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今年もビルダーを魅了!AWS re:Invent 2019レポート 第2回

機械学習の推論チップからFargate for EKS、5Gエッジ「Wavelength」まで―re:Invent 2019

AWSのジャシーCEO基調講演、大量の新発表とその狙いを読む

2019年12月11日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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エッジ:10ミリ秒未満の低レイテンシを実現する「AWS Local Zones」を展開

 ジャシー氏はもうひとつ、従来のパブリッククラウドでは原理的に解消できない課題として「レイテンシ」を取り上げた。

 「ミリ秒単位の非常に低いレイテンシを必要とするワークロードがあるが、同時にデータセンターはもう持ちたくない、管理したくない。そういう場合はどうすればいいのか?という顧客の声もある。その課題に対し、AWSがどんなソリューションが提供できるかを考えてきた」

 そう述べたうえで発表したのが、大都市圏に新たなAWSデータセンターを展開する「AWS Local Zones」だ。まず米国ロサンゼルスで一般提供を開始し、今後、顧客ニーズに応じてそのほかの都市にも展開していく方針としている。

「AWS Local Zones」を発表。大都市圏内から10ミリ秒未満のレイテンシでアクセスできるAWSサービスを提供

 Local Zonesは、対象の都市および周辺地域のエンドユーザーから「10ミリ秒未満」のレイテンシでアクセスできるように設計される。ジャシー氏の説明によると、Local ZonesはAWSが管理するデータセンター内にOutpostsを設置してサービス提供するもので、近隣のメガリージョンを親リージョンとするアーキテクチャも同じだ。たとえばロサンゼルスのローカルゾーンは、米国西部(オレゴン)リージョンが親リージョンであり、ローカルゾーン名は「us-west-2-lax-1a」などとなる。APIゲートウェイやコンソールは親リージョン経由で利用する。

 現在のところ、Local Zonesで提供されるサービスはEC2、EBS、FSx、ALB、VPC。シングルゾーンRDSの提供も計画されており、顧客ニーズに応じてさらにサービスラインアップを拡充していく方針だとしている。

 なおLocal Zonesの各サービス利用料金は、親リージョンの利用料金とは異なるものが適用される。またLocal Zonesの利用には、あらかじめWebサイトからの利用申込(オプトイン)が必要。オプトイン後はローカルゾーン内にVPCのサブネットを構成できるようになる。

エッジ:通信事業者をパートナーに5Gネットワーク内で展開「AWS Wavelength」

 エッジ領域の将来的な課題としては「5G」もある。5Gサービスが各国でスタートし、膨大な数のモバイルデバイス、コネクテッドデバイスが接続されるようになる一方で、たとえばAR/VRやゲームなど、デバイスとの間で低レイテンシを求めるワークロードも増えていく。そうすると、やはり前述したパブリッククラウドの原理的な課題に直面することになる。

 そのソリューションとして今回発表(プレビューリリース)されたサービスが「AWS Wavelength」だ。これはAWSと5G通信事業者とのパートナーシップを通じて、5Gネットワーク内にある通信事業者のエッジデータセンターからAWSの各種サービスを提供するものだ。これにより、モバイルデバイスとの間で10ミリ秒未満のレイテンシを必要とするアプリケーションを展開可能にする。

5G通信事業者とのパートナーシップで展開する「AWS Wavelength」を発表

 今回はVerizonが米国(シカゴ)でプレビュー提供を開始したほか、今後も欧州でVodafoneが、韓国でSK Telecomが、そして日本ではKDDIが、それぞれ2020年にはWavelengthの提供を開始する予定。ジャシー氏は「今後もさらにテレコムパートナーを拡大していく」と語った。現時点の提供サービスはEC2、EBS、ECS、EKS、IAM、さらにCloudFormationやCloudWatch、CloudTrailなどを使ってワークロードを実行、管理できる。

 5Gエッジにおいては、そのネットワークを持つ各通信事業者がMEC(Mobile Edge Compute)サービスを展開していくことが予想されるが、ユーザー側から見ると、それぞれのMECサービスに対応する管理ツールやデプロイ手法が要求されることになりかねない。Wavelengthは、その課題に対するソリューションという意味合いも持つ。ジャシー氏は、AWSではテレコムパートナーを拡大する一方で「各社間の“差分”をなくす」と表現している。

 プレビューリリースにつき詳細は発表されていないが、5GエッジデータセンターにあるWavelength環境は「Wavelength Zone」と呼ばれ、ここにユーザーのVPCを拡張して利用する形になるという。おそらくは前述のOutpostsやLocal Zonesと同様のアーキテクチャで(Outpostsをエッジデータセンターに設置して)提供されるものと考えられる。またユーザーは、AWSマネジメントコンソールから利用したいWavelength Zoneを有効にするだけで利用できるようになる。

基調講演にはVerizon会長兼CEOのハンス・ベストベリ(Hans Vestberg)氏がゲスト登壇し、5Gが広げるコンピューティングの可能性を語った

 なおVerizonでは、Wavelengthを用いたMECサービスのファーストユーザーとして、プロアメリカンフットボールリーグのNFL(National Football League)やゲーム会社のBethesda Softworksの名前を発表している。NFLでは、スタジアム内のさまざまなファンサービス向上を目的に、Verizonの5GネットワークとWavelength上のアプリケーションを活用していく方針。その一例として、プレイ中の選手の動きや統計データをリアルタイムに提供する「Next Gen Stats」サービスの低レイテンシ化を挙げている。

* * *

 同基調講演では、このほかS3やRedShiftなどのデータレイク、SagemMakerなどの機械学習領域についての新発表も行われた。これらについては稿を改めてお伝えしたい。

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