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「“データの解放”を通じて顧客企業のDXを支援」日本法人 古舘社長がビジョンを説明

ヴィーム、「Veeam Backup for AWS v2」など最新版製品を披露

2020年06月22日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ヴィーム・ソフトウェアは2020年6月19日、Amazon Web Services(AWS)環境向けのバックアップソフトウェア最新版「Veeam Backup for AWS v2」や、リストアやDRの自動化ソリューション最新版「Veeam Availability Orchestrator v3」、旗艦スイート製品の次期バージョンとして開発中の「Veeam Availability Suite v11」などを発表した。

 これらは6月18日からオンライン開催中の年次イベント「VeeamON 2020」において発表されたもの。18日に国内で開催された記者説明会には日本法人社長の古舘正清氏らが出席し、各製品の新発表詳細のほか、デジタルトランスフォーメーション(DX)への道のりである“DXジャーニー”をヴィームがどう支援できるかというビジョンについて説明した。

データ保護ソリューションの立場から、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)ジャーニーを支援していくビジョンを紹介した

ヴィーム・ソフトウェア日本法人 執行役員社長の古舘正清氏、同社 ソリューション・アーキテクトの高橋正裕氏

AWS向け製品の新版、別リージョンへのスナップショット保存やAPI公開も

 VeeamON 2020で発表されたのは「Veeam Backup for AWS v2」「Veeam Availability Orchestrator v3」のリリースと、開発中の「Veeam Backup for Microsoft Office 365 v5」および「Veeam Availability Suite v11」の製品ロードマップ(搭載予定新機能など)だ。記者説明会では、同社 ソリューション・アーキテクトの高橋正裕氏が新機能など概要を紹介した。

「Veeam Backup for AWS v2」をリリース。従来どおりAWS Marketplace経由で簡単に導入できる

 Veeam Backup for AWS v2は、2019年末から提供してきた「Amazon EC2」向けバックアップ/リカバリ製品の新バージョンとなる。同製品はGUIを通じて簡単にバックアップ設定ができ、Veeamのポータブルなイメージ形式(vbkファイル)を通じてワークロードを他のクラウドやオンプレミスの環境にも移動できる点が特徴。「AWS Marketplace」で提供されており、無償版(10VMまで)と有償版、BYOL(ライセンス持ち込み)版がある。

 新機能としてはまず、「Amazon EBS」のスナップショットをリージョンやアカウントを超えてレプリケーション/リカバリできる「AWSディザスタリカバリ」が追加された。スナップショットの保存先としてダイレクトに別リージョンを指定できるため、1つのリージョンが丸ごとダウンするような大規模障害の発生にも備えることができる。また、ブロックボリュームの増分を認識してバックアップウィンドウを短縮するCBT(変更ブロックトラッキング)APIサポート、アプリケーションを認識することでEC2インスタンスやEBSボリュームを切断することなく整合性のとれたバックアップを実行する機能なども追加された。

 もうひとつ、ハイブリッドクラウド環境における管理の統合や自動化を図るために、パブリックRESTful APIを提供開始している。Veeamの管理コンソールと併用することも可能であり、「オンプレミスは従来の手法で、クラウド環境はクラウドならではの自動化で」データ保護を実現できると、高橋氏は説明する。

 Veeam Availability Orchestrator v3(VAO)は、システムのリストアやフェイルオーバー、DRにおける一連の手順を自動化するソリューション。1カ月以内に一般提供開始するとしている。

 新しいバージョンでは、遠隔地にデータをレプリケーションする「NetApp ONTAP」のスナップショット機能(NetApp SnapMirror)のオーケストレーションにも対応し、DRサイトへのフェイルオーバーを容易にしている。「単にSnapMirrorでVMを遠隔バックアップしているからいいやではなく、(バックアップの保存先で)VAOがちゃんとIPアドレスを付けたり、ネットワークの設定を変更したりしてくれる」(高橋氏)。

 VAOではもうひとつ、DRのコストを引き下げる「DRパック」の提供も発表されている。発表によると「オーケストレーションと自動化の機能を、市場で聞いたことがないような価格で提供する」ことで、これまで最重要ワークロードのみだったDRの適用範囲を「すべてのワークロード」へと拡大するという。ただし現時点では価格の詳細は明らかにしていない。

次期スイートのインスタントリカバリはHyper-V、Oracle DBなどにも対応へ

 旗艦スイート製品の最新版であるVeeam Availability Suite v11(現在開発中、提供時期は未発表)については、「ニアCDP(継続的データ保護)」「オブジェクトストレージ」「インスタントリカバリ」の3点に関する機能強化点(予定)を紹介した。

現在開発中の「Veeam Availability Suite v11」について、大きく3つの新機能を紹介した

 まず、Veeam製品としては初めてVMware仮想マシンのCDPに対応する。CDPは一定間隔で実行するバックアップではなく、リアルタイムに常時バックアップを行う(変更部分をその都度記録していく)仕組み。発表によれば、このCDPの利用によってRPO(目標復旧時点)を“数秒前”まで短縮できるようになる。そのほか高橋氏は、差分のみのデータを転送するため比較的帯域幅の狭いネットワークでもレプリケーションができる点も特徴だと述べた。なお転送データ量を計算(予測)するためのカリキュレーター機能も内蔵されるという。

 オブジェクトストレージへの対応では、新たに「Google Cloud Storage」をサポートする。また、長期アーカイブ保存に適するクラウドストレージサービス「AWS Glacier/Glacier Deep Archive」や「Microsoft Azure Blob Storage Archive Tier」をサポートし、バックアップデータの長期保持コストを削減可能にする。

 また、バックアップイメージからダイレクトに仮想マシンを立ち上げるインスタントリカバリ機能で、新たにMicrosoft Hyper-V仮想マシンにも対応する。さらに、NAS全体の障害に対応するNASのインスタントリカバリ(インスタントパブリッシュ)、「Microsoft SQL Server」および「Oracle Database」のインスタントリカバリ(VMではなくデータベース単体のリカバリ)機能も追加される予定だ。

 「Microsoft Office 365(Microsoft 365)」上にあるメール/ファイルをバックアップする製品の最新版、Veeam Backup for Microsoft Office 365 v5について高橋氏は、現在利用が急増している「Microsoft Teams」のデータバックアップが強化される点を取り上げた。従来はTeams上にアップロードされた添付ファイル類のみのサポートだったが、v5からはチャンネル、設定、タブといったデータもバックアップ対象になる。またTeams専用に設計された簡単なリカバリGUIも提供するという。なお、同サービスは2020年第3四半期の一般提供開始予定。

DXジャーニーではレガシーなシステムの“レガシーなバックアップ”が課題

 ヴィーム日本法人社長の古舘氏は、顧客企業がこれからたどる“DXジャーニー”と、そこにおいてヴィームが果たすべき役割についてのビジョンを語った。

 まず、先日同社が発表した「2020 データプロテクションレポート」から、DX推進の阻害要因についての調査結果を紹介した。このレポートは、企業のビジネスリーダーやIT意思決定者(ITDM)1550人を対象に実施したアンケート調査をまとめたもの。

 同調査によると、DXの阻害要因として多く挙げられたのは「ITスタッフのスキルやDXに対する専門知識の不足」(44%)、「レガシーなシステム/技術への依存」(40%)、「予算不足」(30%)などとなっている。

企業が考えるDXの阻害要因(「2020 データプロテクションレポート」調査結果より)

 このうち古舘氏は、バックアップの観点から「レガシーシステム」の課題を指摘する。レガシーなシステムは、同時に構築されたレガシーなバックアップの仕組みでデータ保護がなされているケースが多く、システムそのものと同様にバックアップも“サイロ化”しているケースが多い。

 このレガシーなバックアップの仕組みを刷新しすることで、レガシーシステムにロックインされ断片化しているデータ保護を標準化/一元化し、データのポータビリティも高めて“解放(リリース)”し、企業内に眠る有用なデータを有効活用できる状態にしていくというのがヴィームの大きなビジョンだ。

 具体的には、まずあらゆるシステムにおいて標準化された仕組みでバックアップ/リストアを確実にできるようにし(保護)、次に状況の可視化やオペレーションの自動化などを含む仕組みを構築する(管理)という過程を経ることで、最終的にデータを“解放”できるDXの段階に到達できると説明する。

DXジャーニーを阻害する各種課題とそれを克服する方向性

 古舘氏はまとめとして、ヴィームが提供できるのは、レガシーなバックアップから進化するための「バックアップモダナイゼーション」、柔軟なデータ移行手段とポータビリティによってクラウド移行を容易にする「ハイブリッドクラウドの加速化」、自動化された「データセキュリティとコンプライアンス」だと述べ、“データの力”を解放して顧客企業のDXを支援していくとした。

 「レガシーなバックアップシステムの問題点にまだ気づいていない企業が多いのも事実。ただ、企業でクラウド活用が進み、クラウド上にも重要なシステム/データが増えてきたなかで、『バックアップの仕組み全体を考え直さないといけない』と気づく顧客も出てきている。それを促すために、ヴィームではアセスメントのサービスを提供しており、製品を紹介する前に『まずは現状の棚卸しをしましょう』と提案している」(古舘氏)

ヴィームが提供する価値。最終的には“データの力を解放”する狙い

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