2019年10月30日、Sansanはスクリーニングソリューションを提供するリフィニティブとコンプライアンス・反社(反社会的勢力)のチェック機能を共同開発することを発表した。クラウド型名刺管理サービス「Sansan」のオプションとして、2020年3月から導入する予定となっており、Sansanユーザーのリスク管理に役立つという。
グローバルで高まるリスク管理の現状
Sansanのユーザーイベント「Sansan Innovation Day」にあわせて開催された記者説明会では、共同開発パートナーであるリフィニティブ・ジャパンの井上 清志氏と石川 拓也氏が登壇し、会社概要と反社チェックの課題について説明した。
リフィニティブは2018年10月にトムソン・ロイターのファイナンシャル・リスク部門の事業を継承して生まれた新会社。トムソン・ロイターは1851年にポール・ジュリアス・ロイターが、ドーバー海峡に敷設された海底ケーブルを用いて、ニュースと株価を伝送するオフィスを設立して以来、160年以上の歴史を持つ老舗金融サービス事業者だ。
リフィニティブは世界有数の金融データプロバイダーとして、世界約190カ国、4万社の企業や機関にサービスを提供している。ファイナンシャルととともに事業の柱であるリスク管理事業では、企業の内部統制や監査、コンプライアンス、不正の検知・防止、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CTF)まで幅広くサービスを提供している。
現在、企業のリスク管理を取り巻く環境は経済・金融のグローバル化やテクノロジーの発展によって大きく変化しており、特にマネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CTF)の強化が国際的に求められている。しかし、日本はこれらの対策に遅れが見られ、政府もモニタリング体制の強化・高度化を進めている最中だという。
属人的で負荷の高い反社チェックの課題
今回テーマとなる反社チェックも、こうしたリスク管理の中で特に注目される分野。2004年以降、全国各地で施行された暴力団排除条例の影響もあり、暴力団や総会屋、詐欺グループなどの反社会的組織の資金源を絶つ動きは加速している。当然、これら反社への利益供与を遮断するためにも、口座開設や取引前のチェック・排除が必須になる。企業にとってもコーポレートガバナンスの強化やコンプライアンス・社会的責任、ステークホルダーの説明責任などの観点で、反社チェックはますます重要度が高まっている。
しかし、反社チェックはいくつもの課題を抱えている。現状、多くの企業の反社チェックは営業やフロント部門の営業活動のあとにコンプライアンス担当者が行なうことが多く、担当によっては申告やチェック漏れのリスクがある。また、チェックに関してもWebや記事検索などを用いる方法が主流で、確認作業は属人的で、継続的なチェックも難しい。概して業務負荷が高いため、ヒューマンエラーも起こりがちで、迅速性も欠くという。
これに対してリフィニティブがグローバルで提供しているのが、今回Sansanと連携する「World-Check」になる。World-Checkは国内外の経済活動に関係する企業/人物をコンプライアンスの観点でスクリーニングするデータサービスで、グローバル規模での法令遵守に寄与する。2019年10月時点のプロフィール数は440万件。10万以上メディアを、400名以上の調査員とAIが60以上の言語で調査を行なっている。
国内外で760以上の制裁リスト、規制リスト、法執行リストが用意されており、主要なリストは24時間以内にデータベースに反映される。現在、世界160カ国で、銀行や証券・保険会社、資金移動業、製造業、商社、暗号資産交換業者、フィンテック企業など7900社以上の企業が利用してるという。
名刺交換するだけで迅速に反社チェック
ビジネスプラットフォームを目指すSansanの反社チェック機能はデータ化された名刺情報の「会社名データ」を、リフィニティブのWorld-Checkと照合し、Sansan上で通知するというもの。提供済みの帝国データバンクによる会社情報、四季報による業績情報のほか、反社チェックもSansan上からチェック可能になる。
反社チェック機能により、名刺を交換したタイミングで一次スクリーニングが迅速に行なえる。また、グローバル規模のコンプライアンスデータベースとつきあわせることで、属人的なリスクを減らすことも可能になるという。Sansanの富岡 圭氏は、「名刺は企業と企業の対外的な接点。Sansanで反社チェックを行なうことで、早期にリスクのある企業との接点を知ることができる。コンプライアンス担当の業務負荷も減らすことができる」とアピールする。その他、リスクのある企業をまとめて管理できるコンプライアンス担当者用の管理画面も用意する予定。
サービスの提供開始は2020年3月を予定。Sansanのオプションとして提供される予定で、月額料金の20%程度が追加費用としてかかる見込みとなっている。