今年もビルダーを魅了!AWS re:Invent 2019レポート 第2回
機械学習の推論チップからFargate for EKS、5Gエッジ「Wavelength」まで―re:Invent 2019
AWSのジャシーCEO基調講演、大量の新発表とその狙いを読む
2019年12月11日 07時00分更新
Amazon Web Services(AWS)が2019年12月2日~6日(現地時間)、米国ラスベガスで開催した「AWS re:Invent 2019」。AWSによると、8回目となる今年のre:Invent現地参加者はおよそ6万5000名、日本からもおよそ1700名が参加した。
過去数年間のre:Inventでは、会期中数回行われる基調講演でそれぞれ大量の新サービス/機能を発表するスタイルだったが、今年は2日目、同社CEOのアンディ・ジャシー氏による基調講演に新発表が集中していた。3時間の基調講演中に触れられた新発表の数は、20以上に上る。
ジャシー氏による基調講演では、特に「コンピュート」「データ」「機械学習(ML:Machine Learning)」「エッジコンピューティング」という4つのテクノロジー領域にフォーカスし、各領域におけるこれまでのAWSの取り組みと強み、そして新発表について、時間をかけて説明していった。
本稿ではまず、IaaS関連領域(コンピュート、オンプレミス/エッジ領域)の主要な新発表について紹介したい。ジャシー氏の発言から、それぞれを提供する「狙い」も見えてくるはずだ。
コンピュート:EC2インスタンスタイプが「2年前の4倍」に増えた背景
まずは「コンピュート」からだ。ジャシー氏は、Amazon EC2のインスタンスタイプが「2年前と比べて4倍」にも拡大していると紹介する。現在では機械学習向けのGPUインスタンス、グラフィックレンダリング向けのGPUインスタンス、24TBの巨大なメモリ空間を持つSAP HANA向けインスタンス、市場で唯一100Gbpsネットワーキングに対応するインスタンスなど、多様なワークロードに対応するラインアップを誇る。
こうした多様なインスタンスタイプの提供を可能にした背景には、2つの大きな技術開発投資があるとジャシー氏は説明する。その2つとは「Nitro System」と「独自設計のカスタムチップ」だ。
Nitro Systemは、旧来の仮想化環境ではすべてCPUで処理していたネットワーク、ストレージ、セキュリティの処理を、CPU外の独自設計ハードウェア(Nitroコントローラー)にオフロードするアーキテクチャだ。この「仮想化ハイパーバイザをゼロから作り直した」アーキテクチャにより、CPUの持つ能力を本来の目的であるユーザーのワークロード処理に割り当てることが可能になり、「ベアメタルとも見分けが付かないほどのパフォーマンスを、はるかに低価格で実現できた」と、ジャシー氏は語る。
さらにこのアーキテクチャは、インスタンスのイノベーションを加速させ、インスタンスタイプを拡充させる効果も持つという。CPUとは独立してNitroハードウェアを進化、スケールアップさせることができるため、CPUの世代交代を待つことなく、新たなインスタンスタイプの開発、リリースが可能になる。
なお基調講演では触れられなかったが、今回、EC2上でより強固なデータセキュリティを確保するための新機能「AWS Nitro Enclaves」も発表されている。Enclaveは「包領、飛び地」を意味する言葉で、Nitroハイパーバイザの技術を用いて実現されている。個人識別情報や医療情報、財務情報、知的財産など、厳格なデータセキュリティを必要とする用途へのEC2適用を可能にする機能。2020年初頭のプレビューリリース予定となっている。
Nitro Enclavesは、EC2インスタンス内に、他のインスタンス群とはCPU/メモリレベルで隔離された特殊な仮想マシンを生成する。この仮想マシンは永続ストレージを備えず、ローカルチャネルしか持たない(=ローカルのインスタンスからしかアクセスできない)設計。管理者の特権アクセスを許さず、アプリケーションも認証済みの特定コードしか実行できない。こうした高度に制限された環境を用意することで、機密度の高いデータ処理を行うアプリケーションをサイバー攻撃から保護する仕組みだ。
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