CPOスコット・ベルスキー氏インタビュー
Photoshop Camera、フェイク対策、アドビがAI「Adobe Sensei」で目指すもの
2019年12月12日 12時00分更新
クリエイターの権利を守ることで「ディープフェイク」に立ち向かう
Adobe MAXで行われた発表で、Photoshop CameraやAdobe illustratorのiPad版と並んで大きな話題を呼んだのが、アドビがニューヨーク・タイムズやツイッターと提携して取り組む「Content Authenticity Initiative」だ。「ディープフェイク」と呼ばれる本物そっくりに加工した写真や動画が、インターネットで拡散していることに対抗する取り組みで、そのコンテンツがどのように作られたのか明示できるようにするという。
━━テクノロジーの進化によって、写真や動画の加工が誰にでも簡単にできるようになる一方で、「ディープフェイク」のような問題も出てきました。最後にアドビとしてこの問題にどのように取り組んでいるか教えてください。
スコット氏 これはとても重要な課題で、我々が今最も焦点を当てているもののひとつです。フェイクを見破るためには2つのやり方があると思います。ひとつは元のデータに何か編集や改ざんがあれば、アルゴリズムを使ってそれを特定するというものです。実際にアドビでもアルゴリズムを開発していますが、この方法ではいたちごっこになってしまう危険性があります。そこで我々は写真や映像の帰属を明らかにするという方法で、今この問題にアプローチしています。
「Content Authenticity Initiative」はユーザーに対して、誰が作ったかという帰属情報を提示し、その写真や映像が信じられるものかどうか、判断できるようにする取り組みです。クリエイターは我々のツールを通じて、自分の作品に対して帰属情報を追加するかどうかを選択することができます。写真や映像に帰属情報が追加されれば、世界中のどこでもそれを作ったのが誰かがわかるようになります。しかし実際にこれを可能するには、多くのコラボレーションが必要です。そこでニューヨーク・タイムズやツイッターとの提携を発表しました。できれば他のクリエイティブツールや、事業者にもぜひ参加してほしいと思います。
クリエイターは帰属情報を追加することで、それが新しい仕事の機会を得ることにもつながります。このようにクリエイターにとってメリットがあり、自ら積極的に情報を追加したいと思えるようなものにしていきたい。またこの取り組みが、写真や動画の出所やその真贋について、消費者が自ら考え判断するのに役立つものになることを願っています。