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さくらの熱量チャレンジ 第40回

さくらがチャレンジした理由、オウンドメディアの必要性を聞いた

衛星データを民主化するTellus、さくらインターネットから見た舞台裏

2020年01月15日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: さくらインターネット

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「Tellusや宙畑を見て、起業考えました」という人も増えてきた

大谷:リリース後のTellusの現状を教えてください。

城戸:ユーザーが一気に増えて、いまや1万ユーザー以上。直近では1万2000を超えました。やはりイベントの影響が大きかったと思います。Tellusの使い方や機能について説明するイベントも継続的に行なっており、定期的に来てくれる方も増えています。そういった方にはヒアリングを実施し、サービスに反映させています。ユーザーをつかむためにリリースし、ユーザーからフィードバックを得られるようになってきたので、まずはよかったかなと。

とはいえ、現時点では経産省の委託事業としてサービスを作ったという面も大きいので、今後は開拓すべきユーザーにもっとフォーカスし、継続的に使ってもらえるようTellus のバージョンも上げる予定です。とにかく「使いやすい」「使いたくなる」「つい触ってしまう」というものを目指しています。

大谷:ユーザーの要望はどういったところなんですか?

城戸:使いやすさもあるのですが、要望として多いのは使いたいデータがいっぱい載ることです。今のところ、政府の衛星データを中心に載せられるものを載せるという方針で進めていますが、もっと解像度がいいデータ、もっと範囲が広いデータ、海外のデータ、レイヤー化されたデータなどが求められています。可視光だけではなく、異なる波長データがあれば、水や雪も見られますしね。

大谷:田中さんはTellusプロジェクトの進み方をどう見ています?

田中:私はあまり口出しはしていないのですが、最初に言ったのは「リリースがスタートなので、リリースしてからが重要」ということだけ。あと、城戸が今申し上げたように、お客様は経産省だけではなく、使っていただくユーザーと市場。だから、会員数も重要なのですが、どれだけの人が使ってくれているかを考えています。

大谷:アクティブユーザーですね。

田中:はい。アクティブなユーザーと、そのユーザーがうまく使えているかというカスタマーサクセスの観点を重視しています。お客様がやりたいことをちゃんとやれているのかを注力しています。

城戸:だからこそモニタリングもユーザー数だけではなく、利用率、問い合わせ数、ビジネス相談数なども見ています。今後はマーケットも展開していくので、そこにデータなどを出してくれるユーザーも追っています。

今のユーザーの中心は衛星データでビジネスしたいと思っている人たち。興味があって、自分でわりと解析できちゃう人ですね。そういうユーザーの利用率を底上げするためにUIもよくしていきたいし、衛星データ活用技術者養成講座「Tellus Satellite Boot Camp」やEラーニングなどの教育コンテンツの提供も行ない、興味を持っている方自体を増やしていきたいです。まあ、個人的にはビジネスとか関係なく、もっと自由に遊んでほしいんですけどね(笑)。

田中:宙畑の方はどうですか?

中村:Tellusがサービス開始される前、宙畑の読者はだいたい8000~9000UUくらい。日本の宇宙産業の就業人口がだいたい9000人くらいと言われているので、その枠を飛び変えられなかったんです。ただ、サービス開始後はコンスタントに3万UUのサイトとなり、今は5万UU弱までになっています。だから、約3万人以上は宇宙産業の就業人口ではなく、宇宙や衛星データに興味を持ってくれている人になるのかなと。「Tellusや宙畑を見て、起業考えました」という人も現れていて、創業当時に宙畑でやりかったことに近づいているなという実感もあります。

城戸:宇宙ビジネスが育つ畑という思いをこめての「宙畑」ですからね。

中村:あと、個人的にはTellusや衛星データを楽しく使うためのヒントとなる記事も出していきたいなと考えています。

たとえば、Tellusのプロジェクトに入る前、衛星データから桜を探すというネタで私が代々木公園の桜探しにチャレンジした記事を出したところ、実は完全に間違っていて(笑)。でも、これに対して衛星データ解析のできるメンバーがアンサー記事を出してくれました。先日は衛星データを活用して海釣りすれば初心者は魚を釣れるのか?という企画を実施したところ大漁だったりと、衛星データはビジネスはもちろんのこと、個人の知りたい・やりたいに対しても比較的簡単に遊べるおもちゃの側面も持っているということを発信していきたいです。

3年後を見据えたマンネリ化しないプロジェクトを

大谷:最後、田中さんには今後のTellusプロジェクトの展開について、さくらインターネットの社長という立場からお話いただこうかと。

田中:Tellusはユーザーを増やして行くことも重要ですが、ユーザー同士がつながったコミュニティ形成が重要。よく「宇宙村」とおっしゃる方が多いのですが、これをもっと拡張することが、このプロジェクトの大きな目標だと思っています。衛星データを手軽に使ってビジネス作る人を増やしていきたいです。とにかく使ってもらい、さらに他の人に薦めてもらうというインフルエンスという点も、今後は重視していきます。

その上でマネタイズも考えていくのですが、「儲けよう」が先に来ると失敗しますので、お客様に気持ちよくお金を払ってもらう見極めが重要だと思います。

「儲けようが先に来ると失敗します」(田中氏)

大谷:3年後、経済産業省の手が離れたら民営化になりますからね。

田中:当社のもとで民営化できるように努力していきます。経営的にはプロジェクトが経済産業省の手から離れても、きちんと維持・拡張できるアプローチが重要です。急に「経費を削減しろ」となったら、せっかくのプロジェクトもうまくいきませんよね。SaaSビジネスの「死の谷」みたいな話があり、そのうちのいくつかは経済産業省からのサポートで埋められるのですが、完全になくなるわけではありません。5~10年のスパンでサービスを継続し、一番大事なお客様の成功を維持しないといけないと思っています。

そのためにはチームビルディングも継続が必要です。1~2年くらいは勢いでいけるのですが、3年目くらいからはたるんで来るんですよ(笑)。そこで、いかにモチベーションを維持できるかを考えたら、定期的に人を入れ替えたり、やることをどんどん変えていくことが重要です。環境も、人も、お客様との接点も、マンネリ化しないようにしていくのが継続の鍵だと思っています。

大谷:さくらインターネットって、今まであくまでユーザーのサービスを支える裏方でしたが、今回のTellusはユーザーに直接相対するサービスですよね。

田中:昔のストックビジネスって、契約させたら終わりで、いかに解約しにくくするかが重視されていました。さくらは違いますが、昔のホスティングサービスもそうだったし、携帯電話やフィットネスクラブもそんな感じです。でも、今のサブスクリプションビジネスっていかに積極的に使わせて、満足して、解約したくなくなるみたいなサービスが重要です。だから、城戸が言ったみたいに、常に使ってしまって、満足してもらうまで価値を上げられるかがキモになります。

あと、たまには「WOW体験」みたいなのが必要なのかなあ。今のTellusって、衛星データが見られてすごい!とはなるんですが、正直WOWまでは至ってない。だから、ログインしたら、いきなり衛星データで人口密度がわかるとか、体験まで用意できたらいいなあと思います。

大谷:ありがとうございました!

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(提供:さくらインターネット)

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