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今年もビルダーを魅了!AWS re:Invent 2019レポート 第5回

プロジェクト計画は6カ月前倒しに、現在は商用サービス環境の移行が進行中

ゼンリンDC、仮想サーバー1800台の「VMware Cloud on AWS」移行は順調

2020年01月23日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 「いつもNAVI」ブランドの個人向けサービス、位置情報プラットフォームや受託開発などの法人向けサービスと、詳細な地図コンテンツや位置情報をベースとしたデジタルビジネスを展開するゼンリンデータコム(ゼンリンDC)。同社ではITインフラの“フルクラウド化”方針を打ち出し、これまでオンプレミスで運用してきた仮想サーバー約1800台をすべてクラウド移行する取り組みに着手している。そこで活用しているサービスが「VMware Cloud on AWS(以下、VMC on AWS)」だ。

 2019年6月に幕張メッセで開催された「AWS Summit Tokyo 2019」の事例講演では、社内向け開発環境(約400台の仮想サーバー)のクラウド移行が完了したことを報告していた。その後、小さな課題はありつつもプロジェクトは順調に進んでおり、商用サービス環境も含めたクラウド完全移行を当初の予定より6カ月前倒しすることになったという。米国ラスベガスで開催された「AWS re:Invent 2019」会場で、同プロジェクトに携わる技術本部 技術統括部 副部長の渡邊大祐さん、技術本部長の奥 正喜さん、エキスパートエンジニアの水尾千寿さんに話を聞いた。(取材日:2019年12月2日)

(左から)ゼンリンデータコム 取締役 執行役員 技術本部長 兼 先端技術推進室長の奥 正喜さん、同社 技術本部 技術統括部 副部長の渡邊大祐さん、同社 技術統括部 エキスパートエンジニアの水尾千寿さん(AWS re:Invent 2019会場にて)

「フルクラウド化」方針を決定、まずは開発環境のクラウド移行を完了

 まずはAWS Summit Tokyo 2019での講演内容を振り返っておきたい。この講演では渡邊さんが登壇し、プロジェクトの進捗や課題、ノウハウなどを紹介した。下記リンク先で講演動画も公開されているので、詳細はご参照いただきたい。

 講演内容をふまえつつクラウド移行プロジェクトの要点をまとめると、次のとおりだ。

  • ゼンリンデータコムでは数年前から、新規サービス開発において“クラウドファースト”の方針をとっている。ただしそれ以前のサービスの多くが、仮想サーバーとしてオンプレミスに残っていた。
  • 2018年時点での仮想サーバー台数(インスタンス数)は、オンプレミスが約1800台、クラウドが約2400台。
  • 2020年以降に向けた中長期のインフラ方針として「クラウドへの完全移行(フルクラウド化)」を実施し、オンプレミス環境(自社データセンター)をクローズすることを決定。
  • クラウド移行の方法として、既存の仮想サーバーをそのまま移行できるVMC on AWSを選択。
  • まずは開発環境、約400台の仮想サーバーを、IPアドレスを変えずにVMC on AWSに移行(2019年5月末に移行完了)。
  • 今後、商用サービス環境のクラウド移行も段階的に進め、2020年度中には完全クラウド移行し、自社データセンターをクローズする計画。

ゼンリンデータコムの商用サービスインフラ概要(講演資料より、以下同様)

インフラにおける物理/仮想/クラウドサーバー台数推移

 システムをクラウドに完全移行し、データセンターをクローズするという方針は「経営レベルの判断だった」と、技術担当役員である奥さんは説明する。

 「やはり、自社でデータセンターを抱えていく運用コストの問題がいちばん大きかったですね。あと、オンプレミスで構築してしまうと数年間はハードウェアが固定され、技術進化が止まってしまう。特に古いサービスは“塩漬け”になってしまっており、今さらコストと時間をかけてファームウェアを更新することもできない。すると今度はセキュリティが甘くなってしまう――。そうした状況があり、クラウドに完全移行するという判断になりました」(奥さん)

 渡邊さんも、旧来のオンプレミス環境と新しいクラウド環境の両方を並行運用するのは非効率だったと語る。「いつクラウドに寄せきれるのか、その見極めを図っていた」(渡邊さん)ところ、登場したのがVMC on AWSだった。既存の仮想サーバーがそのままクラウド移行でき、運用管理のノウハウもこれまで培ってきたものが生かせる。また移行途中のオンプレミス/クラウド併存環境においても、単一の管理コンソールから両環境をコントロールできる。

VMC on AWSで、オンプレミスにある仮想サーバーをそのままクラウド移行できる

 こうして、まずは5月末に開発環境のクラウド移行を完了させた。移行後、社内の開発者からの反応はどうだったのか。渡邊さんにそう尋ねたところ「寂しいことに、あまり反応はありませんでしたね……」と苦笑いする。

 「もっとも、何か問題があればいろいろと反応もあるはずなので、反応がないのは以前とまったく変わらず使えている、つまり成功だったのだとポジティブに捉えています(笑)。移行に際しては“大掃除”も行い、もう使われていなかった5%ほどの仮想サーバーを破棄できました。そして何よりも、『VMC on AWSに移行しても問題ない』と判断できたのが大きな成果でした」(渡邊さん)

商用サービス環境の移行に着手、スケジュールを6カ月短縮する決定

 開発環境に続き、現在は商用サービス環境の移行に着手している。その第一弾として、複数のサービスが利用する共通APIなどのバックエンドサービス群(共通基盤)のクラウド移行を予定している。これは2020年3月末までに完了させる計画だ。

 細心の注意を払わねばならない商用サービス環境のクラウド移行には、ブルー/グリーンデプロイメントを採用し、旧環境(オンプレミス)と新環境(クラウド)を並行稼働させながら、DNSの設定変更でサービスのアクセス先を徐々に新環境へ切り替えていく。新旧環境に異なるIPアドレスを割り当てるため、仮想サーバーの移行ではコールドマイグレーションを選択している(IPアドレスを変えない開発環境の移行では、VMware Cloud Motionを利用した)。

 「現在(取材時点)はオンプレミスの仮想サーバーをクラウド側にコピーし、同じ環境を作っているところです。現時点では仮想サーバー500台ほどが立ち上がった状態で、12月中に構築を終え、1月にシステムテストやパフォーマンステストを行う計画です。テストで問題がなければさらにそのコピーを立ち上げて行き、最終的な台数は2倍程度に増える見込みです」(渡邊さん)

移行作業中(6月の講演時点)のインフラ構成

 後述するようにいくつかの課題はあるものの、インフラ部分では今のところ「全体スケジュールを遅らせるような課題は存在していません」と渡邊さんは語る。共通基盤の移行が完了すれば、次はサービスのフロントサーバー群を順次、6月末までをめどに移行していく。

 移行プロジェクトはおおむね順調に進んでおり、この先の見通しもついているため、ゼンリンデータコムでは2019年秋の段階で「データセンターの解約(クローズ)を6カ月間前倒しする」方針に改めたという。当初予定では「2021年3月末まで」としていたスケジュールを「2020年9月末まで」に短縮し、データセンターコストなどの節減を図るものだ。

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