HPE(Hewlett-Packard Enterprise)でもう1つ、連載549回の最後で触れたHPE Arubaについて説明しておきたい。
企業向けのWi-Fiを得意とする
Aruba Networks
もともとHP ArubaはAruba Networksという独立した企業であった。創業は2002年で、エンタープライズ向けのWi-Fiソリューションを得意とする。
この市場は一般のユーザーにはなじみが薄いが、企業内でのWi-Fi対応機器の増加でけっこう大きなビジネスに成長した。
これはPCにWi-Fiが搭載されただけでなく、途中からスマートフォンが投入され、おまけにBYOD:Bring Your Own Device(自分のスマホやPCで仕事をする)というトレンドが出てくるようになってから、急速に伸び始めた。加えて公共Wi-Fiの増加もこれに拍車をかけた。
このエンタープライズ向けのアクセスポイントという市場、家庭用と異なり例えば1台のアクセスポイントに数十台のクライアントがぶら下がっても大丈夫、長時間運用を行っても異常が起きない、あるいは配線を簡素化できる(バックボーンにつながるイーサネットケーブルでまとめて電源供給を行なうPoE:Power on Ethernetに対応している)といった特徴に加え、さまざまなリモートからの管理機能を利用できるといったニーズにも応えられないといけない。
こうした用途では、初期コスト(つまり製品代)よりも運用コストの方が圧倒的に高いわけで、運用コストが低く抑えられるのであれば、多少製品コストが高くても問題にはなりにくい。ちなみにここで言う運用コストというのはメンテナンスの人件費が主だったりする。
したがってこの市場にはコンシューマー向けとはまったく違うメーカーがひしめき合っている。2015年頃で言えば、Abura Networks(2015年にHPEに買収)、Aerohive Networks(2019年にExtreme Networksに買収)、AirTight Networks(その後Mojo Networksに改称。2018年にArista Networksに買収)、CISCO Meraki(2012年にMerakiをCISCOが買収)、Ruckus Networks(現在はCommScopeの傘下)、Ubiquiti Networks、Xirrus(2019年にCambium Networksに買収)といったあたりが主要なプレイヤーである。
他に台湾4ipnetや米ZebraのNSight(もとはMotorola Solutions)なども名前は上がっていたが、大手は最初の7社であり、この中で特に強かったのがAbura Network、CISCO Meraki、Rucksu Networksの3社である。
ただこれらの会社の提供する製品は、いずれもアクセスポイントと、その先のマネジメントスイッチあたりまでがカバー範囲で、エンタープライズ向けのコアルーターなどを手掛けているメーカーはなく、それもあってUbiquitiを除くどの会社もより大規模なネットワークスイッチを手掛けている会社の傘下に入る形になったのは、妥当と言えば妥当な結末である。
余談であるが、この中で一番流転の人生を送っているのがRucks Networkである。もともとはRuckus Wirelessという名前で創業した同社だが、2015年にBrocade Networksが15億ドルで買収した。
ところがそのBrocade Networkが今度は2016年にBroadcomに買収される(59億ドル)。ただBroadcomはBrocadeの有線ネットワーク側にしか興味がなく、このためRuckus Network部門は売りに出される。
これを買収したのがARRIS Internationalで、2017年にRuckusはArris Internationalの子会社となる。そのArris Internationalが2018年にCommscopeに丸ごと買収された結果として、現在はCommscopeの傘下にいる形である。
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