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さくらの熱量チャレンジ 第33回

自作ガンプラの発進ムービーが作れる! ガンプラと“デジタル”の組み合わせにチャレンジ

ガンプラの新たな楽しみ方に挑む! BANDAI SPIRITS/バンダイナムコ研究所/冬寂/フレイム

2019年08月29日 14時30分更新

文● 重森大 写真●平原克彦 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

提供: さくらインターネット

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自分の作ったガンプラが発進ムービーに! ファンの夢をかなえる仕掛け

 イベント用システム制作のパートナーは、ゲームや映画、CMなどの3D CGや映像制作、システム開発に多くの実績を持つ冬寂と、その関連会社であるフレイムだ。髙子氏は以前、社外の勉強会でフレイムのメンバーと知り合っていた。そのつながりで相談したところ、冬寂の代表でありフレイムのマネージャーでもある北田氏が「できそうだ」と企画に乗ってくれたという。

 「以前CGワークショップをやったときに、サーバーでレンダリングしてオンラインで2Dムービーにして表示したことがありました。そうしたベースもあったので、やればできるだろうと」(北田氏)

冬寂/フレイム 北田能士氏

 「RAPID SCAN DIGIRAMA THEATER SYSTEM -Take off from a catapult-」と名付けられた今回の展示では、ファンが持ち込んだガンプラを撮影台に設置し、周囲を回転するカメラから360°撮影する。3D CGで制作したカタパルトからの発進ムービーにこれを合成し、一人ひとりにオリジナルムービーとして提供する。ムービーの生成にかかる時間は数分で、来場者はムービーを閲覧/ダウンロードできる専用URL(二次元バーコード)を持ち帰ることができる。

「RAPID SCAN DIGIRAMA THEATER SYSTEM -Take off from a catapult-」の全景

持ち込んだガンプラにポーズを付けて撮影台に置くと、カメラが360°回転しながら自動的に撮影し、オリジナルムービーを生成してくれる

 システム全体は、北田氏の開発ポリシーに則って、単機能のアプリケーション群をAPIで疎結合にする手法がとられている。全体をひとつのアプリケーションにまとめてしまうと、今後の進化や改修が難しくなるが、機能ごとに分割しておけば影響を最小限にしつつシステムを進化させられるからだ。実際に、イベント会期中にも細かなアップデートや修正を続けている。

 またこのシステムは、イベント会場に配置されたローカルサーバーと、さくらインターネットが提供する「さくらのクラウド」の両方をまたぐかたちで構成されているが、機能面でローカルとクラウドとを明確に切り分けているわけではないという。

 「ムービー制作だけならローカルで完結させることもできない訳ではありませんが、今回は最終的にムービーをスマートフォンなどでダウンロードしてもらうことになるので、クラウド環境は欠かせませんでした」(北田氏)

 クラウド環境といっても、海外の大手クラウドベンダーを含め世の中にはさまざまな選択肢がある。その中でさくらのクラウドを選択した背景には、映像制作を本業とする会社ならではの理由があった。

 「大手クラウドベンダーは機能をサービスとして提供する方向に進化していて、しかもそのスピードがとても速いんです。年間に数百ものアップデートを勉強するのは、CG制作会社がやるべきことではありません。逆に、汎用的な技術を安心して使える環境の方が、システムまわりに時間を取られることなくCG制作に集中できます。その点、さくらインターネットのクラウドは、シンプルな構成で安価に使えるので、高速にレンダリングしたいだけという私たちの要望に見合っていました」(北田氏)

 もうひとつ、ほかのクラウドベンダーとは違い、さくらの場合はチャレンジングな提案をしても「それ面白そうだね」と担当者の側から乗ってくるからだと、北田氏は笑う。

「組み立てて終わり」ではなく、SNSでのシェアなど新しい楽しみ方を提示し続ける

 こうして出来上がった「RAPID SCAN DIGIRAMA THEATER SYSTEM -Take off from a catapult-」は、ガンダム夏まつり2019でお披露目された。同システムが設置されているガンダムベース東京には、初日から自作のガンプラを手にした小学生から40代、50代まで、幅広い層のファンが列をなした。

実際の会場写真。“親子2世代”のガンプラファンも多い

 「1日50組くらいのファンが楽しんでくれる日もあります。『楽しみにしてました!』と遠方から来られた方、親子でそれぞれ自作ガンプラを持って来てくれた家族連れの方などもいらして、ガンプラの歴史とファン層の広さをあらためて実感しました。海外からの来場者も少なくないように見えましたね」(髙子氏)

 持ち込まれるガンプラも、素組のものから、凝ったカスタマイズが施されたものまでさまざまだ。中には全身が金色に彩色されていたり、透明パーツが多用されていたりと、あえて撮影が難しそうなガンプラを持ち込むファンもいたが、「何とかうまくムービーにできました」と髙子氏は笑う。自分のガンプラがカタパルトから発進するムービーを目にした来場者は、一様に楽しんだようだ。

 システム開発中に議論となったことがひとつあった。インターネットを活用した、ムービーの拡散方法に関してだ。結局、公式にはシェアボタンは設置していないが、自らムービーのURLを貼り付けてTwitterなどでシェアするファンは多くいるという。

 「これまではリアル世界にあるガンプラを、映像演出を加えて手軽にシェアできる仕組みがありませんでした。しかし今回、クラウド上にムービーを生成したことで、そのままオンラインでシェアできるようになり、SNSでも拡散されました」(髙子氏)

 自分でガンプラを撮影し、写真をSNSでシェアすることもできないわけではないが、背景となるジオラマを準備するなど、カッコ良く見せるための工夫は簡単ではないし、デジタル表現でしか実現できない演出もある。今回の企画では、簡単にカッコいいムービーを作ることができて、それをシェアできる。「シェアして友達に見てもらう」ことのハードルを下げることで、ガンプラを作るモチベーションを高めるという当初の目的にもつながったと髙子氏は語る。

 「新商品の研究や開発も重要ですが、ガンプラのように歴史ある商品に対して“新しい遊び方”を提案し続けていくことも、非常に大切だと思っています。ガンプラを丁寧に組み上げ、飾って楽しむことだけでもすばらしい体験ができますが、そこに現代の最新技術を組み合わせて『手軽にシェアできる仕組み』をご提供することによって、またひとつ新しい遊びや体験を加えることができます。今回、ガンプラファン同士で、より活発に自分の作品を見せ合うことができる場を提案できたのは、非常に価値のある試みだったのではないかと思います」(髙子氏)

 新しい楽しみ方をひとつ提示したバンダイナムコ研究所だが、もちろんこれで満足している訳ではない。髙子氏は「まだ他のアプローチもあると思う」と意欲的な姿勢を見せる。自分の作ったガンプラを仮想空間で操り、バトルさせる世界が実現するのも、そう遠い未来ではないのかもしれない。

(提供:さくらインターネット)

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