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柳谷智宣がAdobe Acrobatを使い倒してみた 第105回

アドビのビジネスカンファレンス「BEYOND」働き方パネル

平成生まれ×昭和生まれの経営者が語り合う令和の働き方

2019年11月21日 09時30分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

提供: アドビ

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本連載は、Adobe Acrobatを使いこなすための使い方やTIPSを紹介する。第104回は特別編として、Adobe Document Cloud Business Conference「BEYOND」 の働き方パネルをお届けする。

司会を務めたアドビシステムズ マーケティング本部バイスプレジデント、秋田夏実氏

残業ゼロで帰ったら、みなさん生活できないですよ

 10月2日、アドビのDocument Cloudをコアとするビジネスカンファレンス「BEYOND」が寺田倉庫 B&C HALLにて開催。基調講演では「平成生まれ×昭和生まれ 2人の経営者から見た令和の働き方とは?」と題した対談が行なわれた。昭和生まれの原田泳幸事務所 代表取締役 原田泳幸氏と平成生まれのハピキラFACTORY 代表取締役 正能茉優氏が令和の働き方、という切り口で考えを交換し合った。司会は、アドビシステムズ マーケティング本部バイスプレジデント、秋田夏実氏が務めた。

 まずは、原田氏のトークから始まった。原田氏は、グローバル企業に44年所属し、なかでもIT企業に33年、外食産業に11年、教育介護事業に2年の経験を持つ。アップルやマクドナルド、ベネッセといった会社では、社長や会長職を20年にわたって歴任している。特にアップルとマクドナルドでは大変革を行ない、事業のV字回復を成功させた。現在は、事業変革やマーケティング戦略、人事変革、フランチャイズ事業変革、さまざまな危機管理について多くの講演をしている。

「最近は若い経営者の支援する経営塾みたいなものを自然発生的にやっています。その中で、社長のみなさんには、マネジメントは7割人事、3割財務と言っています。人事制度の変革もありますが、やはり組織文化をどう変えていくか、働き方をどう変えていくか、が大事なポイントです。いい人を採用し、教育し、後継者を育成し、リテンションし、業績を伸ばすということです」(原田氏)

原田泳幸事務所 代表取締役 原田泳幸氏

 昨今、残業ゼロや女性の社会進出というキーワードがあるが、これは手段であって、目的ではない。残業をゼロにすることが目的であるような議論があるものの、原田氏は、すべては事業の競争力を向上していくためのものだと考えている。競争力とは、企画の質と、決定と実行のスピードだという。

 日本のホワイトカラーの生産性というのは先進国でも最底辺となっている。これは、ひとえに戦後の経済復興の時代にさかのぼる背景があるという。日本の高い協調性や品質、コスト競争力により、アメリカが発明した自動車や半導体を逆輸出していくという時代があったが、それを支えたのは終身雇用という仕組みだった。会社に対する忠誠心、そのための年功序列、家族寮、独身寮という文化があったのだ。

 しかし、終身雇用では人を解雇できない。仕事ができなくても解雇できないというのが、日本の実態だという。そうなると、人件費が高止まりする。高止まりする固定費のリスクを回避する手段として、ボーナスや残業費を減らす手がある。しかも、戦後は非正規社員という海外のモデルもどんどん採用されている。

「いくら残業ゼロにしろといっても、残業ゼロで帰ったら、みなさん生活できないですよ。家のローンも払えない。その原資を成果報酬型にシフトしないと、生活が成り立たないという実態があります。私が、マクドナルドで残業ゼロを目指し、5年かかりましたが、残業平均月3時間まで減らしました。これは大変な苦労がありました」(原田氏)

 女性の社会進出も手段であって、目的ではない。女性の潜在能力を顕在化させる会社や国の競争力が上がっていく。これらは、ワークライフバランスの問題ではなく、長期競争力を上げることが目的となる。

競争力のある組織を作るには?

 競争力のある組織を作るためには、少ないメンバーで質の高い企画を作り、組織全体が強烈なスピードをもって実行することが必要になるという。少ないメンバーで企画、実行するときに大事なことは、情報をプッシュ型で全員に共有するのではなくて、誰がどんな責任を持っているか、ということだけを社員に理解させることだという。自分のミッションを全うするために、自分が能動的に情報を取りに行くのが基本だと考えているそう。ひとりとりのミッションを明確にして、KPIのオーナーシップを明確にすることが基本だという。

 原田氏はよく経営の指標をトラッキングしている。売り上げ情報や利益率、顧客クレームの内容などを様々なダッシュボードで把握しているのだ。しかし、「このエクセルシートを全員に配る会社がよくあります。これは、絶対にやめた方がいいと思います」と原田氏。

 すべての情報を渡すと、みんなが自分自身の時間を使って、好き勝手なビジネスインサイトを探し始めるからだという。そうではなく、戦略を立てる少ないメンバーがビジネスインサイトとコンスーマインサイトをしっかりとまとめて、それだけを共有化することが、集団行動の質を高めることにつながるという。

「今までの体の動きをどう変えていくか、これがマネジメントシステムチェンジといいます。そのためには、トップが変わらないとだめです。トップ自身が理解して、トップの動きを変える。若い人は変わりますが、知識と経験がある人ほど、変革の障壁になります。トップ自らが変わっていくリーダーシップが必要だと思います。社長というのは、9時6時で仕事をすればいいかというと違います。社長がどのタイミングで、どういう仕事をするかによって、組織の生産性と質、競争力が変わるのです」(原田氏)

 現在、原田氏は、毎朝4時に起きて5時までメールで仕事をして、5時からはジョギングに行く。会社に行くと、メールは送信済みなので全員がフル稼働している。社長は昼間が一番暇なので、昼間にジムや習い事の予定を入れているそう。土曜日の午後は質の高い仕事の終わり方をすることが重要。そこがルーズだと日米の時差のために3日間のロスが起こってしまう。

「こういった働くタイミングというのは、大事な視点だと思います。ただ、9時6時で残業しない、ということではないと思います」と原田氏は語る。

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