企業が5G設備に1億円投資すると1500万円減税されるワケ
JAPAN INNOVATION DAY 2020 by ASCII STARTUP
JAPAN INNOVATION DAY 2020 by ASCII STARTUP
アスキーは2020年3月19日、オールジャンルのXTech展示カンファレンスイベント“JAPAN INNOVATION DAY 2020 by ASCII STARTUP”を、赤坂インターシティコンファレンスにて開催。各セッションについては、申込者全員にアーカイブ配信した。
基調講演としては、経済産業省 商務情報政策局 情報産業課長の菊川 人吾氏が登壇。国内でのさまざまなサービスでの適用が期待される5Gについて話した。
4Gでは動画配信やSaaSなどが進展したが、5Gではどのような新ビジネスがもたらされるのか。また、5Gをめぐって技術覇権争いも喧伝されるが、実際何が起こっているのか。Society5.0の実現に向けた重要な社会基盤となるであろう5Gについて、必要な施策やビジネスとしての可能性について言及した。
Society5.0は、デジタル社会の次に来る社会
菊川氏は、まずSociety5.0という概念について「狩猟社会、農耕社会、工業社会、デジタル社会の次に来る社会。Society5.0では、ハードウェアも残りつつ、ソフトウェアの重要度が増してくる」と解説。そこでは、「人が判断していたものが、アルゴリズムがさまざまな状況を見ながら判断していくようになる」と話した。
合わせて、経済産業省がSociety5.0に向けて実施している取り組みとして、法改正を目指している例を2つ紹介。ひとつは「高圧ガス保安法」だ。高圧ガスを扱う工場では、1年に一度、設備の運転を停止し、人が設備に問題がないことを確認することが義務付けられている。
しかし、現代的な工場では、すでにセンシングが進み、稼働状態やガス漏れを常にモニタリングできる環境が整っている。設備を全面的に停止すると、大きな機会損失が発生する上、センシングが進んだ工場では、人がチェックする意味も薄れている。そこで、人による確認作業を、3年に一度に変えていこうとしているそうだ。
もうひとつは「割賦販売法」。スマートフォンの分割払いなどにも適用されている法律だが、現在主流の、年収を基準として貸付額を判断する方法でなく、「節約する傾向がある」「過去に債務不履行がない」といった情報を総合的にアルゴリズムで判断し、個人に合わせた適用ができることを目指しているという。
5G社会実現に向けて、通信インフラの整備が急務
「テレワークも、コロナウイルスの影響が出る前から、オリンピックの混雑緩和に向けて、政府が推奨してきた。私のチームは40名ほどのメンバーで動いているが、ほぼ100%、テレワークに対応している。定時に出社し、定時に帰るという状態に戻る事は今後ないと思う」(菊川氏)
ただし、菊川氏は、テレワークの実現には「サイバーセキュリティーに対応した環境の整備が必須である」と話す。
政府、与党では、5Gの通信網の整備を促すため、投資額の15%を法人税から税額控除する方針で最終調整に入っていることを、2019年の12月に公表している。これは、5G対応と認定された設備を対象とするもので、キャリアの設備では、主にミリ波帯域に対応した基地局、ローカル5G環境なら、基本的にすべてが対象となっている。
「1億円の設備投資をすると、1500万円の税金が戻ってくる。これは非常に大きなインパクトのある施策で、国内で最高の減税率」(菊川氏)
その理由について、菊川氏は「産業振興というよりも、次世代に向けた、国民のインフラを整えるという観点から、国内で最高の減税率を適用するという考え方。社会構造の変化がじわじわと進んでいる」と話し、「政府サイドとしても、いろいろなプレイヤーとビジネス面で融合し、社会構造の変化に対応できる強力なインフラを構築していきたい」と述べた。