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“最高速度での企業進化”目指し、オフィスでも倉庫でもSlackを使い倒して効率化と情報のオープン化図る

「メール文化」だったアスクル、Slack導入で得た幅広い成果を語る

2020年07月16日 08時00分更新

文● 指田昌夫 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 Slack Japanが2020年6月24日に開催したオンラインカンファレンス「Slack Workstyle Innovation Day Online」では、アスクル CTOの内山陽介氏が、同社におけるSlackの活用方法や具体的な成果を紹介した。オフィスだけでなく物流倉庫でもSlackを活用しており、全国の倉庫合計で“年間およそ10万時間”の作業時間削減が見込まれる活用法もあるという。

アスクル CTO(最高技術責任者)の内山陽介氏。「アスクルのICT利活用促進 ―Slackによる生産性向上と情報のオープン化について」と題してビデオ講演を行った

目指すのは「最高速度での進化」、検索性や連携アプリを評価しSlackを採用

 内山氏はヤフーで「ヤフーショッピング」システム開発を担当し、その後アスクルに入社。アスクルでは個人向けサービス「LOHACO(ロハコ)」の開発責任者を務め、ロジスティクスやビッグデータ分析の責任者も担当した。現在はCTOとして、情報システムや組織の最適化、アスクル全体のデジタル変革をリードしている。

 アスクルにおけるCTOの役割について、内山氏は「当社の理念である『お客様のために進化する』を最高速度で実行する企業に変える責任を負っている」と説明する。その目標に向けて、現在は「ICT利活用の促進」と「デジタル変革(DX)の加速」という2つの施策を展開しているという。今回の講演では、特に1つめのICT利活用促進のための施策について説明した。

アスクルにおけるCTOの役割、そして「最高速度で進化する」うえでITに求められる要件

 内山氏があらゆるIT施策に対して重視するのは「スピード」だという。

 「アスクルが最高速度で進化するためには、全従業員が創造的な仕事に注力しなければいけない。そのために必要なのは、ほしい情報にすぐにアクセスできる環境、業務効率化による社員の自由な時間を増やすこと、そして仮説検証を高速に繰り返す仕組みだ」

 そして、これらを実現するコミュニケーションツールとして導入したのがSlackだったという。Slackを選んだ理由について内山氏は、「検索性が高いこと」「連携できるアプリが豊富なこと」「自社で簡単にカスタムアプリが開発できること」の3つを挙げた。

 検索性の高さは、スタッフがほしい情報に素早くアクセスできるようにするために「必須だった」。特にSlackでは、社員間のコミュニケーションがそのまま“ナレッジ”としてどんどん蓄積し、それを検索できる点が良いと評価する。アプリ連携については、マイクロソフト「Office 365」などの定番ビジネスアプリとすぐに連携でき、「Slack内で業務が完結する」ことが望めるという。そしてカスタムアプリについては、後述するように現場の業務改善に大いに役立っていると説明する。

アスクルがSlackを採用した理由3つ

無駄の多いメール文化からの変革、“コミュニケーションのオープン化”効果も

 ほかの多くの企業と同じように、アスクルもかつては、社内コミュニケーションは電子メールが中心という「メール文化」の会社だった。「そこにSlackで『チャットの文化』を持ち込んで、社内コミュニケーションのスタイルを変革した」と内山氏は語る。

 そもそも「メールはコミュニケーションコストが高い」と内山氏は説明する。メールを送る際には、要件だけでなく件名や宛先(To、Cc)の記入など形式的な作業にも時間を取られてしまう。受け取った側も、メールボックスにはあらゆる案件が混在しており、件名だけ見ても内容がわからないので1つずつ開かなければならない。Slackならば、送信側は要件だけ書けばよく、あらかじめチャンネルごとにテーマが決まっているので、読む側もすぐに内容を把握できる。

 「ある部門では、Slackの導入によって月間300時間の(作業時間の)削減に成功しており、導入部門がどんどん増えている」

メールからの移行によりコミュニケーションコストの削減が実現した

 さらに「コミュニケーションのオープン化」による効果も大きいという。メールの場合、手間と時間がかかる割には情報が行き届かないことも多かった。「メールで情報を共有したつもりでも、その宛先に入っていなければ、どこかで必ず『聞いてないよ!』という人が現れる」。それに対してSlackでは、チャンネル参加者全員が同じ情報を閲覧することができ、さらには過去の情報も検索できる。

 「昨年、社内で大規模な『販促対策チャンネル』というものを作ったが、プロジェクトに途中から参加した人も、過去の投稿やコメントを読むことですぐに追いつき、同じ情報に基づいて販促活動を進めることができた」

 もうひとつ、内山氏は「Slackには社内の“専門家”を知る効果もある」と述べた。Slack上でのコメントを追っていくと、あるテーマについて情報を持っている、その分野に詳しい人がおのずからわかってくるといいう。チャットなので個別に質問もしやすく、「社内のナレッジ共有だけでなく、その発信源を知ることにも役立つ」と説明する。

社内コミュニケーションを「オープン化」する効果もあった

 幅広い業務アプリとの連携機能も業務効率化に役立っているという。たとえば開発部門ではGitHubと連携させ、ステータス変更やテスト失敗時の通知がSlackに流れるようにしている。そのほか、クラウド基盤(Microsoft Azure、Google Cloud Platform)や「SharePoint」、採用管理システム、Twitterなどとも連携し、Slackに情報が集約される仕組みを作っている。「LOHACOに関するツイートをSlackに流すことで、『商品価格が変』といったコメントを見つけ、早期の障害発見につながったケースもある」。

 また、独自開発のSlackアプリも活躍している。たとえば「くれBot」というアプリは、質問(キーワード)を投げると該当する作業の手順書(URL)を返してくれるBotだ。また、専門用語がわからない場合に質問できる「辞書くん」、Windows/Macクライアント間で異なるファイルパスを相互変換してくれる「マーメイドマン」といったBotも活用されている。

さまざまな連携アプリ、カスタムアプリもSlackを通じて利用が可能

倉庫の機器故障予知システムとSlackを連携、“年間10万時間”削減も見込む

 アスクルの中枢ともいえる物流倉庫の業務効率化にも、Slackを活用している。倉庫内を高速で移動する荷物は、箱に貼られたバーコードによって管理されているが、それらを読み取るバーコードリーダーが故障すると、倉庫の稼働は大きく影響を受ける。これまでは作業員が定期的にリーダーの設置場所に出向いて点検を行っていたが、巨大な倉庫内に数百個点在するリーダー機器のチェックは大変な作業だった。

 そこでアスクルでは、AIを用いたバーコードリーダーの故障予知システムを開発し、故障の兆候が検知されるとSlackで作業員に伝える仕組みを作った。「倉庫は非常に広いので、作業員の見回りに膨大な時間がかかっていた。このシステムを導入して、異常が生じている場所に直行する形に変えたことで、業務が大幅に効率化した」。

バーコード読み取り機器の異常をSlack経由で通知し、巡回点検をなくしたことで大幅な作業時間の効率化が見込まれる

 まずはトライアルとして同社関西センター(倉庫)の20カ所に導入し、1日1時間、年間で365時間ぶんの作業時間削減を実現できた。これを関西センター内の全600カ所に適用すると年間1万950時間、さらに全国9カ所の倉庫に拡大すれば年間で9万8550時間もの作業時間削減が見込めることになる。

 アスクルでは今後さらに、勤怠管理や承認業務といった業務アプリケーションとSlackの連携を強化していく計画だ。現状では、社内の管理ツールや承認ツールはPCでしか使えないが、Slackをそのインタフェースとして組み合わせることでスマートフォンからでも操作できるようになる。この取り組みを通じて、意思決定のスピードアップを目指すと語った。

 加えて、社内でのSlack利用をさらに促進することで、コミュニケーションをよりオープンなものにし、クローズドな1対1のやり取りを減らしたいとしている。「多くの人が参加するコミュニケーションを増やして、新たな社内コラボレーションを生み出していきたい。それによってイノベーションがさらに加速すると考えている」と、内山氏は期待を述べた。

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