“カオス化”した現代の働き方、その課題を解決する「スマートワークスペース」ビジョンを提言
Dropbox、チーム作業のための新UI「Dropbox Spaces」を披露
Dropbox Japanは2019年11月5日、9月に米国で開催されたユーザーカンファレンス「Dropbox Work in Progress」において発表した“スマートワークスペース”ビジョンや、そのビジョンに基づき開発された共同作業向けの新しいインタフェース「Dropbox Spaces(ドロップボックス スペース)」についての記者説明会を開催した。
日本法人 社長の五十嵐光喜氏は、業務で利用されるテクノロジーの多様化、チーム作業の増加などを背景として、現代のナレッジワーカーの働き方は“カオス化”していると指摘。新たに提供するDropbox Spacesなどを通じて「コンテンツの分散」「作業の中断」といったナレッジワーカーの課題を解消し、本来あるべき“コンテンツファースト(コンテンツ中心型)”の業務遂行を助けるツールになると説明した。
Dropboxに共同作業のためのワークスペースを追加する「Dropbox Spaces」
Dropbox Spacesは、ナレッジワーカーの共同作業を支援するDropboxの新しいインタフェース。Dropboxの新しいデスクトップアプリから利用できる(今後、Web版アプリでも対応予定)。9月下旬から一部プランで先行提供を開始していたが、今回、すべてのプランで利用が可能になったと発表している。利用には追加料金はかからない。
※追記:Dropbox Japanより、法人/チーム向けDropbox Business、個人/SOHO向けDropbox(無償のBasicも含む)の全プランで対応しているとの回答がありました。(2019年11月8日追記)
Webサイトの説明によると、Dropbox Spacesのコンセプトは、共同作業にまつわる「すべてのコンテンツを1か所に、各種ツールを1か所に、すべてのユーザーを1つに」するというものだ。Dropboxが提供するクラウドストレージ/コンテンツ共有サービスの上に、複数メンバーが共同作業を行うための“追加機能レイヤー”を重ねたようなイメージであり、従来からの機能もそのまま使える。
デスクトップアプリを開くと、まずはユーザーがDropboxで管理しているフォルダ/ファイル一覧画面が表示される。ファイルを選択したりダブルクリックすると、そのファイルのプレビューが表示できる。通常のオフィスドキュメントやPDFファイル、さらにAutoCADファイルなどを、アプリケーションなしでも閲覧することができる。また、オフィスドキュメントやPDFファイルなどは全文検索が可能であり、一部プランではAI画像解析による画像ファイルのキーワード検索にも対応する。
ここまでは従来のファイル/フォルダ管理機能とほぼ変わらないが、Dropbox Spacesではフォルダごとに説明文やタスクリスト、特にメンバー間で共有したい重要ファイルのピン止め、ファイルに対するコメントや評価(スター)などを書き込む/閲覧することができる。さらに、フォルダ単位で他のチームメンバーを招待して閲覧や編集を許可でき、誰が閲覧し編集したかというファイルアクティビティも表示される。
こうした仕組みによって、Dropbox Spacesは単なる“共有フォルダ”ではなく、フォルダごとにチーム/プロジェクトの“ワークスペース”を簡単に作成し、情報を共有することができるツールとなっている。コンテンツ(ファイル)を中心に据えて共同作業を管理できる、これが1つめの特徴だ。
2つめの特徴は、グーグル「G Suite」のドキュメント/スプレッドシート/スライドやDropbox Paperといったクラウドコンテンツも、このフォルダに“ファイル”として作成、格納し、整理できることだ。もちろんここからドキュメント類を開き、編集することもできる。
これにより、従来のようにクラウドサービス間を行き来して共有設定や共有URLの発行などを行う必要がなくなり、さらにファイル/フォルダというシンプルな仕組みで整理できるため、関連ドキュメントが各サービス/アプリケーションに分散することも防げる。同じように、外部サイトのWebページもリンクの“ファイル”として保存、共有できる。
3つめの特徴は、SlackやZoomといったコラボレーションツールとも深い連携を図っており、SlackチャットやZoomミーティングへのファイル送信が行える。加えて近日中には、特定のDropbox SpacesフォルダとSlackチャンネルをひも付けてチャンネル内のファイルをDropboxに同期する機能、Spaces上からZoomミーティングを開始し、その録画ファイルや書き起こし文字を自動的にDropboxに保存する機能なども追加される予定だ。またTrelloとの連携機能も計画されている。
また機械学習技術も活用して、ユーザーが今取りかかるべき「おすすめ」のフォルダ(=プロジェクト)を自動表示する機能も備える。単に「ひんぱんにアクセスしているフォルダ」だけでなく、たとえば「ユーザーがまだ見ていない資料があるが、他のメンバーが活発に議論しているフォルダ」や、カレンダー連携によって「これから参加するミーティングの発表資料フォルダ」といったものも自動的にピックアップしてくれるという。
そのほか、ドキュメント電子署名サービスとの連携機能、最大100GBまでの大容量ファイルをセキュアに送信できる「Dropbox Transfer」機能、管理者向けのエンタープライズコンソール機能やデータガバナンス機能(プライベートベータ版)なども提供する。
業務コンテンツは分散、作業はたびたび中断……現代の働き方はまさに“カオス”
五十嵐氏は、業務に利用するテクノロジー(アプリケーションなど)が多様化したことによって、現代のナレッジワーカーは“カオス”に巻き込まれていると述べ、具体的には3つの大きな課題があると説明した。
たとえば「コンテンツの分散」だ。2019年5月に実施した国内2000人のナレッジワーカーに対する調査データによると、業務上で使用するアプリケーションの平均数は「9.39個」にも及ぶという。複数のアプリを常に開いたまま業務を行うことが常態化しており、作業効率悪化の原因となっている。さらに、これらのアプリがローカル/クラウドのあらゆる場所にデータを保存するため、過去の作業ファイルをすぐには探し出せないという問題も生じている。1日あたりの平均労働時間は8.9時間だが、そのうちの35%(およそ3時間)は「本業以外」の作業に費やされているという数字も紹介された。
また、スマートフォンやコラボレーションアプリが身の回りにあふれる現在では、それらの発する通知で「作業の中断」が頻発し、長時間、業務に集中することも難しくなっている。ナレッジワーカーが中断されずに作業を継続できる時間は平均でわずか「11分間」であり、ひとたび中断されると、再び元の集中した状態に戻るまでには25分程度かかるという。こうした作業の中断により生じる経済損失は莫大なものだ。
もうひとつ、共同作業を行ううえでメンバー間の「調整が困難」であるという課題もある。共同作業を行う業務時間は、過去20年間でおよそ1.5倍に増加したという。そのために会議などの調整が難しくなっているが、他方で「付加価値の高い共同作業の割合」は35%にとどまるというデータもある。調整にかかる時間の無駄を減らすこと、共同作業の付加価値を高めることの両方が求められる。
こうした課題を解消していくために、Dropboxでは「スマートワークスペース」という今後のビジョン、方向性を表明したと五十嵐氏は説明した。そのテクノロジー面における実装が、今回一般提供を開始したDropbox Spacesというわけだ。今後も継続的に機能強化や他社クラウドサービスなどとの連携を強化していく方針であり、すでにいくつかの機能追加計画がアナウンスされている。
また、スマートワークスペースはテクノロジーだけで実現できるものではない。五十嵐氏は、Dropboxがグローバルで展開している「働き方」を紹介し、柔軟に活用できるリモートワーク制度、空間的余裕がありストレスの少ないオフィススペース、オン/オフの明確な切り分け、社員食堂やオープンスペースでの部門の枠を超えた交流なども積極的に取り組んでいると紹介した。なおDropbox Japanは9月から日本橋の新オフィスに移転しているが、ここでも従業員数と比較して一般的なオフィスよりもかなり広いスペースを確保したと説明している。
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