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クラウドコスト最適化のCloudHealth買収、SDDCをエッジに拡大する新サービスなど「VMworld 2018 US」

マルチクラウドとIoTエッジの管理を強化、ヴイエムウェア新発表まとめ

2018年09月03日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 2018年8月26日~30日、米国ラスベガスで開催されたヴイエムウェアのプライベートカンファレンス「VMworld 2018 US」。前回記事でお伝えした「VMware Cloud on AWS(VMC on AWS)」や「Amazon RDS on VMware」は、ヴイエムウェアが注力する領域のひとつである“ハイブリッドクラウド”領域における新たな取り組みだった。

 引き続き今回の記事では、同じく注力領域である“マルチクラウド管理”や“IoTエッジコンピューティング”における新発表について、担当幹部のインタビューコメントなどもまじえながら、その特徴や狙いについて紹介していこう。

今年2018年は、ヴイエムウェア創業から20周年、日本法人設立から15周年に当たる記念の年だ

マルチクラウドのコスト最適化を図るCloudHealthを買収

 エンタープライズ市場においては、複数ベンダーが提供するパブリッククラウドや自社構築したプライベートクラウドを、各クラウドが備える機能やコストの違いとワークロード(アプリケーション)要件に基づき、適材適所で使い分けるマルチクラウド化のニーズが高まっている。

 ヴイエムウェアでも数年前から、こうしたマルチクラウドニーズに対応する動きを進めてきた。vSphere/NSX/vSANといったSDDC(Software-Defined DataCenter)コンポーネントを統合した「VMware Cloud Foundation(VCF)」ベースのプライベートクラウドやパートナークラウドだけでなく、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といったVCFベースではないパブリッククラウド(“ネイティブクラウド”)も直接、統合的/透過的に制御できる運用管理のSaaS群「VMware Cloud Services(VCS)」やオンプレミスツール群「VMware vRealize Suite」を提供してきた。

VMware Cloud Provider Program(VCPP)は5年間で4200パートナーを数えるに至った。最高レベルパートナーの「VMware Cloud Verified Partners」には、IBMやVirtustream、NTTコミュニケーションズ、富士通、NECなどが名を連ねる

 こうしたマルチクラウド管理への対応をさらに加速すべく、今回のVMworldではクラウドヘルステクノロジーズ(CloudHealth Technologies)の買収意向が発表された。

 CloudHealthは、マルチクラウド環境を利用する企業に対し、実際のクラウド使用状況とサービス価格に基づく自動コスト分析やコスト最適化のための具体的提案、さらにポリシーベースでのセキュリティ/コンプライアンスチェックや自動設定修正などの機能を提供するSaaSである。AWSやAzure、GCPに対応しており、グローバルではすでに3000社以上の採用顧客を持つ。特にピンタレスト(Pinterest)、イェルプ(Yelp)、ゼンデスク(Zendesk)、スカイスキャナー(Skyscanner)など、サービス基盤にパブリッククラウドを活用する大手SaaS/マネージドサービスプロバイダーの採用が多いという。

 同社クラウド&ネットワーキング担当CTOのグイド・アッペンツェラー氏は、現在のエンタープライズでは、IT部門ではなくビジネス部門が直接クラウドサービスを採用するケースが増えており、コストや使用状況がCIOから“見えない”状態になっていると語る。強力なクラウドコスト管理機能を提供するCloudHealthの買収とサービス統合によって、こうした課題を解消し、CIOにコストマネジメントの能力を集中させ、マルチクラウドを横断的に見てコストを最適化できると説明した。

ヴイエムウェア クラウド&ネットワーキング担当CTOのグイド・アッペンツェラー(Guido Appenzeller)氏

 アッペンツェラー氏は、「CloudHealthの真のメリットは『誰が(どのユーザー/部門が)』『どのくらい』パブリッククラウドを使っているのかを詳細に分析できる点だ」と語る。ヴイエムウェアではこれまで、同目的のツールとして「vRealize Business」や「Cost Insight」を提供してきたが、これらよりもさらに詳細な分析や自動化の機能を備えるようだ。

 「たとえば『購入している100インスタンスのうち、実際は50インスタンスしか使われていない』『実際のワークロードに対してインスタンスサイズが大きすぎる』『3カ月間も使われていないVM(仮想マシン)がストレージに保存されている』といったこと(コストの無駄)が可視化される。また、購入形態をリザーブドインスタンスに切り替えることで削減できるコストも具体的に試算される。クラウドコストなどを示すレポート機能のほか、インスタンス購入時のワークフロー(社内承認)機能も備える。加えて、ルールベースでのセキュリティ自動化も備えており、たとえばS3バケットが公開状態になっていたら、自動的に設定変更やアラートを行えるような機能もある」(アッペンツェラー氏)

CloudHealthのデモ画面。ユーザー単位のクラウドコスト集計のほか、ワークロードグループ単位のリソース使用率などを分析。さらにコスト最適化のための提案機能も備えており、CIOによるクラウド利用全体の把握とコスト最適化を支援する

 CloudHealthは今後、マルチクラウド管理SaaS群であるVCSのラインアップとして統合される見込み。アッペンツェラー氏は、今後は買収作業(2019年8~10月期の買収完了予定)と並行してVMware環境との連携強化を進め、パブリッククラウドと同様にプライベートクラウド/オンプレミス環境のコスト管理にも対応させていくと語った。

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