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3万人規模のコミュニケーション基盤を目指し、ビジネスマネージャー奮闘する

ベルシステム24がSlackで実現した「冷めないコミュニケーション」とは?

2020年04月27日 10時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

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「あとでいいか…」を今聞けた パイロットプロジェクトで得たユーザーの声

大谷:プロジェクトはどのようにスタートしたのでしょうか?

川崎:2018年の12月頃から社内メンバーをつのり、200人くらいでパイロットプロジェクトを始め、好評を博しました。とはいえ、最初は純粋にツールとしての使い勝手を知りたかったので、そういうのに慣れたメンバーを選んだというのも大きいです。

大谷:実際にどんな反応だったのでしょうか?

川崎:アンケートをとってみたのですが、たとえばコミュニケーション量に関しては増えたと答えた人が多く、特に他拠点のメンバーや上司とのなにげないやりとりが増えたという答えが返ってきました。

僕が気に入ったのは、「『あとでいいかな…』と思っていたことをいま聞けた」というコメントですね。「あとでいいか…」というのは忘れられることも多いので、今までまさにカットされていたコミュニケーションだと思うんです。

大谷:まさに先ほど話していた「温度」ですね。

川崎:実際、フリーコメントで分析すると、「チャンネル」「拠点」「メンバー」「気軽」などが出てきます。拠点が離れると、まさにコミュニケーションが冷めるのですが、それをまとめる力がチャンネルにはあるという分析結果です。細切れの時間で働いているメンバーもいるし、朝来る人も、夕方来る人もいるオフィスで、Slackで共通の話題を持てるからこそ、コミュニケーションも円滑になります。

あと、「会社から大事にされていると感じる」というES(従業員満足)も高くなるという分析結果も出ました。会社がどれくらいバックアップしてくれているか、従業員はこういうツールで評価しているんです。これも発見でした。

その他、「メールのやりとりが減った」「組織をまたいで横串しでコミュニケーションできる」「クライアントとのやりとりもよい影響を得られそう」などの評価がありますね。

大谷:けっこう細かく分析しているんですね。

川崎:はい。フリーコメントのワードを見ると、「速い」「オープン」「気づきが増える」といったところが上位に来ます。

気づきが増えるというのは、確かにそうです。ほかのチームで悩んでいることに、別のチームのメンバー横からすっと入ってくることがSlackだとできます。たとえば、リアルオフィスであれば、困りごとが会話で聞こえたら、「それ、オレ知ってるよ」と助け船だせるじゃないですか。でも、Slackの場合、場所が離れていても、時間がずれていても、この助け船が起こり、部署をまたいでいても起こりえるんです。こうしてノウハウが伝播され、気づきが増えるんです。

情報統制の単位で作られたワークスペースと共有チャンネルの役割

大谷:今の「気づきが増える」という点にも関係するのですが、オープンにやりとりできるSlackのパブリックチャンネルのスタンスについても教えてください。従業員や経営者に抵抗感はなかったのか? 日本の企業にとっては、わりと重要だと思うので。

川崎:パブリックチャンネルは、すごく微妙な問題です。というのも、当社にとって情報とはけっこう「秘すべきもの」という意識が高いからです。だから、メールは誤爆があり得ますが、Slackの場合、ワークグループという単位でやりとりが閉じるのでよりセキュアである説明しました。そうしないと、秘すべきモードが発動してしまうので。

その上で、オープンなチャンネルで会話ができて、途中から会話に参加してもらって、アドバイスがもらえるといういい体験をしてもらうことにしました。そうするとオープンである意味やメリットを理解してもらえるようになります。

大谷:Slackにすると、なんだか隣の部署の人が助けてくれたぞみたいな体験ですね。先日、取材したナビタイムジャパンさんの事例でも、社内のプロフェッショナルが発掘できるみたいな話が出てきました。

川崎:それは確実にありますね。特定の技術にとても詳しいとか、離れた場所で同じような分析をしている人などがあぶり出せるんです。ユーザートレンドの分析手法自体はけっこう共通のメソッドなのですが、これらが意外と共有されづらくて。各チームや部署で「秘伝のたれ」みたいなのがあるのですが、部署単位の「秘伝」を、会社単位での「秘伝」に拡げたい。そんなところをSlackで共有できるといいなと思いますね。

大谷:Slackの運用やルールについてもお聞きしたいと思います。これが取材していると、自由なところ、厳しいところなど、けっこうばらばらで興味深かったりします。

川崎:まず引き継ぎなどの工数をなるべく少なくするため、チャンネルの命名ルールは作っています。部署を表すdivやプロジェクトのprjt、ファンクションのfnなど、チャンネルの接頭辞は揃えています。

大谷:では、ユーザーはチャンネル名を見れば内容やルールもわかるんですね。

川崎:そうですね。重要なのは異なるワークスペースをまたぐ共有チャンネルですか。たとえば、クライアント企業ごとにワークスペースが分かれているけど、業界内の話のみディスカッションする場合などに使います。

たとえば、札幌は約4000席で、部署もかなり数が多い。でも、部署ごとに縦割りになってしまうと、エリアをまとめる情報網がなくなってしまいます。だから、横串で共有できる共有チャンネルを活用しています。

大谷:では、ワークスペースは部署単位なんですか?

川崎:クライアント企業単位や本部単位にしています。情報統制上必要な単位でワークスペースを作るという考え方になります。だから、横串を通せる共有チャンネルがないと、組織のたこつぼがいっぱいできてしまいます。この点をスマートにクリアできるのは、現行ではSlackだけと考えています。

そのほか特にルールらしいものはないのですが、一点メンションに役職やさんを付けるのは明確に禁止しました。

大谷:禁止したんですね。それはいいですね!

Slackだったら部署や社員の表彰が毎日できる

大谷:200名規模、しかもある程度ITを使える有志で始めたプロジェクトですが、次の展開はどうなったんでしょうか? 

川崎:次は1500名規模にまで拡大したのですが、これくらいになると「どう使っていいかわからない。だから使わない」という人も現れます。なので、丁寧に利用の浸透を図りました。

1つ目の方法は「#Randam」というチャンネルで気軽な投稿を増やしました。しかもrandamだとに日本人にはわけがわからないので、「#ざつだん」というチャンネル名に変えて、今日食べたランチの写真を共有するくらいから始めました。

これを続けていくことによって、「オープンなチャンネルにこんなこと投稿していいんでしょうか?」と考える人も、「こんな気軽にアップしていいんだ!」と感じるようになりました。今では、たとえば実家の農家の人が収穫できた作物を見て、「うちの実家よりも大きいね」とコメント入れて、マニアックな農家トークが繰り広げられたりしています(笑)。

気軽なコミュニケーションを社内での利用の様子(提供:ベルシステム24)

大谷:心理的安全の確保ですね。

川崎:はい。社内メソッドとして30分のミニ講座を開いている部隊がいるんです。この部隊に「初めてのSlack」みたいな講座をやってもらいました。

大谷:そもそもミニ講座をやる部隊というのが面白いですね。

川崎:30分というのがミソで、1時間は難しいけど、30分くらいならやりくりできるので、会場に足を運んだり、Webから参加したりしてくれます。ログインの仕方からやりました。

あとはコミュニケーションリーダーの存在も大きいです。いわゆるアクティブに発言するとか、誰かと誰かをつなげるとか、そういった人たちの活動はオフラインでも目立つのですが、Slackではさらに目立ちます。こうした方々を高く評価されるので、経営者からも直接、コミュニケーションリーダーたちに、Slackを推進してもらう!というメッセージを出してもらいました。これによって、オフラインでの活動をオンラインでも活発に行えるようになりました。

大谷:1500人規模までうまくスケールした感じですか?

川崎:かなり高い純度でスケールしたと思います。Slackさんからも、パブリックチャンネルの利用率は高いと言ってもらっていて、オープンなやりとりが実現していると思います。なにしろ初めて会った感じのしない人が増えましたね(笑)。

個人的には、表彰制度みたいなのを毎日やりたいんです。年に一度、よかった部署や社員を表彰する制度ってどの会社でもあると思うのですが、どこかの会場に全社員を集めてやるのは難しいですよね。でも、Slackだったら毎日できます。「褒め文化」を醸成できると思うし、ベストプラクティスを組織として育てることにもつながります。

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