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鳥居一豊の「コンパクトスピーカーが好き!!」 第3回

気軽に本格的なオーディオを楽しむセット

オーディオを本当の意味で自分のモノにする体験、自腹購入した「B&W 607」と「ELAC DS-A101G」を使う

2020年06月26日 17時00分更新

文● 鳥居一豊 編集●ASCII

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新しいスピーカーやアンプを買ったら、まずはエージング

 胸をワクワクさせてセットアップを済ませたら、すぐに素晴らしい音が楽しめる。と、思いがちだが実はそうでもない。特に新品のスピーカーはドライバーユニットの駆動部分の動きが固く、音もギクシャクとしたものになる。

 本格的なオーディオって、やっぱり面倒なんだな。とは、思わないで欲しい。新品の服や靴も最初は硬いし身体に合わないので、けっして着心地が良いとは言えない。バイクや自動車も同様に慣らし運転が必要だ。オーディオ機器も、本格的なコンポーネントになるほど、エージングをするうちに本来の音が出るようになるものが多い。今回はそんな新品のオーディオ機器のエージングについて紹介しよう。

 エージングと言っても、何か難しいことをするわけではない。基本的にやることは“音を出す”ことだ。つまり、普通に使っていればいい。いつも音楽を聴く音量で、1週間から1か月くらいマメに鳴らしてやると、だんだんと音がほぐれて本来の音が出るようになる。だから、新品のうちは、販売店で聴いた音と違う! とがっかりしてしまわないこと。毎日聴いていくうちにだんだんと音が良くなってくるので、逆にそれを楽しむくらいの気持ちで育ててやろう。

 このようにエージングといっても難しい事は何もないのだが、一応、教科書的な説明もしておこう。「こういう小難しい話や作法とか儀式めいたことをやるからオーディオはつまらないのだ」と考える人は読み飛ばして構わない。

 まずはアンプなどのコンポーネント。こちらはエージングに費やす時間はスピーカーに比べれば短いので、まさしく普通に使っているだけでいい。強いていえば、電気回路のすみずみまで電気を通すことが重要なので、ひとつの入力だけでなく、接続を切り替えてすべての入力端子に信号を入力してあげるといいだろう。

 ちょっとしたコツというか、使いこなしのポイントは、付属している電源ケーブルをきちんと揉みほぐすこと。たいていの場合、ケーブル類は折り畳まれていて、折りグセがついてしまっている。これを丁寧に揉んでまっすぐになるようにほぐすといい。見た目もきれいになり気分が良い。こういうことも趣味の世界では大事な要素だ。大事なオーディオ機器を大切に扱うケアポイントのひとつと考えておこう。そのほか、接続用のケーブル類も新品を使う場合は丁寧に揉みほぐしてやろう。

 続いてはスピーカー。607のマニュアルを読むと、いつもの音量で1日あたり12時間鳴らし、それを1週間ほど続ければ良いと説明がある。そもそも1日12時間も音を出し続けること自体が難しいので、だいたいの目安と考えていい。仮に1日2時間ほど鳴らすのが精一杯という人なら、単純計算で42日鳴らしていれば、同等の時間鳴らしたことになるので、エージング完了と見なしていいだろう。1~3ヵ月くらい定期的に使っていればそれで完了というくらいアバウトに考えてOKだ。今回は検証というわけでないが、実際に1日12時間鳴らし1週間ほど続けるマニュアル通りの方法を試している。

 今度は鳴らす音。これもいろいろと考え方がある。基本的には低音から高音までなるべく幅広い周波数の信号を入力すること。特にスピーカーは周波数によって音が出るユニットが違うので、極端な話だと高音ばかり鳴らしていても低音を鳴らすウーファーはほとんど動かない。これも、普通に自分の好きな音楽を鳴らしていれば、音楽で必要な帯域はほぼカバーしているので、あまり気にする必要はない。

 でも、できることならきちんと20Hz~20kHz(人間の耳の可聴帯域)の信号を均等に入れてあげたいと考える人もいるだろう。そういう人はホワイトノイズやピンクノイズを入力する。オーディオチェック用のCDなどには、エージング用のノイズ信号も収録されているのでそれをリピート再生する。

 このあたりはまさしく好みで行えばいい。自分の愛用するスピーカーでノイズなど鳴らしたくない人もいるし、自分の好きな音楽だけ鳴らしてクラシックなら最高というスピーカーに育てるのもアリだ。筆者は折衷案。エージング用のノイズ信号を初日の12時間だけ鳴らす。その後は、クラシックからジャズ、ポップスとあらゆるジャンルの曲をプレイリストに登録して鳴らし続けた。

 基本的に音楽ならなんでも聴くタイプなので、好きな曲を集めるとジャンル的もバラバラになるが、意識したのはクラシックの室内楽など小音量主体の曲、ガンガンに大音量で鳴るロックという感じで音量感が異なる曲を混ぜたこと。同じように、アコースティックな楽器を滑らかにならすような曲調のものと、ビートの聴いたダンスミュージックなど、曲調やリズム感の違う曲も混ぜた。もちろん、ボーカル曲はもっとも多めだし、男性、女性と歌い手の声質も含めて多彩に用意した。

 こういう工夫も気分的なものなので、どれが正解ということもないが、バラエティー豊かな選曲にした方が、バランスの良い音になるかも。というくらいで根拠はない。だから、エージング用のあれこれ選曲するのが面倒ならば、ラジオ放送を鳴らし続けるのも良い。ロック専用放送局ではなく、それこそニュースなどもあるNHK-FMのような放送局を鳴らしておけば、選曲も不要で面動がない。

エージング中の試聴室内。毎朝起きてすぐに音を出し、日中はひたすら鳴らし続けた。エージングの終盤にはこのままの状態で映画も見た。

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