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3万人規模のコミュニケーション基盤を目指し、ビジネスマネージャー奮闘する

ベルシステム24がSlackで実現した「冷めないコミュニケーション」とは?

2020年04月27日 10時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

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 企業の問い合わせ窓口としてコンタクトセンターを運営するベルシステム24は、社内のコミュニケーションにSlackを導入している。現場同士、クライアントとのコミュニケーションを大切にする同社がなぜSlackを導入したのか? ビジネスマネージャーの立場でSlack導入のプロジェクトを推進する川崎 佑治氏に話を聞いた。(以下、敬称略 インタビュアー 大谷イビサ)

ベルシステム24 CS第2事業本部 第3事業部 第4G グループマネージャー 兼 ベルシステム24 DX推進担当 川崎 佑治氏

北海道と沖縄で同じチームがあり得る だからスピードが重要

大谷:まずは会社紹介と川崎さんの役割についてご説明ください。

川崎:ベルシステム24はクライアント企業の委託を受けてコンタクトセンターを運営しています。お客さまはいろいろな企業に問い合わせすると思いますが、クライアント会社からの受託を受け、その問い合わせを受けるのが私たちです。場所や人だけではなく、ノウハウも含めて提供しています。ですから、どちらかというと裏方の仕事ですね。

その中での私の立場ですが、テック系ではなくて、ビジネス部門の1人のマネージャーになります。とはいえ、Slackの導入は一部門だけではなく、全社で進めた方がよいという判断になり、ビジネス部門で導入担当を兼務しているイメージです。

大谷:ベルシステム24と言えば、コンタクトセンター事業者として、かなり老舗ですよね。でも、今は問い合わせも電話だけではないですよね。

川崎:とにかく企業側のニーズが多様化しています。確かに昔は電話だけでしたが、最近はメール、チャットなどツールも幅広いですし、とにかく数多くさばきたいのか、とろけるような最上級の対応が必要なのか、企業によってポリシーも異なります。

たとえば、キャンペーンや新商品の販促であれば、そこにまつわるコミュニケーションをどのように設計するのかも重要です。こうしたシナリオに加え、人材の教育や配置まで手がけています。マニュアルも現場のニーズに応じて、われわれが作成していたりします。しかし、エンドユーザーの視点が反映された貴重な現場の声も、場所が離れたり組織が分かれると、どうしても伝言ゲームになってしまうことがあります。

大谷:なるほど。お客さまに一番適した対応ができるように、なるべくリアルタイムに情報を収集し、組織に行き渡らせていくのが重要なんですね。

川崎:情報が伝わるスピードはどのクライアント企業も重視しますね。最前線で集めた声が経営層に伝わるのが遅かったり、逆に経営者の意思が現場まで浸透するのも時間がかかることも多いので。アウトソーサーとして、お客様の看板やブランドを背負って事業をしている立場上、ここのスピードをいかに上げていくかが、われわれにとって勝負になるんです。

大谷:お客さまからすると、問い合わせた先はあくまでクライアント企業ですからね。ある意味「中の人になる」ということですよね。

川崎:そうなんです。ただ、複雑なのは、BCP対策などもあって、同じ窓口でも北海道で受けたり、沖縄で受けたりするということです。つまり、北海道と沖縄のメンバーが同じチームということが当社ではありえます。問い合わせをかけるお客さまからすると、オペレーターがどこにいるかは関係ないので、離れている人同士でもやりとりできなければなりません。

でも、これって「言うは易し」で、実現するのは難しいんです。お客さまとのやりとり、クライアント企業とのやりとり、そして当社内でのやりとり。これらのコミュニケーションもきちんと設計するというのが、コミュニケーションカンパニーとしてのわれわれの大きな課題でした。

ツールのたらい回しがコミュニケーションの温度を下げてしまう

大谷:そんな課題に対して、川崎さんはどんな立場でなにをやったんでしょうか?

川崎:私は大手IT企業を担当しているのですが、昨年沖縄から札幌に転勤しまして。今は札幌に住んでいて、東京でこの取材を受け、このあと沖縄に出張します(笑)。ある程度の規模の企業になると、複数のロケーションで同じ業務を回すので、こういうことが起こりえます。

クライアントの担当者もそれぞれの拠点にあわせた情報を発信するので、うまくつなげると、クライアント方針をより立体的に把握できるようになります。そうすると、よりよい対応ができるようになる、と思っています。ですから、沖縄から札幌に移ったとき、以前と同じようにやりとりできるように、いろいろなツールを試したのですけど、なんだかハードルが高くてうまくいかなかったんです。

大谷:うまくいかなかったのは、どういう理由があると思いますか?

川崎:この表現が正しいかわからないのですが、コミュニケーションって、すぐに温度が冷める特質を持ったものだと思うんです。お客さま対応も1回たらい回しがあるだけで、一気に温度が下がります。せっかくいいことを思いついても、メールで書いたり、Excelにコピペして、ツールでたらい回ししているうちに、温度が下がってしまい、結果として続かなかったんじゃないかと思うんです。

「コミュニケーションって、すぐに温度が冷める特質を持ったものだと思うんです」(川崎氏)

大谷:つまり、ツールをワンストップで使えること、そしてリアルタイムなことが重要だったんですね。

川崎:はい。究極としてわれわれが求めていたのは、オフラインで、同じ場にいる感覚なんですよね。コミュニケーションの手触りや質感、温度みたいなものを求めていたんです。定性的な表現なのですが、これだけコミュニケーションをやっている会社だと、こういった感覚が重要になります。

大谷:当然、こういったコミュニケーションが実現するツールとして、Slackを選定したという話になると思うのですが、選定の理由や背景について教えてください。

川崎:個人的に言うと、デザインが好きだったんです(笑)。いろいろなチャットツールを使ったり、話を聞いたりしたのですが、、必ずしもITに明るいわけではない当社の従業員が使えるかという基準で考えたらSlackだろうと直感したんです。

大谷:デザインが好き、使いやすいというのは、とても感覚的だと思うのですが、川崎さんにとってどこらへんが気に入ったんでしょうか?

川崎:うーん。これをデザインというのかはわかりませんが、「ワークスペース」「チャンネル」「スレッド」というSlackの階層構造が気に入りました。まさにわれわれが日々コミュニケーションを行なっている「組織」「プロジェクト」「トピック」に該当していて、社員にとって理解しやすいと思ったんです。私個人にもしっくりきました。

あとは堅くなりすぎないところですね。堅いコミュニケーションは根付かないし、過剰な堅さはむしろノイズになってしまいます。その点、Slackは絵文字やパブリックチャンネルという点もありますが、全体的なトーンやノリにあたるものが堅くないと思います。世の中、けっこう堅いツール多いですよね(笑)。

大谷:そうですね。メールとチャットの比較もありますけど、確かに堅くなってしまうツールありますね。

川崎:あと、これは当社ならではの特徴なのですが、働き方の異なるメンバーにフィットしそうという予感もありました。

当社は最前線で対応してくれるメンバーやマネジメント層、経営層まで含めると、約3万人という規模になります。1年365日でお問い合わせ対応を実現する必要もあるので、働き方も柔軟。女性も出産を経たら、また戻って働けますし、短時間シフトや出勤曜日が違うことも当たり前。働き方改革している状態がデフォルトなんです。そういう当社ならSlackが向いているのではないかと思ったんです。

一方、全社で導入するツールという観点だと「ガバナンスが効く」という点が大きかったですね。セキュリティや監査対応に関して、経営者にシンプルに説明がつきます。グローバル展開していることの多い当社のクライアント企業にSlackが選ばれているという導入実績も、社内的には大きな説得力を持っていました。

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