「“ニューノーマル”見据えITフル活用の改革が始まった」Google Cloud 日本代表 平手氏
「Google Cloud Day」開幕、AIやサーバーレスなど最新サービスと事例紹介
2020年06月10日 07時00分更新
Google Cloud(グーグル・クラウド・ジャパン)は2020年6月9日~11日まで、日本国内向けのデジタルカンファレンス「Google Cloud Day: Digital」を開催している。同カンファレンスは、開発者やビジネスリーダー、IT意思決定者などを対象に、「アプリケーション開発」や「機械学習」「セキュリティ」など、7つのテーマによるセッションやハンズオンを用意。実践型演習を含むさまざまなコンテンツをとおして、Google Cloudの最新ソリューション/サービスに関する情報を提供するもの。
開催初日、6月9日の基調講演ではまず、Google Cloud 日本代表の平手智行氏が登場。新型コロナウイルス感染拡大がもたらしている影響について、この数カ月間、多くの顧客企業に話を聞いてきたとしたうえで、これまでと現在、そしてこれからの企業の動きを次のようにまとめる。
「企業は短期、中期、長期での対応を求めている。第1段階では、従業員の健康を守るため、あるいは事業継続を確保するための対応が求められた。第2段階になり“新たな働き方”“新たな生活様式”へと移行したが、一方で経済的なインパクトも顕著になり、“リカバリーフェーズ”として、ビジネス全体のコスト構造を見直す動きが出てきた。そして第3段階は、新型コロナウイルスによってもたらされた変化を理解し、それを受け入れ、新たなビジネスを開拓していくものになる。初期の課題に対応し、ビジネスの回復を図りながら“ニューノーマル”を見据えた取り組みが始まっているのが現状であり、ITをフル活用し、働く人たちに対する本質的な改革が始まっている」(平手氏)
“ゼロトラスト”の在宅勤務環境でもVPNなしでアクセス、「BeyondCorp」など紹介
平手氏は、こうしたいずれの段階においても「Google Cloudはビジネス成長を支え、顧客に寄り添うパートナーとして最適なソリューションを提供する」と述べたうえで、Google Cloudのさまざまなサービス、ソリューション群を紹介していった。
まず“第1段階”に対応するものとして紹介したのが、ビデオ会議サービス「Google Meet」である。最大250人が双方向で会議に参加でき、会議録画や大規模なライブストリーミングも実現する。エンタープライズ向けサービスとしてセキュリティを重視していることや、Googleが誇る堅牢なグローバルインフラを使っていることも強調した。
なおGoogle Meetは現在、Googleアカウントを持つすべてのユーザーに対して無償提供と機能制限緩和を実施している(9月末まで)。「Google Meetを含むG Suiteは全世界で600万社が利用しており、そのユーザーは在宅勤務のオフィスワーカーだけでなく、遠隔医療、小売店や飲食店、政府機関、教育機関などユーザーは多岐に渡る」(平手氏)。
また、テレワークや在宅勤務といった“ゼロトラストネットワーク(信頼できないネットワーク)”環境下でも、VPNなしで業務Webアプリにセキュアなリモートアクセスを可能にする「BeyondCorp」も紹介した。4月に発表されたBeyondCorpは、Googleが約10年間社内運用してきたサービスがベースになっており、ユーザーIDだけでなく接続デバイスやIPアドレス(アクセス場所)といったコンテキストも評価して認証や承認を行うという。平手氏は「既存のVPNも継続利用しながら、社内システムに安全にアクセスできるもうひとつの選択肢として利用できる」と述べた。
柔軟さや俊敏さで事業継続を支えるサーバーレスやコンテナプラットフォーム
さらに、事業継続に求められるアプリケーションの迅速性や弾力性という観点からGoogle Cloudのサーバーレスソリューションを、またデジタルトランスフォーメーション(DX)を促進するアプリケーションのモダナイズを実現するコンテナベースのマルチクラウドプラットフォーム「Google Anthos」が紹介された。
Google Cloud カスタマー エンジニア 技術部長の佐藤聖規氏は、「たとえば、サーバーレスソリューションを活用することで、新型コロナウイルス対策特設サイトを迅速に開設し、アクセス増加によるトラフィックの変動にも柔軟に対応できる」と説明する。
「(Google Cloudでは)ハイブリッド/マルチクラウドを前提として設計しているため、既存の仕組みと組み合わせた利用も可能。フルマネージドサーバレスプラットフォームの『Cloud Run』は、数秒でデプロイし、使用した分だけの支払いで済み、高いポータビリティを実現できる。弾力性のあるアプリケーションを構築できる」(佐藤聖規氏)
ここでは、顔写真を基に西洋画風ポートレートを機械学習モデルで生成する「AI画伯」の事例を紹介した。このサービスは個人開発者の「さと」さんが開発したものだが、SNSで大きな話題を呼び、海外からのアクセスも含め公開から10日間で一気に日間100万ユーザーにまで利用が拡大したという。
「サーバーレスソリューション(Cloud Run)の自動スケーリング機能によってコンテナインスタンスが数秒で起動し、急激な負荷上昇時には数十~数百のコンテナインスタンスが瞬時に立ち上がる。しかも、システムアーキテクチャーを変える必要が一切なかった。この事例からもわかるように、多くの企業が、アイデアを実現することにフォーカスできるようになる」(佐藤聖規氏)
また昨年に一般提供を開始したAnthosについては、多くのアップデートを実施しており、日本でも多くのユーザーが利用していると紹介。オンプレミス版の「Anthos GE On-Prem」に続いて、AWS上で稼働する「Anthos GKE AWS」も提供開始したことで、Google Cloudだけでなくオンプレミス/マルチクラウドを統合できるようになったと説明した。
ハイブリッドクラウドソリューションとしては、5月に「Google Cloud VMware Engine」の一般提供開始予定も発表している。これによって、VMware vSphere上にある既存のワークロードを最小限の変更だけでGoogle Cloudに移行し、実行できる。
同ソリューションについては、ゲスト出演したヴイエムウェア North Asia担当CTOの進藤資訓氏も説明を行った。フルスタックの「VMware Cloud Foundation(VCF)」をGoogle Cloud環境内に構築し、Google Cloudが運用管理するマネージドサービスとして提供するもので、「VMware Cloud VERIFIED」認定も受けている。2020年第2四半期中に米国の2リージョンで提供を開始し、2020年下半期には日本を含む8リージョンでも提供開始する予定だ。
「(Google Cloud VMware Engineは)オンプレミスとハブリッククラウドを一貫したオペレーションで実現し、高い互換性を提供するとともに、Google Cloudの各種サービスやアプリケーションとも容易に連携できる。今回の提携に対しては、Google Cloudが持つ『BigQuery』 や『Cloud AI』『Cloud AutoML』などの豊富な製品を活用できるなど、大きな期待がある。オンプレミスのアプリケーションをクラウドに移行し、モダナイズをしたいという企業にとっては最適な環境になる」(ヴイエムウェア 進藤氏)