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さくらの熱量チャレンジ ― 第33回

自作ガンプラの発進ムービーが作れる! ガンプラと“デジタル”の組み合わせにチャレンジ

ガンプラの新たな楽しみ方に挑む! BANDAI SPIRITS/バンダイナムコ研究所/冬寂/フレイム

2019年08月29日 14時30分更新

文● 重森大 写真●平原克彦 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 『機動戦士ガンダム』シリーズに登場するモビルスーツをプラモデル化した「ガンプラ」は、1980年の発売以来ファンを魅了し続け、現在でも根強い人気を保っている。しかし、息の長い商品にはそれなりの難しさもある。「ファンであり続けてもらう」、そして「新しいファンを獲得する」という課題に、常に向き合わなければならないからだ。

 2019年7月20日から9月1日までの夏休み期間中、お台場のダイバーシティ東京 プラザで「ガンダム夏まつり2019」が開催されている。このイベントの目玉企画のひとつとして、ファンが自ら製作したガンプラを持ち込み、カタパルトデッキからの発進ムービーを作れる「RAPID SCAN DIGIRAMA THEATER SYSTEM -Take off from a catapult-」が展開されている。このシステムを企画/開発したバンダイナムコ研究所の髙子佳之氏、冬寂(とうじゃく)/フレイムの北田能士氏に、その目的や開発背景などを詳しく聞いた。

ガンダム夏まつり2019で提供されている「RAPID SCAN DIGIRAMA THEATER SYSTEM -Take off from a catapult-」
バンダイナムコ研究所 イノベーション戦略本部 クリエイティブデザイン部の髙子佳之氏(右)、冬寂 代表取締役/フレイム マネージャーの北田能士氏(左)

「作るモチベーション」を高め、新たなファン層を獲得するためには?

 ガンダムファン、ロボットアニメファンでなくても、「ガンプラ」という言葉は知っているのではないだろうか。筆者も小学生の頃に友人やいとことガンプラを組み立てて遊んだ経験があるが、その後プラモデルというものから離れてしまった。「実は、まさにここに『ガンプラの特異性』があるのではないか?」と、髙子氏は説明する。

 「今回、企画提案やシステム設計をするにあたって、BANDAI SPIRITSの担当者と議論を重ねていきました。その中でひとつ重要なポイントとなったのは、ガンプラは『作る』工程も含めて、それが遊び方の本質であり、魅力であるということです。そのため、ガンプラを提供する側としては、いかにファンの『作るモチベーション』を高めていくのか、常に新しい試みを考えて提案していくことが必要になります」(髙子氏)

バンダイナムコ研究所 髙子佳之氏

 「作るモチベーション」を高めるもののひとつとして、たとえばBANDAI SPIRITSが毎年開催している「GUNPLA BUILDERS WORLD CUP」のような作品コンテストがある。ガンプラは作る人の技量によって、その出来上がりに大きな違いが生まれる。パーツに独自のカスタマイズを施す人、あえて傷や汚れのペイントを施しリアルさを追求する人、さらには精緻なジオラマを製作してアニメの有名シーンを再現する人など、作り込みに情熱を燃やす熱心なファンも多い。

 ファンの間では、こうしたハイレベルな製作者の作品を鑑賞するのもガンプラの楽しみ方のひとつになっており、自分もそんなレベルを目指そうと「作るモチベーション」を高める人もいる。だがその反面、求められるレベルが高度になりすぎると、初心者が気軽に楽しめなくなる可能性も出てくる。

 「BANDAI SPIRITSの担当者と議論を進める中で、われわれとしてもファンの方それぞれが自分なりの楽しみ方を見つけてもらいたいという思いがありました。ただ、ガンプラは40年の長い歴史を持つこともあり、高いレベルの製作者が多く存在します。それゆえに、高いレベルの作品を前にすると敷居を高く感じてしまう方もいます。実際には素組(※説明書どおりに組み立てること)だけでもハイクオリティな完成品が製作可能なのですが、そこからさらに塗装したり、カスタマイズしたり、ジオラマを作ったり――といった、“プラスα”の楽しみ方が無限に存在します。それに気付いてもらうためにも、まずは『作るモチベーション』を与えることが重要な要素になってくるのです」(高子氏)

 新たなファン層の「作るモチベーション」を高めるためにはどうすればよいのか――。そこで髙子氏が考えているのが、ガンプラと“デジタル表現”の融合だ。

 バンダイナムコスタジオを母体として2019年4月に発足したバンダイナムコ研究所は、AIを筆頭とした先端技術を用いて、革新的なエンターテインメントを生み出すための研究開発組織である。髙子氏が現在考えている目標のひとつは「自ら製作したガンプラを仮想空間で自在に操り、対戦バトルなどが楽しめる」、そんな世界の実現だという。

 思い返せば筆者がガンプラで遊んでいた時代にも、すでにそんな内容の人気マンガがあった。主人公の少年が自分の作ったガンプラを、仮想空間の中で本物のモビルスーツのように操り、敵とバトルするといった内容だ。もちろん、当時のコンピューター技術ではまだまだ“夢物語”にすぎなかったが、現在では3Dスキャン技術も、仮想空間内でのモデリング技術も大幅に進化している。技術的にはかなり現実味を帯びてきていると言っていいだろう。

 そこで髙子氏は、ガンプラの3Dモデル化を実現するために、さまざまな3Dスキャン機材の調査と手法の研究を進めていった。このときBANDAI SPIRITSからは、イベントなどでなるべく多くのファンに楽しんでもらえるように、「短時間(1~2分)の撮影で3Dモデル化ができ、その場ですぐに結果が見られるようなものにしたい」という要望があった。

 髙子氏はまず、代表的な手法であるフォトグラメトリ(物体をさまざまな方向から撮影した写真を解析して3Dモデルを生成する技法)を検証してみた。だがフォトグラメトリでは、1~2分の撮影時間で、ガンプラのようにサイズが小さく複雑な形状のもののディテールを再現することは非常に困難だった。また別の方法を探すしかない。

 「短時間撮影」「細部まで再現する」という2つの要件に注目して、さまざまなアイデアを検証していったところ、ある技術手法にたどり着き、実現の可能性が見えた。この技術手法を取り入れ、どのようなイベント企画にすれば良いのかをBANDAI SPIRITSの担当者と一緒に検討していった結果、「自分のガンプラを使って発進シーンムービーを作成できる」という企画にたどり着いた。

 発進シーンはアニメの中でも印象的なシーンであり、またモビルスーツがカッコ良く映えるシーンでもある。自分が組み立てたガンプラがそこに写っていたら、たしかに楽しいに違いない。

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