Kubernetesなど新領域に強く踏み出す、VMworld 2019レポート 第2回
「VMware Cloud on AWS」は1年間で顧客数4倍に、新発表も続々の「VMworld 2019」レポート
ハイブリッド/マルチクラウドに“一貫性”を、ヴイエムウェアの戦略
2019年09月02日 07時00分更新
オンプレミスのマネージドクラウド「VMware Cloud on Dell EMC」「AWS Outposts」
「一貫性のあるインフラストラクチャー」であるVCFの配置先として、新たにオンプレミスやエッジ向けのマネージドクラウドも登場している。VMware Cloud on Dell EMC(VMC on Dell EMC)や、VMware Cloud on AWS Outposts(VMC on AWS Outposts)がそれだ。
Dell Technologies World 2019で発表されたVMC on Dell EMCは、ヴイエムウェアの“Project Dimension”を具現化したソリューションであり、北米でベータ提供が開始されている。VCFがインストールされたHCIの「Dell EMC VxRail」や「VMware NSX SD-WAN by Velocloud」アプライアンスなどをハーフラック(24Uサイズ)にマウントし、構成済みの状態で顧客データセンターに配送/設置、その後の保守サポートはヴイエムウェアとDell EMCが行うマネージドクラウド環境だ。1年間または3年間のサービス契約となる。
2日目基調講演で披露されたデモでは、顧客企業がVMC on Dell EMCのポータル画面から新たな拠点への設置をオーダーする様子が紹介された。展示会場のヴイエムウェア説明員によると、現状ではオーダーから3~6週間で顧客データセンターに配送され、Dell EMCエンジニアによるオンサイトの設置作業も含め3時間程度で利用可能になるという。
同社 クラウドプラットフォーム事業部門 CTOのキット・コルバート(Kit Colbert)氏は、現在はVMC on Dell EMCのベータ提供を通じて、SLAをきちんと守れるかどうか、複雑な顧客データセンター環境において管理面の課題はないかといったことを検証していると説明した。「ベータ顧客からは、インフラ管理もインストールもトラブルシューティングも必要なく、非常にシンプルだと評価されている」と語る。
もうひとつ、昨年11月の「AWS re:Invent 2018」ではVMC on AWS Outpostsも発表済みだ。顧客データセンターに設置するマネージドクラウド環境で、AWSが構築/配送したハードウェアでEC2のベアメタルインスタンスが稼働し、ここにEC2対応版のVCFスタックが載る仕組みとなっている。ポータル画面から設置をオーダーすることができる点はVMC on Dell EMCと同じだ。提供開始は今年の下半期を予定している。
「一貫性のあるオペレーション」vRealize Suite、CloudHealthを機能強化
ハイブリッド/マルチクラウド環境において「一貫性のあるオペレーション」を提供するのが、クラウド管理プラットフォーム(CMP)のvRealize Suiteだ。中核をなす統合管理ツールのvRealize Operations、運用自動化を支援するvRealize Automation、ネットワークやシステムログの可視化/分析機能を提供するvRealize Network Insight/Log Insightといった製品群が含まれる。
vRealize Suiteは、VCFやvSphereの環境に対応したCMPスイートだが、同時にAWSやAzureといったネイティブのパブリッククラウド環境、NutanixなどのHCI環境にも対応する、いわばマルチクラウド環境向けのCMPスイートである。ゲルシンガー氏は、「運用面においても包括的なサービスを提供できるのがヴイエムウェアの強みだ」と語る。
今回は、vRealize Suiteそのものの“ハイブリッド化”が発表された。ヴイエムウェアではこれまでvRealize Suiteをソフトウェア製品として提供し、クラウドサービスとしては別のCMPスイート(VCS:VMware Cloud Services)をラインアップしていたが、今後はvRealize Suiteそのものがクラウドサービスとしても提供されるようになる。このSaaSスイートには、上述したvRealize Operations/Automation/Netowrk Insight/Log Insightの各クラウドサービス版が含まれる(現在ベータ提供中。「vRealize Operations Cloud」など、いずれもサービス名の末尾に「Cloud」が付く)。
また次期メジャーバージョンであるvRealize Operations 8.0では、AI/機械学習技術の採用による“自動運用化”の方針が発表されており、マルチクラウドインフラ環境から収集したデータに基づいて運用作業やトラブルシューティング作業の省力化を支援する。
さらに昨年のVMworldで買収が発表された、マルチクラウド環境におけるクラウドコスト最適化/ガバナンスチェックのSaaSツールであるCloudHealthについても、新たな発表があった。
これまでCloudHealthでは、AWSやAzureなど一部パブリッククラウドに対応し、それぞれのリソース料金と使用量を分析/可視化してコスト最適化を支援したり、ガバナンスやポリシーのチェック機能を提供したりしてきた。現在は7000社以上の顧客を抱え、平均で25%のクラウドコストを削減している。今回発表された「CloudHealth Hybrid」は、このCloudHealthの適用範囲を、顧客データセンターにあるHCIなどvSphereプライベートクラウド環境にも拡大するものだ。もちろんVMC on AWSにも対応している。
CloudHealthのブログ発表によると、具体的には顧客データセンター環境から収集した1万件を超えるサーバー構成などのリファレンスデータに基づき、プライベートクラウド環境のコストも詳細に試算するという。ゲルシンガー氏は、CloudHealth Hybridによってハイブリッド/マルチクラウド環境のクラウドコストに“真の透明性”をもたらすことができると説明した。
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VMworld 2019 USレポート、次回記事ではVMware NSXなどのネットワークおよびセキュリティ分野の新発表について見ていく予定だ。
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