内の情報システムとセキュリティを統括する蔦 将宏氏に話をうかがった。

日本M&Aセンター IT統括部 情報システム部長 兼 日本M&Aセンターホールディングス 情報セキュリティ部長の蔦 将宏氏

「会社を売りたい」と「買いたい」を結びつけ、その先の成功まで導くビジネス

 「会社を売りたい事業主(譲渡企業)」と「会社を買いたい事業主(譲り受け企業)」が、双方にメリットのあるかたちで売買契約を結ぶ(成約する)のが「友好的M&A」と呼ばれる取引だ。2000年代以降、日本国内でもこうしたM&Aの成約件数は持続的に増えている。主なパターンとしては、経営者の高齢化と後継者の不在を背景とした「事業継承型M&A」、さらなるビジネス成長のために資本強化を目指す「成長戦略型M&A」などがある。

 M&A仲介は、この「売りたい」「買いたい」のマッチングと成約を支援するビジネスだ。日本M&Aセンターは、M&A仲介業界の最大手として、国内M&A市場の拡大をリードしてきた。

 業界における同社の強みは、全国の会計士・税理士、地方銀行・信用金庫、大手金融機関との間で独自の情報ネットワークを持ち、そこから「売りたい」事業主の紹介を受けるケースが多いことだと、蔦氏は説明する。もともと同社は1991年、全国の公認会計士・税理士のネットワークを基盤に創業したという経緯を持ち、そのネットワークが現在の強みにつながっている。

 もうひとつの強みは、M&Aを成約させて(会社と会社を結びつけて)終わりではなく、その後の「成功」まで導くことができる点だという。

 「実は、M&Aでいちばん大変なのは“会社と会社が結びついた後”なのです。会社としての仕組みも、文化や風土も、働く環境も、お互いにすべてが違うなかで、その違いを乗り越えて成功につなげなければならない。当社のグループ企業には、そうしたM&A後の統合プロセス(PMI:Post Merger Integration)を支援するコンサルティング会社もあります」

 グループ企業にはそのほかにも、譲渡企業の価値(M&Aの取引価格)を中立的な立場で評価・算定する会社、インターネットでM&Aのマッチングを行う会社などがある。こうした専門性の高いグループ企業を持つことで、M&Aにまつわる総合サービスを提供できる体制を構築することが目標だ。

専門性の高いグループ企業のネットワークで「M&Aの総合企業」を目指す

Boxを選んだ理由は「データ活用に向けた拡張性」「無制限の容量・世代管理」

 日本M&Aセンターでは、オンプレミスのファイルサーバーから移行するかたちで、BoxのEnterprise Plusプランを全社導入した。ファイルサーバーのリプレース検討を開始したのは2021年11月のことだ。

 蔦氏は「その時点ですでに、ファイルサーバーからクラウドストレージへの移行は既定路線でした」と語る。クラウドストレージへの移行を決めた最大の理由は「今後のデータ活用に向けた拡張性」だったという。

 「これからのデータ活用を考えると、オンプレミスであることが“足かせ”になると判断しました。当社では『Salesforce』『Microsoft 365』『Zoom』といったクラウドツールを利用していますが、オンプレミスのファイルサーバーは、こうしたツールとAPI連携できません」

 一方で、データがさまざまなクラウドサービスに分散してしまうことも、データ活用にとっては“足かせ”となる。そこで、すべてのデータを集約した「ハブ」となるクラウドストレージへの移行が前提となったわけだ。

 複数のクラウドストレージサービスを比較検討した結果、最終的には“Box一択”という判断になった。その理由としては「容量無制限で使えること」が大きかったという。ファイルサーバーから移行するコンテンツがすでに30TBほどあったことに加えて、要件として「ファイルの世代管理(バージョン管理)を世代無制限で行えること」があり、そのためにも容量無制限であることは重要だった。

 「不正利用を抑止するためにも、保管されているドキュメントがどういう変遷を経て、今の状態になっているのかを確認できる必要がありました。そのためドキュメントの世代管理機能も必須の要件になったのですが、そこに大きなコストはかけられません。そういう意味でも、やはりBoxが適していました」

※注:Boxの世代管理機能は、利用するプランによって保存できる世代数が異なる。日本M&Aセンターが導入したEnterprise Plusプランの場合は、無制限の世代管理が可能だ。

 Boxの導入決定後、同社では2022年9月から移行プロジェクトを開始した。そこから数回に分けてファイルサーバーからのコンテンツ移行を進め、並行して社内各部署へのBoxトレーニングを実施。すべてが完了した2023年3月から、全社でのBox利用がスタートした。

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