昨年末、年内最後の忘年会に代官山ヒルサイドテラスのレストランに向かった。ちょっと早く着きすぎたのとやけに寒いので、久しぶりにレストランのお向かいにある蔦屋書店に入って時間を潰した。最近は、デザイン系や昭和家電、ガジェット関係以外では「紙の本」を買う機会がまったくなくなってしまったので、オーディオとステーショナリー売り場を30分ほど徘徊した。
都内のあちこちで、頻繁に文具は見ているので、それほど心を動かされる商品はなかったが、たったひとつだけ、やけに気になった商品があった。その時は商品名がよく読み取れなかったが「MechaSEA」(以下、メカシー)と名づけられたアルミ削り出しのボールペンだった。
素っ気ない外観のパッケージに、同じく素っ気なく貼り付けられていたシールの小さな文字を見ると、なんと兵庫県加西市の「荒木エフマシン株式会社」というところで造られているらしい。筆者も元祖関西人なので少し親しみを覚えて、早速お店の人に言って商品を見せてもらった。
素っ気ない紙のパッケージから登場した、メカシーを収納しているケースにまず驚いた。かなりの技術で精密に創られた、ワンコが好きそうなボーン(骨)形状だ。ケースは上下に、分割するようだった。精度の高さゆえ極めて密着したケースを両手の指先で持って引き離すように開けたら、その時「ピュッ」という空気が飛ぶような音がして開いた。
そして中身のメカシーを見た段階で、脳まで判断を仰がない「脊髄反射衝動買い」の兆候を感じた。親指の腹でクランクノブを180度回転させることによって、リフィルを押し出す仕組みまでは操作させてもらったが、今秋に限って、店頭でメカシーそのもので何かを筆記するということは一切しなかった。
昔から何度も使ってよく知っているフィッシャー製のリフィルを使っていることだけはお店の人から聞いたので、もうそれで必要十分だった。最後に、ボールペンのケースを閉めるべく、上下に分かれたアルミのケースを重ねてみたが、キチンと閉まらない。しかし、アルミケースの上下に軽く指先で力を加えてみると、今度は「パチン」という小さな音がして完璧にケースは閉じた。元通りの密封状態だ。
もはや躊躇は不要だ、速攻で指先はクレジットカードに伸びて支払いを済ませて、忘年会に向かった。
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